『漂流する体』と『沈着する体』

中国武術のお話ですが、一般的な体の捉え方にも当てはまること。

『漂』と『沈』という、
対極ともいいえる様態があります。

漂流するかのごとく体がふわふわと揺らいでおり、
地に足が定まっていないこと。
それを『漂』といいます。

それに対して地に足が根が生えたが如く結びつきエネルギーに満ちている状態。
それを『沈』といいます。
数名の生徒が太極拳の先生を押しても微動だにしない状態。
体が地球と一体化している。
特殊といえる技術と厳しい修練で得た体力が必要。
地中から体の中心を通るエネルギーの流れを感じる。

『漂』では地面から体を支えてもらうことはできず、
エネルギーは不自由な姿勢をとればとるほど浪費されていきます。
形だけ美しく見せることはできても、
内側からあふれ出るエネルギーを感じることはできません。
根無し草となり水辺を漂流しているような状態では、
推手で相手と対峙したときごまかしは効きません。
すぐにバランスを崩されます。
演舞を見ても漂うからだの状態では美しさは感じられない。

ですが『沈』を手にした後は違います!!

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『漂』は健康的状態とはいえません。

それは体の各所に痛みや不快感が生じるからです。
生体力学的に観て、
アウターマッスルなどに過度に筋負担がかかる場所がでます。
そこが炎症を持って筋膜が癒着されるなどした結果です。
これは薬や健康食品の摂取でケアできるものではありません。
『漂流』状態から抜け出すための体育方法のひとつの方法が太極拳ですね。
他にもバレエなどももちろんそれにあたります。

『沈』を目指すならば。
体の運用方法を知り理論に合致した状態であること。
それをかなえるための肉体(体力)と技術が必要。
肉体を養成していく修練も欠かせない。
そして心の修養も。

はじめの基礎は書籍を丁寧に読み噛み砕いて実践していくか、
優秀な師に教わるようにしたほうがいいと思います。

技術指導もなく偉人たちの体の運用法を、
再度自分で編み出していこうというのもいい。
ですがそれには横道にそれたり、飽きたり、体を壊すリスクがある。
学ぶことに対して面倒がる気持ちがあれば、
『沈』は手に入ることはないでしょう。

よい師やよい本との出会いを大切にしたいですね。
そしてよい努力を積み重ねていきたいですよね。