「ありがとう、もう、緊急避難の必要はないんだよ。お疲れさまでした


『機能的な姿勢』と『理想的な姿勢』。
この2つの隔たりを少なくする仕事。
それが私が考える施術の骨格です。


四角い正方形の積み木を積み上げるときを想像してください。


几帳面な人が積み木を積み上げれば、
面と面をずれがないよう重ねあわせ
揺れにも強く安定している状態です。


これが理想的な積み方です。



ただ大雑把に積み上げれば、
重ねあわせた面と面がずれてる。
下の積み木がずれて置かれれば、
その上に乗せる積み木は下の積み木のバランスを修正するために、
もう真上に面と面を合わせて置くことはできなくなります。
補正による補正を繰り返し積むしかありません。


これが補正の効いた積み方です。


これはこれで崩壊しないように、
補正能力の高いかどうかにかかってきます。


補正能力が高い場合。
重心線を中心に捉えて並べられます。



補正能力が低い場合。
重心線は中心を通らずに倒れている。



そうやって考えてみると、


(理想的な積み/補正能力が高い積み/補正能力が低い積み)


で分けられそうです。


それを人体に当てはめて考察。


すると理想的な積みなどは、現実問題として、
動物ですから歩いたり走ったり飛んだりはねたりするわけですから。
理想的な立位や座位や横臥位などをしてみたとしても、一時的です。
ニュートラルポジションがこれらの姿勢です。
大事ではあるものの、
そのまんまでずっと居続けることはムリなんですね。


だって自動車ならば、
クラッチニュートラルポジションのままにしてれば走らないんですよ。



現実的に考えれば、
補正能力が高いスキルを持っているかどうかが中心課題だと思います。


補正能力とは重心線と中心線を重ねあわせ続ける能力のことです。


詳細に目をつぶり大雑把に言えば、
頭部という重すぎてバランスが崩されやすい危険物がテッペンに位置している。
だから頭部を両耳と眉間と後頭部を結んだ中心点が、
会陰の真上に位置していることがなければ、
『補正能力は低い』ということです。


姿勢の補正能力が高い人は、
常にテッペンの頭部を骨盤の半球の部分にきれにすっぽり修める位置に置くのが習慣。



この見方は立位でも座位でも、いいえていると思います。



長年にわたって補正能力が高ければ、
恒常性という過去ずっとそうしていれば今日も明日も、ずっとそうしていこうという性質がある。
補正能力が高い人は調子のいい状態のままの姿勢が自然に楽に感じるのです。



長年にわたって補正能力が低ければ、
恒常性という過去ずっとそうしていれば今日も明日も、ずっとそうしていこうという性質がある。
補正能力が低い人は調子が悪い状態のままの姿勢が自然に馴染んで感じられるし、
背筋を伸ばした理想姿勢はきつくてつらい姿勢でしかないのです。


機能的な姿勢がゆがんでいるとき.png


ここが、
あの人は年齢の割にはしっかりしているとか、
あの人は年齢の割にはしっかりして欲しいとか。
分岐点となるのだろうかと思います。


テレビの通販番組でコンドロイチンとグルコサミンの膝痛対策の健康食品広告を観ていたら、
(ちょっとうろ覚えですが)60代女性の半数、80代女性は8割近くの方々が
膝に問題を抱えているといいます。


補正能力が低ければ、膝や足首、腰、そして首に関節のズレが生じるだけでなく、
歩く際の横揺れのブレの振動が上下の乗っかりが悪いため腱や靭帯を痛めます。
するとコンドロイチンとグルコサミンのテレビ広告に期待してしまいますよね。


健康食品を摂取しても補正能力が高い状態になるわけではないのですが、
膝の激痛は耐え難いですから。


私も、昔には、目黒不動尊にいけば修行が足らないと神様にお叱りを受けて、
役行者像をお参りしての帰りに、耐え難い膝や腰の痛みで引きずって帰ったことがあります。



補正能力が低くなるには、
例えば利き手利き足側の半身ばかりを使う人もそうです。
それに半身を強打してしまわれたときにもそのようにあとを引くことが有ります。
強打を受けた際に筋肉レベルだけではなく、腱や靭帯部分が強く強く萎縮をして、
第二波や第三波がきてもどうにか耐えていかねばと必死になる恐怖からの身の守りをする。
これは反射的にしてしまうことなのです。
あまりに強くこの身を守る反射が現れると、
打ち身によって作られた傷や打撲は治ったが、
得体のしれない後遺症的な頭痛や肩こりや起立筋等の抗重力筋が過度に萎縮したままになります。


不思議と投げ出されて意識を失ってしまわれているひとは、
打撲やら傷などはダメージがひどいものの、
このような後遺症による後引きがないかきつくは起きない。


そしてこの場合は、積み木を積み上げていくときに基底部の積み木がずれているから、
重力線を考えて補正をしていこうという種類の補正とは種類が違う。


多くは、重力に対応してうまく詰めればいいんだからなと、
ずれてはいつつも工夫して並びを整える時間があるのです。
それが重力によって起きた身体の歪みのパターンですから。


そのようなときの特徴として、
血管やリンパ管など生きるに必須な代謝組織にはしこりを創る量を少なくしていく。
そんな絶妙な工夫をしてくれている。


そういったものが起こりづらいケースもあります。
自転車やバイクなどで投げ出されたり、階段落ちをしたりという、
一気に状況を変化されたような場合です。
大事な血管だから絞めないようになどと、
考えつつ対処できない緊急避難状態です。


大事な血管やリンパ管を圧迫させられて、
そして重心が左右でのずれがきつくなる。
すると呼吸器への息苦しさへ転化します。



自動車に乗っていたら後ろから車が追突してきてムチ打ちになった。
そのようなときもこの一気に状況変化が体の内側で起きてしまって
気管や血管等を圧迫するほどのことをしてしまうので、
後々まで非常に耐え難い状態が続く方も多いものです。


外見上は血管の問題等は見えるものではありませんが、
末端と心臓部などいくつか血圧計で測れば数値でも見えることも在るのですが。。。


するとこの不調は筋肉系だけではなく、
靭帯や腱レベルまでの問題になります。
筋肉は超回復力で補修力が高いのだが、
靭帯や腱は、故障したまんま一生持ち越しというケースもあるから。
そのようなところの補正も必要なんだなと気づいて、
しっかりアプローチしていっても経年した故障箇所は治りづらいが、
それでも、靭帯や腱、または筋肉も含めて、
「ありがとう、もう、緊急避難の必要はないんだよ。お疲れさまでした」と、
任を解くように言葉をかけ施術で該当部分をゆるめることは大事だろう。
リリースの手技としては、
ひたすらの筋膜リリースマッサージでという私のやりようもありますが、
カウンターストレインや靭帯性関節ストレインなどは有効だろう。
緊急なつらさが強いようなときは、後者の手技で余裕を先に与える。
そのようにするといいでしょう。



またそれにくわえてたとえば尾骨という中心軸をマークするような目印が、
ある程度の補正能力が低い状況で尻餅をつくような衝撃を受けたようなとき。


尾椎事態は左右のズレと前後のずれやねじれなど、
様々なパターンでずれているものです。
それは脊椎全体の歪みのパターンが、
その尾椎に相似連関し現れている。


もしも尾椎がまっすぐのニュートラル状態で尻餅をついて骨折や靭帯の伸びなどが起きたなら、
曲がった方向から単純にまっすぐの元通り方向へと戻していくようにすればいい。


だがほとんどの人がすでに脊椎の歪みがあって尾椎が個性的に曲がりだしているのが普通です。
その個性的な曲がりが生じている状態が前提としてあり、
それに乗っかるようにして複雑な打ち付けられ方で尻餅。
すると多くは尾椎を支える部分の筋肉や靭帯がねじれるような、
ニュートラルからの曲がりだという単純なものから
複雑でリリースするのもレベルが高くなっていく。


日本では肛門の中などに指を入れての治療を出来るのは医師だけです。
安全を考えればその法律は順当なものでありましょう。


ただたいていがねじれつつ内側に折れ曲がっている。
というと外側からの尾椎の並び修正は物理的に困難。
経過が追えていないねじれの補正の複雑さは大きい。
身体全体への影響があまりに甚大だから不用意なことはできないから。
とにかくやってみようとかとりあえずやってみようとか、
では、まずもって、失敗する可能性のほうが高いわけだ。


だからまずは問題の歪みを生じさせる遠位の筋肉部分を
相当な深部まで緩めていくことが先行して行われるといいのでは。
施術での安全性の確保と、修正部分の戻りの抑止にもつながるでしょう。


あとは脊椎の全体の状態が尾椎に現れるというところを捉えて、
脊椎の理想的な動き方や状態を作り上げていくということから始めるというのは、
遠回りかも知れないが、やっていってもいいのではないかと思う。