抗重力筋群とその他の骨格筋の緩まり方(寝れば緩むかどうか)の違い

 

今日、知り合いの施術をなさる女性の先生が「貧血がひどくて・・・」ということで、
急遽、出張でヘルプに出かけました。


先月から今月にかけて、外出自粛の影響から自宅にこもることが多く、体力を落として体調不良。
激しい咳をしながら過ごす日が多かったといいます。

肉体的にきついわけですが、同時にコロナ感染を疑う恐怖が背景にあり精神的にもつらかったそうです。
コロナウイルスに感染していない状態を示す条件が多数あるため、
冷静に考えることができれば精神的なつらさは減らせるものですが、
毎日のようにマスコミ等から流れる注意喚起を刷り込まれるならば焦りから冷静さを失うものでしょう。
精神的な緊張は、深層筋をしこり化させて代謝を一気に悪化させる自己破壊力を秘めているのが特徴です。

ご自宅にて上がらせていただいて脈をみさせてもらうと、
脈は脈の打つ力が弱った細脈で血管やわらかすぎる軟脈。
食が細っていて、お腹がすかない。
タイマーで食事時間を教えてもらうようにする工夫が必要なほどだそうです。
ただし先月から今月中ほどの咳は、ほとんどでないほど回復しています。


お腹をチェックすると、内臓全体が下垂し、みぞおち部分の横隔膜直下に臓器がいないのです。
おそらく横隔膜を下方に下げていっきに息を爆発的に吐くという咳のし過ぎでしょう。
みぞおち下の臓器がない場合、そこに水がちゃぽちゃぽたまることもありますがそれは確認できません。
そこからみてもやはり横隔膜の使い過ぎ、腹筋の腹直筋や腹横筋の使い過ぎのようです。

お腹を、よーくさわってみてもわからなかったが、ベン石温熱器を当ててみぞおち直下を緩めると、
その奥に強烈にこわばった大腰筋がでてきた。
その大腰筋の前には、大腰筋のしこりで分断された形になった胃が強く脈打つ。
胃の幽門と噴門の間に大腰筋のしこりが直に分断圧をかけてしまっているため、
これでは食欲が下降するものでしょう。


左右のふとももの部分で言うと、左脚太ももに強すぎる緊張を感じて、まずはそちらの大腿直筋を緩める。
それから鼠径部を緩め下垂した臓器を上にリフトアップしていく。
そうした手技をしてみたが臓器の下げ止まりはやまないのです。
どうやら大腰筋のみぞおち部分のしこり化が腰の骨へと根を張りすぎているようです。

上部大腰筋をカウンターストレインというオステオパシーの手技で3度ほどリリースし、
続いておへそ周囲の大腰筋のこりをベン石温熱器の熱を使って緩めていきました。

だいぶてこずりましたがそれで大腰筋をゆるめることができ、
胃の中ほどが大腰筋のしこりに当たり強烈で異常な脈動が響く状態が収まってきました。


その後、おいしそうにおそばをいただいておられたので、
それをみて、ほっとしました。


こちらの方がいうには。
「こんな風になると、寝てもなかなか復活しないのに・・・」とおっしゃられます。


寝たままの姿勢で筋力をあまりはっきしないようにするときは、
筋肉のパワーを発揮させる刺激がなくなれば。
筋肉は廃用性萎縮がはじまります。

プロテクター筋と呼べそうな屈筋群は、特に廃用性にかかります。
もし大腰筋が屈筋群であったら寝れば状態が改善したわけです。

ですが大腰筋は骨格を立てたままにして支える抗重力筋群に所属した筋肉。
抗重力筋群は、容易に廃用性萎縮がおこり力が先細るのが早すぎたなら、
数日も入院して寝込めば、それ以降、寝たカラダを起こすことさえままならなくなるでしょう。

抗重力筋群は、加齢においてもしっかり鍛えておけば貯金ならぬ貯筋が可能なもので、
筋肉の厚み等を保持しやすい傾向があるのです。
この保持には筋肉がしこり化したらしこり化のまま維持して悪影響を受け続けるという傾向を示す基盤にもなっているといえるようです。

それにより抗重力筋群に分類される大腰筋が固まれば「寝てもなかなか復活できないカラダ」になるのです。


なのでこの方のように咳で横隔膜を動かしたとき横隔靭帯とつながる大腰筋上部部分をも刺激をし続けていたときには、
他動的な施術というやり方で抗重力筋群のひとつにあたる大腰筋をゆるめてしまったほうが手っ取り早く改善します。
そして今回の私の施術では、そのような試行で改善成果をあげることができたようです。


ぎっくり腰のときは、大腰筋がキンキンに硬さが増した筋断裂や捻挫が生じやすい状態をしめしております。
だからこの場合も、放置して寝かせておけば早々に治るということはありません。
手技療法のノウハウをもちいて目的の大腰筋硬化部を緩めたら、
早々に痛みが半減や軽快へとつながるものなのです。


ちなみに大腰筋は、お腹の奥にある深層筋です。
痛みを感じる皮膚の上にシップ等を貼ったとしても深層筋の炎症には効き目がないのです。
なので対処法の選択によりつらい状態が長引くこともあるでしょう。