大地をかかとで踏みしめよう!

昨日の施術にて。


とある男性のお客様、立ち方がいい感じになっていた。


どのような変化かというと、
下図の右図(つま先重心)から、左図(内くるぶし重心)に移行したということだ。


大地をかかとで踏みしめよう!.png


内くるぶしに重心を定めると、その直上に股関節が乗るようになる。
すると脚部の骨が体の支えとして機能してくれるようになるのです。


骨が最大限、身体を支える機能を発揮させる。
構造体として非常に強固だ。


そして関節は適度にスペースが空き緩み、
しなやかな骨格の動きや、
動作の即応も可能となる。


これが理想です。



それに対して、
つま先に重心を定めると、その真上を観ればわかるだろう。
ぽっかり空間が空いている。
そこに股関節は設置されていません。
それでは重心と体を支えるための基準軸は合致しない。
すると脚の骨のラインだけでは支えられなくなったから、
脚部の筋肉を骨のように硬直化させて立つようにします。
そしていずれ立つことに筋硬化を過剰に強いているなら、
それが脚部の筋のしこり化を促進させ、
脚部のリンパ液や血液の循環を妨げて、
疲労を余儀なくされてしまうことに。




ちなみに。
右利きの人が体のねじれや歪みを創りだす初期段階の特徴として、
・右つま先に乗っかり、左かかとに乗っかる


という状態をとっていることが多く見受けられる。



それにより右側大腿直筋や右側外側広筋が軸上の支えに化ける。
筋肉を軸にして支えるなら、筋肉は緊張すれば短縮化するのだ。
結果的に右側上前腸骨棘がそれら筋肉の付着点であるから
それら筋肉が常に過緊張で収縮する状態になることにより
右側上前腸骨棘が下降し始める。
左側上前腸骨棘はノーマルだが、右側上前腸骨棘は下降し、
骨盤はその上に乗る胴体全体を前傾させて滑り落とし状態。


そこから骨盤の歪みが生じてしまうのです。


爪先重心で短縮する筋肉たち.png


だからかかとで大地を踏みしめられなければ、
そこでもう骨格構造上問題が生じて姿勢筋の全体が一定パターンで歪みだしてしまうため、アウトです!





そして圧をかける「施術」をするときも、
かかとで大地を踏みしめ続けるよう工夫をしたい。


相当な工夫が必要になる。


それはついつい「つま先重心」で圧を掛けたくなるからだ。
どうしても直感的にわかりいい「作用力」に頼ろうとする。
前に向かって圧をかけるなら、前に向かって押せばいい、という感じだ。


それを「かかと重心」に考えるならば、
作用反作用の法則を考慮した圧になる。


こちらのほうが理想です。


作用反作用の法則とは、
圧を前にかけるときに、
体を前傾させて押すのではなく、
かかと側に強く踏み込むことで、
後ろに向かう圧をかけることで、
自然に体が前に運ばれる力を使う。


大地をかかとで踏みしめる。


どうしても爪先立ちにならなければならないときもあるが、
そこは工夫をしていくべきだろう。


つま先立ちになった足裏に車のタイヤ止のようなストッパーを仕込んでもいいだろう。


両足のかかとを踏むのは難しいとしても、
どちらか片方のかかとの踏み込みのちからを深めるようにする。


力の加減はコントロールが可能です。
慣れれば非常に力みない繊細な力を発生させることができます。
爪先立ちで押すよりも、安定した強い圧が作り出せる。


そして気づくかもしれないが、
爪先立ちでは腹式呼吸がしづらくて、
肩を上に前にと猫背に近づけられ重心が持ち上がってみぞおち等にまで来てしまうことさえある。
だからすぐにバテてしまいやすい。
緊張の度合いが強すぎて、体全体が巻き込まれてしまっているのだ。


それが、かかとで地面を踏んでいると、
呼吸は腹式呼吸でキープできバテにくくなる。
丹田部分に重心が置けて肩や首などの負担が少なく理想的だ。
しっかり修練してこのような動きを身に付ければ施術者の体の負担が減ります。



つまり私どもでは、施術の力量がどれくらいある先生かどうかを見るときには、
立ち姿を観させてもらえれば、伝わってくるものがあります。





昨日の施術のとある男性のお客様、立ち方がいい感じになっていったまでには、
詳しくは述べられませんが、幾度も幾度も幾度もつらい外科手術を受けられた経験があるお客様。
そうなると手術された部分の筋膜は切断されているため立つことやバランスをとることが
苦労をするような状況だったはず。



実際、ここまでの状態となるまで、
私の施術院にお通いいただいたり、他の施術院にも通われたりと、
最大限の身体改善への努力を続けてこられた。
ただ正直に申し上げなければならないのですが、
非常に難しい条件が揃っていたため、
実に長い年月が費やされていました。
お体がここまでの状況になれるまで。


「あっ、下半身がうまく整えられてるよね」と、
私が幾度もいくども、うれしそうお客様にそう語るのは。


お客様も、逆境の中つらいことが多かったと思います。
厳しい環境下で道を切り開いてこられました。
悔しくて歯を食いしばってきたこともあったはずです。


ここまで体の状態を改善させるまでは並大抵じゃない。


単なる、かかとで大地を踏みしめること。
されど、かかとで大地を踏みしめられる希望の光。


これから大幅に体が安定し始めるようになるだろう。
そのような変化が加速するはずです。


実に、頼もしい。



(※ 付記 バレエダンサーのトゥーシューズの場合)


バレエをなさっておられる方々は、一見すると「つま先立ち」で立っていますよね。


ですが足の甲をたくみに立体化させて、
実質的に足のかかとを地面に平行にするような形状を生みだし、
かかと部分を下方に踏む感覚は地面上に立つときと変わりない。
それにより骨格上の安定を得ています。


だからバレエレッスン中に、つま先立ちをしているときなのに、
バレエ教師から「もっとかかとを押してください!」と助言をいただくこともあるのです。



そのような技術を持っている方は、
高度なノウハウを持ち、その上でたゆまぬ修練の賜物です。