書籍紹介:『腹診による「毒」と「邪気」の診察と鍼灸治療』

※ 腹診でわかること

・胃腸の状態
・こころの状態
・卵巣や子宮など婦人科系の状態
・生まれ持った体質や性格
・かかりやすい病気

などがあります。

 


腹診初学者のための本として。
一般書レベルの価格で手に入る本としてお勧めは、下記の本。

わかりやすいイラスト付の解説に、
はじめてでもとっつきやすさを感じさせてくれます。


やさしい漢方の本 さわれば分かる腹診入門


内容紹介
「必要なのは自分の手だけ」
本書では日本漢方の特色である「腹診=お腹を触ることで日々の体調=腹症を知る方法」を分かりやすく紹介しています。
お腹の触り方から8種類の腹症とそれに対応したツボ&漢方薬まで、この一冊で腹診の基本が分かります。
また巻末には日々の健康管理に役に立つチェックシートも付いています。

 

一般書的なわかりやすさと、実践させやすい工夫をしたものですから、
いい印象をもちました。
かゆいところに手が届くんです。
もし腹診をしてみて体の状態がわるければ「腹診にあった漢方薬局をみつけよう!」という章も、
しっかりここまで語ってくれると次への行動へ移しやすくなりますから。


ただ個人的にはこの本だけでは、
お客様のお腹をみて分類するには情報不足が否めません。

 

 

それでもうちょっとわかりやすい腹診の臨床的な内容を解説していただける本を購入しました。

 

腹診による「毒」と「邪気」の診察と鍼灸治療

 

本の紹介
 腹診は東洋医学における重要な診察法の一つである。日本漢方においては、問診・脈診・舌診とともに、腹診は漢方の処方を決定する重要な診断基準であることは言うまでもない。にもかかわらず、鍼灸治療においては腹診をどのような基準により行い、何を確認し、どのように治療に結びつけるのか、それを示した明確な書物は見当たらない。

 そこで、著者は腹診の基準となる事項を整理したうえで、実際の腹診から得られた情報をもとに、体質のあり様や病態の把握をすすめ、体全体をイメージとして捉えて、どのように鍼灸治療を用いてアプローチするかといった、戦略戦術を立てるうえでの基礎資料(初学者のための腹診の参考書)を作成しようと試みた。そして完成したのが本書である。

 本書は、難解な腹診の世界をできるだけ初心者が理解しやすいように腐心した。たとえば、腹診する際の主なターゲットである「毒」と「邪気」の解説についても、一工夫。「毒」については、吉益南涯の「気血水論」をはじめ湯液の世界では専門用語として当たり前に唱えられてきたものを、より実地臨床に基づいて現代医学の言葉に近い形で表現した。「邪気」についても、古典の用語としては誰でも知っているものの、鍼灸治療の中で「気」の変化を具体的に表現してくれている解説書や、実感として治療の中で捉えている「邪気」を具体的に瀉す方法を述べてくれている文献が皆無に等しいため、著者だけの自己満足的な表現に陥らないよう注意しながら、丁寧に解説した。

 また、体内に隠れている「毒」や、目に見えない「邪気」や「気至る」の世界を、初心者にもイメージしてもらえるように、たくさんのイラストを盛り込んだ。「わかりやすさ」をとことん追求した本書はまさに「初学者のための腹診入門」と言える一冊。鍼灸および東洋医学を学んでいこうとする学生や初心者にとって、本書はきっと有効な道しるべとなるだろう。

目次
<第1章>腹診とは
第1節 はじめに
第2節 腹診の歴史
第3節 私の用いている腹診法
第4節 腹診の目的
第5節 腹診での五臓の見どころと目標
第6節 腹診情報を鍼灸治療に生かす
第7節 東洞先生、腹診第一を論ず
第8節 診察法の注意点
第9節 腹診の手順

<第2章>胸腹中の毒について
第1節 「気」=ガスの停滞
第2節 「血毒」=瘀血の停滞
第3節 「水毒」=汚濁した津液の停滞
第4節 その他の毒と注意事項
第5節 毒の毒性化増大

<第3章>邪気と毒への対処法
第1節 邪気を診ることの意味
第2節 邪気と毒をさばく刺法
第3節 「気」を感得するために

<第4章>押さえておきたい刺鍼技術
第1節 補瀉法について
第2節 「気至る」について
第3節 古典にみる「気至る」とは
第4節 得気をいかに知るか
第5節 一鍼の効果、状態の変化をいかに知るか
第6節 刺鍼手技の最後に一言

<第5章>「毒」と「邪気」に対する治験例
第1節 急性腎盂腎炎に伴う咳と耳鳴りの例
第2節 水毒と顔面神経麻痺の例
第3節 便秘・瘀血の上逆による顔面腫脹の例


昨日、鎌倉までの電車で読んでいたのです。

腹診についての解説が多様な流派があることがわかり、興味深いところです。
鍼灸師の先生が書かれた本です。
本書の半ばくらいから、鍼で体内の邪気をどうさばき対処なさるかという内容が、すばらしい。
きっと鍼灸師の先生方はこのような本も参考に、腹診を把握しているのだろうと、感じました。

 

特に第二章 「 胸腹中の毒について 」という章があり、
この本をはじめてみたとき、
ほしい!と思いました。

普段に私が施術をさせていただいていてお客様のお体を施術させていただくとき、
触覚的に感じていたものを「 毒 」という言葉で表現しておられたところに驚きました。

<第2章>胸腹中の毒について
第1節 「気」=ガスの停滞
第2節 「血毒」=瘀血の停滞
第3節 「水毒」=汚濁した津液の停滞
第4節 その他の毒と注意事項
第5節 毒の毒性化増大

という内容です。


私自身がお客様の施術をさせていただいて、
体内にガスの停滞がかなり感じられるひともいます。

それが、どうなるか?

 

体内のガスは、代謝不足で老廃物としてのガスが体外に捨てられず、
体内に蓄積している事があります。

どういった場所がそうなっているか探してみると、
左右の肋軟骨部分の下端がしゃくれあがってしまうという人が多くおられ、
その影響が横隔膜の上下動を制限させて心臓を圧迫し、
息苦しさを感じているというお客様でした。

ただ私には、推理推測としてどういった理由と過程で、
肋軟骨がしゃくれあがるは、
横隔膜が動きが抑制されるは、
心臓を圧迫して動悸をされるなど、
おそらくこれは体内のガスの仕業だろうと感じていましたが、
そのようなことを丁寧に解説してくださる本なども手に入れられずにいて。

私一人の勝手な推理推測を、そのままお客様に伝えては、
いかんせんはっきりした権威付けもできていない知恵で、
誤解やご迷惑を生じかねませんから。

そのようなときは、
状態を把握しても笑顔でなんともないか、
ちょっとお腹が硬いとか冷たいとかいった程度の話でチェックしていきます。

そしてガスの性質上、いくつもの予想をしていました。
ただしあまり私が観察したものの通りについて解説してくれている本がなく、
いつまでもあまりお客様に口に出して解説できるようなことがありませんでした。
ただし施術をするに際して、私の想定していたということが少しずつ施術の回を重ねることで、
改善方向へ向かっていますので大幅に間違った見方をしていたわけではなかった。
そのようなことは年月をかけて慎重に接し続け理解を積み上げてきたことです。

ただやはり筋肉部分の膜組織という部分は想像のつきやすいものですが、
内臓の内外にあるガスについて、どのような変化や変質があるものかを、
どこかで解説してくれている資料や本を手にできればと願っていました。


それが本書には、ガスという気体状の毒には、
私の予想したような性質があると書かれているところも多くて。
私が中医学の本を読むと記憶しなくちゃいけない言葉に概念に、
へとへとになってしまうのですが、
この本は、楽しくうなづきながら読み進めることができました。


本書の内容は専門の先生は本書を持っておられるかと思いますから、
そちらに譲らせていただくとして、私がお腹で観察しているところを少しだけ書かせていただきます。
(ただ本書とダブっているところもありますが、それは私でも感づいたところですので。)

・ガスは水の中では上方へと浮かび上がる性質があり、ガスの浮力で上方向に体内で力をたえずかけ続けます
 横隔膜下にそのガスがたまれば、肋軟骨が外へはじかれてしゃくれという変位を表すのですね。
 その場合は、胃の不良や大腸の問題で左側のしゃくれが顕著な人が多いのが特徴でしょう。

・体液中にガスが溶け込んで、それがうまく体外に運び出されればいいのです。
 ですが体外に老廃物を捨てるという機能が弱ってしまうと、そのガスが溶けた体液が体の中をめぐりだし、
 蓄積しやすいような部分に留まりだすことがあります。

・そしてお腹を軽く按じるだけでも、不快さを感じるお客様もおられ、
 肋骨下部に触れて痛みがあれば肋軟骨と横隔膜の癒着・癒合があり、
 炎症の痛みであれば筋の癒着や大腰筋の萎縮などがあるものですが
 そればかりではなく腹部奥で気泡が逃げる流れを見るけることがもあります。
 ただその際に腹部に冷えが強く感じられているときには、ことのほか癒着が強まり、
 癒着した膜組織のなかにガスが封じ込められているときもあります。
 その場合は、すでに内臓奥に癒着が進み代謝不足からの栄養不足と老廃物蓄積が進んでいます。
 その環境下で、一部の内臓疾患が起こりやすいため、注意すべき状態といえるでしょう。


また本書では、ガスという気のほかにある毒として、
瘀血(おけつ)という血液およびその循環により生じたコリ状のものや、
水毒として津液の状態悪化による毒についても解説してあります。
他は食滞と便秘についてです。


そしてもっとも私が勉強になると感謝したのは
これらの体内に留まり続ける毒が毒性化して病を引き起こすメカニズムを6段階にわけて解説してくれている点です。

おそらく誰もがある程度の量、ココで言う「毒」といえる物質が体内に留まっています。
それは私もその存在を施術をする日々で大変納得しております。
そしてその毒というガスや体内の血にも見えるような筋膜間にある潤滑油の酸化物や体液の濁りなど。
酸化した老廃物の物質らは、人により量の多い少ないの差はあると思いますが、どなたも持っている。
そのようにさまざまな健康なスポーツマンや体調を崩された人の施術も含めてしておりますので、
そう感じています。

ただそうなると体内に毒となる物質があるだけで病へとすぐなってしまうようなら、
誰もが人知れず闇のなかで病んでいるようなものです。

でも、そこまでのことじゃないですよね。
それぞれ、免疫力の助けもいただいたり、
がんばって活動しております。

その状態を毒が悪さをしない沈静化した状態と考えて、
沈静化しているならば病を引き起こすまでのことはない。
そのような考えです。

それがやがて邪気が内部に入り沈静化した毒をつついて、
ついには活性化した毒性を現すように変えてしまいます。
すると病が引き起こされるというのです。

そちらを6段階にわけて丁寧にイラストつきで解説してくれていて、
この考えは私には目からうろこがはがれる感じでした。


毒性を持った物質があっても沈静化してこじんまりとまとまっていれば、
そこのスポット的な組織が部分的に機能しづらくなっているだけですし、
そうやって囲ってしまい「仕舞っておく」ことができれば大丈夫です。

人体にはそのような自衛の工夫をなさる機能もあると、
私には思えてなりません。
(※ 明瞭にあると断言できなくて申し訳ありません、臨床の場での経験上、あるだろうと思えることが多々あるので)

ですがその隔離した悪さをする毒をばら撒くようなことをせざるを得ない邪気の悪さがたたって急場がでてしまったとき。
仕舞われた毒が血液やリンパ液など体液等に乗り拡散して体の状態が悪化していく。

察しのいい人は、それって、体を直そうと施術を受けていて、
いきなり体調がどーんときつくなって、やがて以前以上に改善するという好転反応を体験したことがある人もいるでしょう。

その一端として、体内に蓄積してあった沈静化している毒を外に運び出して捨てる力までは体力的になかったところが、
施術等で老廃物の排泄能力がアップしたときに、その毒を体外に捨てて体を改善させることができるまでの力がついたら、
体内の毒が一時的に活性化したかのように血やリンパに乗り、
そしてやがてそれらは体外に老廃物としてそそくさと捨てられてしまう。
そうなると体内の仕舞われスポットとして封鎖された体内のエリアも活性して正常な機能を取り戻せていきます。

その行く末に、「体質が変わったようですね、おめでとうございます」といえるようになるのでしょう。
つまり沈静化して不活性な毒も、つもり積もれば体調悪化はしのげなくなります。
その寝た子を起こすようなことを代謝の力を向上させて処理していくようにする。
それが施術でおこなおうとしている作業なのですよね。

それが筋膜癒着部によって仕舞われるスポットをこさえられためられたガスだったり瘀血(おけつ)だったり、、、。
その部分を筋膜を正常な状態へとリリースをしていくことで、仕舞っていたものが出ると、
本当にきついことが起きることがあります。

特にそれは内科系の不調や手術をなさられた方々の場合、顕著にでてくることが多いようです。

そしてそのような肺や心臓含めお腹の調子がいまひとつの方々に、
「 体質的に改善がしづらい人がおられます 」という説明をする際に、
どのような解説であればわかりやすいものか。

バイタルサイン上、血圧が大変に低く体温も同様であれば、
だいぶ改善がしづらいという様相を持っていると思います。
でもそこの裏側にあるメカニズムを、どうやって説明しようとするのか。

申し訳ありませんが残念ながら、
そのようなことができるほどの生理学上の理解の深さがなく、
そのような状況での説は、後々に至るまでろくなことがない。

私がお客様の立場であれば、「適当なことをいうんじゃない!」と私だったら怒りますから。。。
不安な気持ちで施術を受けに来ているのですから、
わからないことをわからないままで施術を受けるのはいやだなと感じれば、
不信感につながります。
(※ お客様により、説明をぜひ聞きたい、聴きたくない、の両極にわかれますが、多くの場合、聞きたい人のほうが改善はスムースです)


すると
「 私があなたと類似した体調や体質的なものをもったお客様をケアしたとき、大変な時間がかかったことが何例もあった 」
ということは証拠のある確かなことで、そういうのが精一杯のことでした。
そういうものか、となんとなくわかったような気がする、
という説明で施術を幾度も受けていただくというのも申し訳ありませんが、
徐々に以前の施術を受ける前の状況と比較すれば、確かに楽になってきたと感じていただけなければ、
その時点でお客様はおいでいただけなくなります。


そのようなことを避けるための説明をするための記帳極まりないヒント・教えをこちらの本にいただきました。

 


本書では「気」を感得するためのアドバイスなども丁寧に解説してあり、
私には誠実にいい仕事ができるためのツールとしてこの気感を持たれることはすばらしいことと思います。
ただなかなか説明するにも難しいところもあり、ましてや本という実演をして見せるような体験学習のできない場でのこと。

ですがこのような気を感得することが、仕事をする上で、大きな意味を持つということで正面から取り組まれておられる姿勢に、
すばらしい著者だと感謝いたします。