呼吸と痛みの付き合い方

先だって予約順番待ちにお並びいただきました方のメールをいただきました。


>(ボディワイズのワークを受けても)劇的、簡単に変わるとは思っていません。
>ほんのわずかであれ改善していくという希望が欲しいのです。
>最終的には数年がかりになったとしても
>その希望さえあれば自分は問題ありません。
>逆に手を尽くしてもどうにもならないというのであれば
>その現実も私がこれから生きていくにあたって必要な認識なのでしょう。


かなり切実なことと伝わってきます。
すでに多くの施術院に通われたそうです。
だが施術効果がでずに苦慮しておられる。
そのことについての詳細も
長文で事細かに教えてくれました。^-^)


ここでひとつ考えてみたいことがあります。


私もあわせてですが、
強烈な不快感や緊張を覚えたとき、
無意識の呼吸を浅くしたり止めたり乱したりする反応が起こります。


アメリカのコロラド大学教授、ゲイ・ヘンドリックス。
私には『「気づき」の呼吸法』という本でおなじみの先生ですが、
医学、心理療法、教育学を総合してのトランスパーソナルセラピー先駆者。


ゲイ・ヘンドリックス自身が歯科医で治療を受けるとき。
歯医者でドリルの「キーィーン」の音を聞くだけでも緊張。
呼吸は浅くなる。
すると強烈な痛みが襲ってきます。
その反応に気づいたときに、
呼吸を深くゆっくりと行うよう意識を集中して、
その後30分ほどその状態を続けたそうです。
意識的に深く呼吸し、息が出たり入ったりする様子や、
口の中の痛みや振動などという身体の感覚、
私を取り巻く音や視覚などに意識をあわせていく。
ついまた呼吸を乱してしまえば、
またこのような呼吸と意識に戻します。
そして30分後には後味の悪い麻酔薬に煩わされずに
レストランでランチを楽しんでいたそうです。


とても興味深いエピソードです。


呼吸への意識と痛みや不快感との関係は深い。


肉体的な辛さが長期間続く。
そのようなときには本人が気づくか気づかぬか関係の無いところで、
呼吸は浅くなり乱れがちになる。
少しのネガティブなイメージで息が止まるようになる。
それがきっかけで強烈な肉体的な痛みや動揺が襲ってくる。


呼吸を深くするためのエクササイズをすればよいでしょう。
たとえばヨガや気功なども呼吸と動作の一致を大切にして、
そこを深めていこうとするでしょう。


個人的に歩行と呼吸をあわせて動くような歩行禅がお勧め。
散歩ならば30分ほど継続して歩くこともいいでしょうし、
周囲に対して視覚的に注視したり音を聴いたり感覚を研ぎ、
呼吸の深さを歩幅や脱力歩行具合でコントロールできます。
これが深い呼吸をするための習慣をつけてくれるのですね。


丹田を豊かに動きの中枢として気を降ろしていく。


つまり基本的なことは、
自助努力のみで痛みや不快感のコントロールが出来るということでしょう。


ただ体が動くときに関節が緩くないと動作が生理的にぎこちなくなります。
過ぎれば歩行と呼吸をあわせる意識が持ちにくい。
自力のエクササイズだけでは呼吸を深める感覚が掴みづらい。
そのような場合には、
施術やボディワークなどの専門的なスキルを利用して、
呼吸に関係する部分を深く緩めていく補助を受けるのも手です。
専門的にどのような部位の萎縮で呼吸がしづらくなっているか、
よく研究していますから。


そこを緩めて自発的に深い呼吸がしやすいようサポートさせていただきます。
その呼吸には脳脊髄液の流れを促進するような仙骨のムーブメントも含めて。
起立筋が張りが強すぎて萎縮したまま肥大したり
左右の肋骨の形状が違いすぎたり、
腎臓裏の起立筋部分が深く入りすぎたり、
仙骨が骨ごと後ろにぴょっこり出っ張っていたり。
他にも重心取りが踵をいかせていないなど様々な
問題点を見つけては修正をかけたり指摘したり。


そして問題箇所が強く肥大したような感じでは、
そこの部位にかけられた負荷が硬化というエネルギーに化けて蓄積します。
それを計算すれば、かなり驚ける程です。
手技のやり方によっては多大に蓄えられた負荷で変質した部位を、
一時的に緩めるに留まるものの場合もあるのです。


手技療法の多様性は、
ひとつだけの手技療法ではすべての症状をカバーできない証です。
ここの選択を間違えるとお客様ご自身が損をすることもあるので。
ボディワイズはそんななかのほんのひとかけらのようなものです。


基本的には施術というものはそのような補助的手段です。


それで複雑な歪みから来る動きの計算に苦慮することない、
簡素なその人の本来あるべき体に近づけていくだけです。


そこが原点であり、
そこに未来がある。