人体を「3連やじろべえ」として眺め

私達、施術をするものは、
なにを、どうみているか?


それは、10も20もある。
そしてそれは現在も臨床をする上で、
増加していくものです。
見方が少し変われば深まり、
見つかるものが本質に近づいても、
私にはその本質といわれるものも、
たったひとつのおもいこみの象徴。


そのように感じられてなりません。




ただそのことについて
一般論として説明して、
ひとつの見方を理解していただくことも大切です。



そのひとつについて述べると、
体の構造体としての見方がどうかという問題があります。


人体を、語る前に以下の上中下の3つ、たてに積まれたやじろべえを観て欲しい。



三連やじろべえ.png
三連やじろべえ


左のやじろべえは、垂直に立ち並べてあります。
安定していますね。


右のやじろべえは、一番下のやじろべえを軽く押してみたところ。
すると下のやじろべえの動きが、中程のやじろべえに伝わります。
そして中程のやじろべえ自身は、
どうにか倒れないようにバランスを取ろうとしていくのです。
自らが揺れていき次第にまた、安定した状態に近づいていく。
そのような立ち続けようとしていくやじろべえの力は、
その上に位置する頂点のやじろべえも同様の仕組みで
同様の動きをしていくように揺れながら徐々に安定に向かいます。


ただ、
ちょっと、ここでまってください!
もし右のような下のやじろべえが斜めってずれた並びで固定すればどうでしょう。
もう、元通りに戻ろうとはしませんよね。。。



下のやじろべえの傾斜に対応したまま、
その上に乗るやじろべえごとに斜めっているままズレ補正に走ります。



地面に接するやじろべえが揺れて傾斜ができれば、
それが上に位置するやじろべえに影響を与えるのです。


実際、リアルに実験して見たければ、
以下のサイトを参考にして自作してほしい。


親・子・孫 やじろべえの曲芸
http://ppd.jsf.or.jp/jikken/jikken/35/diy01.html



人体もこれと同じことなんですね。



足のかかとやつま先から、その上に連なるやじろべえを想像し、
それが数秒もすれば理想状態の安定体のやじろべえになり落ち着けば理想。


呼吸により、前後に揺れるところはあるものの、
それは律動的に前後に揺れ動く中間位に理想が含まれている。


足のかかとやつま先から、その上に連なるやじろべえを想像し、
それが数秒してもずれたままであって固定したやじろべえをみつければ、
どの部位がどのようにずれているものなのかを見つけていく。


ただ人間の場合は左右に重りがあるだけのやじろべえと考えれば単純化しすぎた見立てです。
左右の重りと同様に前後にも重りがあるというやじろべえがこさえてあると透視できますと、
そこで立体像のゆがみの見立てができるように進化していきます。


姿勢の状態.png


単純な人体の曲がりを観る図ですが。


右図の歪んだものをみたとき。
足元が違います、右足がもちあがっていますね。



その部分が地面に落ち着かなければ、
けっしてその上にある胴体や首や頭などが理想姿勢に近づくことがない。


それは三連したやじろべえを思い出してください。


そのまんまなんですよ、人体も。。。


だから私たちは地面に近い部分のズレがどうであるかを、
ミリ単位で気にしています。


そこから些細なものでも良いから情報を読み取ります。


そこがすでに斜めっている場合が多いのですが、
そのことに自分自身で気づけているときが少ないのです。



私自身にもそれは言えていることなので、
少しずつ改善させるように気を配ります。


ただ、
肩が凝っているとか腰が痛いとか、首に張りが強いなどという方の中に、
すでに数日も、または数年もその状態が繰り返される慢性化した人には、
つい自分の痛いところにしか目が行かない人が。
ほんとうに多いのです。


慢性的な体を支える肩や腰や首等々の姿勢筋が問題があるという人たち。


三連のやじろべえといえるような足元が、
すでに傾き続けたまま固定されています。


足裏の地面との接地部分、足首、膝、そして股関節などにも、
それぞれひとつずつやじろべえが入り、
それぞれがバランスを取って理想姿勢を目指そうとするのが
健康に生きるための本分です。


地面に近い部分がずれていれば、
上部のやじろべえをずらす原因になる。


そして不思議とやじろべえのずれるにも、
それぞれ落ち着くようなパターンが有る。


そのパターンごとに、症状がでています。


たとえば、ある特定部位の腰痛持ち方が、
どのような足元のやじろべえのずれがあるのだろうか。


それも類推することもできる。


ただ忘れてはいけないことは、
地面に接したやじろべえの傾斜しっぱなしがあれば、
その上に位置するやじろべえは
合目的的にずれることでバランスを取ろうとして機能するのです。
上部のやじろべえが斜めっていたり、中心軸からずれていても、
それは縦にならべられたやじろべえとして観ます。


下にあるやじろべえの、
全体のやじろべえの動きを立体視して落とし所を見分けた超微妙な調整。
そこがあっていこそ、
上部のやじろべえの調整が意味が出るのです。


冷静に観察すれば、
やじろべえの場合は、下にあるやじろべえを正せば、
その上にあるやじろべえは自動的に理想姿勢の安定に突き進むものです。


ですが人体はそうは行きません。


すでに歪んだ状態のやじろべえ化した状態が長年続きますと、
その歪んだ状態を恒常的に保っていくための上下のやじろべえの接地部分が固定化される。
それは全体の部位にかかわるやじろべえにより、固定化の影響の大小はそれぞれですが、
アンバランスのなかにバランスを求める工夫の末に歪みが固定化したやじろべえになる。



だからそうなるとやじろべえ同士を切り離していくという作業が必要になるんですね。


そこに筋膜リリースという手が使われると考えてください。



人体の見方のひとつとして、
このようなやじろべえを模して考えることもありますが。
これは子供にもわかりやすく伝えようとする語り方です。


施術者同士では人体の筋肉連鎖をしずかに見つめていき、
そちらのほうが驚きがさらに増すことで手技に使えます。
ただしこちらをリアルに理解するには施術の経験が必須。
私にはそう思えてなりません。



それは施術でひとつの筋連鎖を崩しますと、
それが遠位まで影響する理を知らねばならず、
日頃の施術で筋肉の連鎖を意識して見ながら、
観察と試行錯誤を加えていくことでしずかに、
そして直感的に中身が自分なりにわかってくるものです。




手技療法とオステオパシーにおけるトリガーポイントと筋肉連鎖 (GAIA BOOKS)



上記の本をみれば幾つもの筋肉の連鎖の見方はあり、
たいへんに参考になり学ぶところが多いのですが、
筋肉連鎖はそれだけじゃないなと、私は思います。



機能する人体を見つめれば、
数学的で幾何学的。
それにエネルギーの流れが感じられる。


それらを独自に考慮しながら、
多様な筋肉連鎖を含めていく。
人体の構造体としての思慮を深めることが、
私にはそれこそが私の施術の力の一面に相違ありません。




最後に、皆様へのお願い。


三連のやじろべえを意識して、
みなさまも自分の体を捉える見方を身につけてください。
それが人体の歪みを読み解くための、
基本中の基本の話になります。


これを頭に入れずには、
身体操作の難たるかということは語りづらい。


それにお体を長期に患っておられるお客様の場合は、特にです。
底辺のやじろべえのずれを見過ごせば、
まるで亡霊が迷いついてくるがごとく、
永遠に影響を与え続けてしまうのです。




ほんとうに、、、人体を見つめるというのは難しいよね〜。 ^-^;