『武道vs.物理学 (講談社+α新書 378-1C)』という本があります。
著者は保江邦夫氏。
大東流合気武術佐川幸義宗範門人。
優れた数理物理学などを専攻されている学者です。
確立変分学を開拓し量子力学においても
細小作用原理が成り立つことを示したことで
世界的に知られている。
「確立変分学」ってなに?という感じですね。^-^;
合気道も細小作用原理を求めてその門をたたくものが多いものでして。
そういった共通項があるのかと思いつつ読み進めました。
内容も物理学の法則にのっとった観察眼で語られています。
著者ご自身は幾度も小さいときからの運動が苦手で、
数年前には癌の摘出手術という大きな病を得ていたといいます。
そのため巨体で筋力豊かな武人に勝つことなどできそうもない。
だが自己の天分である物理学で武術を分析して
理詰めで物理法則を積み上げていく。
それにより最小限の力で相手を崩し征することができるように。
徹底的に物理学の眼で通してあるために
「その結果が得られるのは当然」と信じられる。
理論上成立しているのだからその計算どおりにできるはず。
そうして得られた信念には力が宿ります。
確実にそれらの経験知は数式化され明記できるために、
その場その場の勘で動いているものではありません。
そのために結果のぶれが少ないこととなります。
そして知は継続的に積み上げられて成長します。
このような感じのアプローチを武術に共感できない方もいるでしょう。
でも私は個人的に好きですしそのような考えを求めています。
だから大変興味深く読ませていただきました。
また本書の後半に語られる「合気」と呼ばれる究極奥義というもの。
術者の神経電気によって敵の神経をブロックすること。
長年鍛えられた武人がそれにより
マネキン人形や銅像のような単なる物体となるといいます。
脳から発する電磁波というものを理論上語り説明されています。
私の憶測と直感に過ぎないのですが、
十字式健康法で行われている術との地続きがあるように思えます。
それに臨済宗の開祖、臨済和尚の喝の気合は物凄く
体の芯まで入りこみ数日間その声は残ったといいます。
その声を聞いたものはやはり感電したようにしびれた。
その「喝!」と発せられた気合が心身のゆがみを修正。
合気の究極奥義は健康面や精神修養にも活きると思う。
また保江 邦夫氏の武術関係本には他に『合気開眼―ある隠遁者の教え』や『武道の達人―柔道・空手・拳法・合気の極意と物理学』などもあります。
他にも数学や量子力学などが本当に多数著書にもつ先生です。