障害を維持する役割を果たす靭帯

『障害を維持するのに中心的役割を果たすもの、靭帯。』


「靭帯性関節ストレイン」エンタプライズ出版社発行の書籍の中の一文です。
http://www.e-ep.jp/cgi-db/s_db/kensakutan.cgi?j1=4-7825-tt-036



オステオパシーのクラスに通っていたものが
さびた釘を踏み抜いて外科的対処等をしたにもかかわらずよくならなかった。
それでDr.スティルというオステオパシーの老先生に助けを求めた。
すると「お前たち、このとんでもない愚か者め!」と大目玉。
持続する問題は釘によりできた傷のせいではなく、
急激に釘から足を引き上げてしまったため
脛腓間の膜のストレインに起因するものだった。


というような感じのエピソードが紹介されていた。


なんで釘を踏み抜いたときに急激に引き抜いてはならなかったのだろうか?


踏み抜き傷ついた足を一刻でも早く痛みから解放したい。
それが人情というもの。


でもたとえば引っかかれるときに
勢いよく引っかかれるときとゆっくり引き抜かれるときと
どんな違いが起きるだろうか?



E=mc²
エネルギー=質量×速度の二乗
といった公式を知っていると話は早いです。


つまり速度がゆっくりを仮に数値化して”1”だとすると二乗しても”1”。
それが速度が2倍になると二乗すると”2×2=4”。
それが速度が10倍になると二乗すると”10×10=100”。
それがエネルギーの数値に正直に転化されてしまう。


ゆっくり抜けばそれだけ引き抜くとき生じるエネルギーが少ない。
そのためにダメージが少ないので、
痛覚神経を通して感じ取る痛みが少なくてすむ。


だがあわてて急激に10倍の速さで引き抜けばどうなるだろうか。
想像以上に強烈なダメージが肉体に浴びせかけられた。
人体に危機的な状況で筋肉・靭帯が凍りつきフリーズ。


そのような場合に体には防衛反射がおきて身を守ろうとしている。


人体は反射的に靭帯部分を緊張させ引きつらせて身を守るのです。


そしてそのときに緊張し引きつらされた靭帯が
障害を維持するのに中心的役割を果たすのです。



恐怖心を抱くほどの激烈なものであればあるほど、
その部分の靭帯には緊張が後になっても抜けずに残るものです。



問題の釘を踏み抜いた患部が治癒しても調子が悪い状態が改善しない。


たとえば足首を捻挫してその捻挫は治ったのだが、
後々まで体のバランスが調子が悪いのが続いてしまうことがよくある。


そのようなときには患部が治ってもオステオパシーのDr.スティル的には
完治したとはいわないわけで、
萎縮し続けようとしている靭帯の緊張を解くことまでしなければならない。


そうしなければ怪我で傷ついた足の脛腓間膜が萎縮し
ギュッとつねられたり萎縮を伸ばそうとすると激痛が続いてしまうだろう。
その不快感から逃れるため無意識にも偏った歩き方や立ち方になる。
それが後までのその人の体の使い方のパターン化して異常をきたす。



そういったことは身体生理メカニズムを研究し尽くせばわかること。



最後に。



「靭帯性関節ストレイン」という本はエンタプライズ出版社発行ですが、
エンタプライズ出版社が手技療法の書籍を再版しなくなったため、
この本を買うことができなくなるため希少の良書となるでしょう。
手技療法の本を置く医学書店の棚に残っているものがなくなれば、
版権をどちらかに譲って再版してくれない限り手に入らなくなる。
大変に残念なことです。。。