ポテンシャルエナジーとキネティックエナジー。

ちょっと聞き慣れない言葉ですよね。
ダンサーのホセ・リモンが
動きの基礎の一つとして提唱しているエネルギーです。


キネティックエナジーとは、
筋肉が収縮するときに生まれる力のことです。


たとえば手を上に挙げるとき、
体幹部から伸びた手を挙げるための関連筋が連動して収縮します。
(余談:手を挙げるときには別に腕の筋肉が収縮して挙上するわけではない)


体幹を中心に四肢と首部の筋肉を収縮させて動きますから、
筋力がキネティックエナジーの動力源です。


ポテンシャルエナジーとは力学的な位置エネルギーのこと。
高さの変化によってもたらされるエネルギーのことです。
高さが高くなれば位置エネルギーも大きくなります。
位置エネルギーは、運動を起こす能力を持っております。


力学的なエネルギーは、
からだが動くための原動力。
補佐的な力ではありません。


高いところから物が落ちる。
位置エネルギーが解放されて動きが造り出されます。


筋力が必要とされないという特徴があります。
そのためにポテンシャルエナジーを、
身体ムーブメントの要所にどうとりいれるか。
そのことを追求することで、
疲労感が生じない力を手に入れたことになります。


ポテンシャルエナジーを制御する力のひとつは、
『バランス力』と呼ばれています。
他に自由落下を意思の力でコントロールすることもあります。


バレエのプリエ(立った状態から膝を曲げていく動作)は、
体の胴体より上を自由落下させればいい。
ただ自由落下速度が速すぎて動きの表現にあわないとき、
脚部や臀部等々の筋力を使い落ちる速度を調整します。
ただ動きの基本はポテンシャルエナジー
キネティックエナジーはこのときは補佐役です。


キネティックエナジーとポテンシャルエナジー


筋肉を主導力としていないポテンシャルエナジーのほうが、
筋肉疲労の原因とならないだけではありません。


立ち姿から地べたに腰を下ろすとき。
2つの方法があります。
ひとつはキネティックエナジーを利用し、
つまり筋肉の力を用いて体を縮めて体勢を低くする方法。
動きがぎくしゃくしていることが観察できます。
もうひとつはポテンシャルエナジーを利用し、
膝や股関節を一気にゆるめて体を自由落下させる方法。
動きが重力線に沿った力を与えられて滝の水が落ちるがごとく、
生きた流れが感じられます。


実際にこの二つの方法を試していただければわかりますが、
後者のポテンシャルエナジーを利用したほうがだんぜん速い!
前者のキネティックエナジーを利用する倍近くの速さになるでしょう。


つまりポテンシャルエナジーを、
動作の中にいかにもりこむのか。


筋肉疲労が軽減し疲れない体を持つより効率のいい。
そして素早く流れるような動きをすることができます。


ダンサーやスポーツ選手はポテンシャルエナジーを身につけなければ
一流になれないと断言できるでしょう。


一般の方も、
歩くときキネティックエナジーとポテンシャルエナジーの割合を
考えてほしいのです。


膝を曲げて歩く癖のある方は、
ベースがキネティックエナジーがメインです。
だから非常に疲れる。
それに対してうまく歩く方は、
巧みにポテンシャルエナジーを歩きに取り入れています。
だから疲れないしテンポよくスピーディーに歩けるのです。

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ここまでいいますとお分かりいただけるでしょう。


人間の動きにはキネティックエナジー以上に、
ポテンシャルエナジーを活かす才能が重要です。


筋トレではキネティックエナジーしか対応できない。
ポテンシャルエナジーの真の重要性に気づかなければ、
どうしてもキネティックエナジーに傾倒しがちです。


ですが一歩その考えから外に脚を踏み出してください。


ポテンシャルエナジーという、
無限のポテンシャルのようなエネルギーが眠っています


そのエネルギーが強力に体のサポートをしてくれるためには、
キネティックエナジーという体のセンサーで直接感じられる筋肉の力感から
離れる必要があります。


ポテンシャルエナジーという地球が潜在的にもつ引きつける力に、
身を任せる練習をおこなえば良いでしょう。