施術のときに深層の不調か所を癒す「てこの作用」によるリリース

私が、圧をかけるリリースをおこなうとき。
意図的に研究していたことがあります。

合気道の本とかで、理論編がしっかり種明かししてあるものをみればわかります。
一般的には、体の力学的作用を研究対象としたバイオメカニクスの本でも書かれていますが、
てこの原理」を施術中に応用しようという研究です。

 


「てこの原理」って、聞いたことがあるでしょう。

支点・力点・作用点

この3点があって、

力点:力を加える点
支点:動作を支える点
作用点:力が作用する点

第1種てこ.jpg

上記の絵は、「第1種てこ」と呼ばれるもので、
シーソーの例をもちいて説明されるときもありますね。

安定性があり、
支点が力点に近い時、速いスピードと大きな可動域生じる。
支点が作用点に近い時大きな力を生じる。

といった性質があります。

動作を支える支点を回転の中心とし、
支点と力点が近く、力を出す人ががんばる持ち手のレバーの距離が遠いほど少ない力でも重い石が動かすことができます。


私が施術でお客様の体の部位に圧をかけるとき。

一見すると、単純に直線的な直接圧をかけているように見えているかもしれません。
背中の起立筋を、腰から頭のほうへずり圧をかけるようなときですね。
大きな範囲へ力をあたえるモーションです。
このようなときは単純に私の体の重さを利用しての圧をかけていることもあります。

ですがもうちょっと小さめのエリアのリリースで、
患部が体の皮膚に近い表面上ではなく、
もっと奥の骨近くに位置するときは違ってきます。

私の体重をかけて圧をかけても滑ってしまって、
目的の筋膜部の癒着している箇所がずり動いてはくれにくいのです!

そのようなときに多用するのが、
上の絵で示したようなてこの原理を応用したリリースです。

 

 

たとえば、私の手首から肩までの手の骨を一本のアームレバーとして固定します。
まっすぐ状態で固定です。
肘を曲げたりしません。

患部がどれほどの深部になるかを図り、
5cmほど奥まった部分だとすれば
私の手首から5cm~8cmほどのところに支点(固定した点で回転の中心となる点)を設けます。
ここはもう動かしてはならない点です。
私の手の長さが60cmありますから、
作用点となる私の胴体部分をちょっと動かすだけで力点には強力なてこの作用で力が作用するのです。

 

私の胴体がアームレバーの持ち手部分を上へと挙げれば、
支点を境に力点は下方へと強力に動かされるのです。
もし胴体を左へと動かせば、右に力は作用されます。

シーソーでイメージするとわかりやすいでしょう。
二人でシーソーに乗るとき、
自分が上にあがれば相手が下がり、
自分が下がれば相手が上がります。

そのイメージです。


シーソーで相手を持ち上げようとするとき、
自分が下に下がらなければなりません。
自分が上に持ち上がることで相手を持ち上げるというのは、
「てこを使っていない」ことになるのです。
てこを使わずに強力な発力をしようとするときには、
人体は無意識に力みだしうまく身体運用をできません。

「ここはどうしても深い患部にアプローチしたい!」
というときに、
自分を上へ移動させる力で相手を持ち上げるような直接的な力の操作をしがちです。
力んで必死になればなるほど、お客様の痛みは強まって表面の皮膚近くの筋をこそぐだけで激痛。
なおかつほぼほぼ身体の奥に作用させるような力はそんなことではとりだせなくて、
患部の癒着した筋膜はそのままの状態で安置されてしまうのです。

 

そのようなときに、
てこをつかいます。
自分の腕の骨をアームレバーとして使います。
患部の位置や範囲から私の手首から何センチのところに支点を設定するかを決める。
その固定した回転軸となった支点を動かさないことが、
やってみると実に難しいのです。
ここが長年の修行が不可欠です。


でもその操作に慣れてきてコツをつかめれば、
お客様の身体内部、奥にある癒着ははがれだします。

 

おおかたはお客様の患部を見定めて、皮膚から骨までの距離を測り、
骨の間際に根付いた癒着を緩めようとするため、
単純な筋膜部の緩められる痛みではなく、
炎症をもっている骨膜部や炎症を持った腱にアプローチが及んでいるため、
皮膚の表面上をこそげ落とされる痛みとは違った、
別の深いところからの痛みを感じることがあります。

 

深層筋は、痛覚神経がほとんど分布してないのですが、
骨膜や腱などは、非常に多くの痛覚神経が張り巡らされています。
その部分の癒着を解くことを狙っているのですから。。。。
^-^;
なので、私の施術は痛くないわけじゃないです。
端的に言えば、痛みが出る時があります!!


ただ動脈等の重要な器官は骨に近い深部に位置しております。
動脈管を癒着して硬化した筋膜が圧迫して血流を滞らせている部分は、
体の表面にはありません。
身体の内奥深くの位置にあるのです。

そこを狙い撃ちしてリリースをしているので変化が長めに続くということと、
血流を正常化させることで血行不良で働きづらくなった神経系の状態を改善、
自然に体調を回復していただけるようなきっかけづくりをさせていただける。


そのようなことが私の施術が利く仕組みのひとつです。

 


ただ、施術の過労で疲労困憊で意識が遠のくというときには、
冷静な判断ができず、
支点を設けて固定、肘を伸ばして、、、まではできるのですが、
圧をかけるときに、下向きに圧をかけようとするときに下に向かって作用させようとしてしまう。。。
本能的に、シーソーのような上と下をあべこべの方向へと操作をしなければならないことを忘れて、
支点を動かしてしまい、てこの作用が崩壊した状態です。


合気柔術でいえば、合気上げをするときに、
持ち上げようと頑張りだすようなことをしている自分に気づけないで、必死に焦る感じです。
そうなると理想的なリリースが起きません。

体調管理、休息をいただくこと。
大切ですよね。