原始感覚が健康体をよみがえらせる鍵

『健康には生体のバランスが欠かせない。
構造が崩れ、動きが悪くなれば、
だんだん使い物にならなくなる。
患者の愁訴を聞いたら慌てずに生体のバランスを診るがよい。
〜一部省略〜
からだの動きを分類し分析すれば、
異常は一目瞭然である。
異常があれば復元すればよいのだ。
もともとの体は健康に設計されているのだ。
復元法は形の上から考えるなかれ、動かしてみること。』


この言葉は操体法を考案した医師、橋本 敬三先生の書籍、
からだの設計にミスはない』の「動診」に書かれている。
大変印象に残る言葉だ。


橋本先生本人は医師である。
だが現代医療によってではなく、
操体法により筋ジストロフィーの少年を改善させた。
当時NHKでその番組が放送された。


この書籍で人間の原始感覚という
野生の動物が自分が病となったとき、
医師もなく自分がそれに対応できる術を持っているという。
この一説もとても気に入っている。


その原始感覚が現代人は衰えてきて、
そのために自らが病になったときに
野生動物ならば自己の歪みを正体に、
自然態に戻すようにしていた。


あたかも野生動物が病を癒すように
「原始感覚に従って気持ちよく動きさえすれば、もとの正体に戻る」
という方法を使えていたのだが。
その原始感覚が衰えてくることで、
様々な症状を自らが治せなくなっているという。


酔っ払いが酩酊状態で階段から落ちるとき、
意外にダメージが少ない。
無意識状態であったほうがバランスがとれている。
だが意識があると体のあちこちをぶつけて被害が大きい。
不思議なことだ。
人間は個人差があるにしろ
意識があるときのほうが体がゆがみが強まり、
無意識であるほうがバランスが取れてしまっている。


それは武術でもいえることで、
何かの執着や囚われや感情があると体の筋肉の緊張が強くなる。
だから無意識の禅の境地と呼べるような状態であるほうが強い。
体のバランスがよいだけでなく感覚にすりガラスがないために
レスポンスが適切かつ迅速だ。
不思議と酩酊状態で階段落ちしたときに、
とっさに意識があり心が動揺したときよりも、
すぐれてこの身を守る原始動作が発動する。


結局のところこの
原始感覚がよみがえるようにすれば、
体は丈夫でいられるということになる。


そう設計されていていると言う信念で
橋本先生はこの本の書名を
『からだの設計にミスはない』とつけたのだろう。