錦絵をみて

江戸時代以前の日本人の文化、生活を知るための資料として『錦絵』がある。

そして同時に、身体運用法も観察することができる。

関心がある方は、ぜひこちらのページを見てもらいたい。

http://www.hi.u-tokyo.ac.jp/personal/yokoyama/nishikie/cover.html
東京大学史料編纂所錦絵コレクション

丹念にページを参照して錦絵を見てみると、
官軍の行進や力がみなぎっている男性などさまざまなテーマで描かれている。

そのなかでいくつかの絵の歩き方を観察する。
すると「おや、おや?!」という違和感を覚える。
共通して観察できるのは、
右足が前に出ていると同時に右手が前に出ている、ことだ。
通常、右手を出したら左足が前に出る。
それに対して「同側の動き」が観察されるのだ。

これを「なんば歩き」と呼ばれるものだそうだ。
現代人には違和感を感じてしまう。
緊張してアップアップの歩き方、のイメージだからだろう。

しかし、不思議なことに、
いま運動科学をひもといていくと、
その当時の動き方の合理性が見えてくる。

同側の動きは<< 二軸 >>となる。
身体の中心軸が一本据えてある<< 一軸 >>の動きとは違う。

二軸には不安定さがある。
コントロールが一軸と比べると難しいように感じ取れる。
だが身体の筋肉を大きな筋肉から小さな筋肉まで、
運動・仕事に対してすべて協力させる良質な動きをした際には、
二軸の動きの不安定さの中から強固な安定性を確保できる。

確かに一軸の動きで、身体の筋肉を繊細に使おうとすると、
「力み」が入ってしまう。
僕の身体でなんども試してみても、そうだ。
それに対して二軸の動きも力が入っていくという感じはある。
だが、それは「力み」が入っていくというような感じではない。

「力み」 が入ると、緊張して動けなくなる。
拮抗筋がフリーズを起こすのだ。
しかし二軸の場合は、状況が違う。
確かにまだ私が二軸の動きに精通していないので、
拮抗筋のフリーズも観察されるが、
自分の意志の通りに、背部を動かす意識で、
自在に四肢や姿勢を遠隔操作できる。

そして不思議なことに、
この二軸の動きをトレーニングしていると、
「こんなに楽に呼吸ができるの?」と驚いた。
動き続けても息ひとつ荒くならない。
かえっていつもより楽に呼吸できているから、
体調がよくなっていく感じ。
疲労感がなくなっていく。