シッポのある動き


犬・猫・ネズミ・金魚など、
脊椎動物の中でシッポがあるものがほとんど。


尻尾の役割を考えてみる。


・立つときのバランスをとる
・歩くときなど動くときにバランスをとる
・呼吸をするときの胸郭をスムースに開く
・動きのリズムを造り出す


きっと他にも存在メリットがあるはずだ。
動物を観察すると尻尾の柔らかい柔軟な動きは、
体全体の柔らかい動きにも通じているようだ。

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脊椎動物のシッポ。


人間はその尻尾を進化の過程で失う。
尻尾の消滅は自然との適応において、
仕組まれた結果だ。
だから尻尾などは必要ない。


はたしてそうだろうか?

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合気道養神館を設立した達人・塩田剛三
その著作を読んでみると、
金魚の尻尾の動きに大きな動きのヒントを発見した。
私がその本を読んだ当時には、
重要性がよく見えていなかった。


『金魚の尻尾の活かされた動きが合気道の動きの発見に通じる』
とはいったいどのような真意があるのだろう。
達人塩田剛三がわざわざ数冊の自著に同じように金魚を語る。
この扱いは只事ではない!!
きっとその裏には稲妻に打たれたような鮮烈な気づきがあった。
そしてその発見は実際に先生の技に活かされて達人といわれる。


金魚のようにヒラヒラとたなびき、
人間にはまねできないような急旋回泳ぎをする。

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一部の尻尾を失った動物たち。
それは進化の過程で尻尾が不要になったからではなく、
進化の過程で尻尾の役割を体のその組織の中に取り込んだ。
そう考えることはできないだろうか?


人間はいまは尾骨という尻尾が退化した痕跡しか残っていない。
だが人間の骨盤の大きさは他の同体重の犬と比べ大きい。
仙骨部分も他の尻尾をもつ動物と比べて、
一切引けをとることはないという。


非常に骨盤が発達した動物が人間。


尻尾の機能。
それが尾骨だけではなく仙骨内に包含された。
ただ無用になったから切り離したのではない!


そう考えると『尻尾のある動き』ができているかどうか。
ここに動きの原初的なものをみいだせるはずだ。
そしてそのプライマリーな動きには、
塩田剛三をして驚愕させるパワーと質が内在する。


このようなことをいうと不思議に思われるかもしれない。
だが仙骨や尾骨の柔らかさと身体の柔らかさや健康の度合い。
それを長年見つめてきて出てくる言葉です。
運動能力に長けたスポーツ選手の仙骨・尾骨。
足腰や肩などに痛みを感じる方の仙骨・尾骨。
驚くほどの違いを見つけることができます。


「この人は尻尾のある動きができているな」
と言えるような人。
中心軸が備わり、
尻尾の関節がなめらかに分化して繊細に動き、
その分化が全体の動きとして統合されている。
尻尾で背後を察知しバランスを取り呼吸する。
そのような優れたセンスを持つこと。
そこに重要な体の活かすための示唆が含まれている。


尾長猿のような自在に使いこなせる尻尾が自分に生えていると想像する。
そしてその感覚を感じ取ってみて動きの質を吟味してみる。
透明だが質量のある尻尾を右に動かしたとき上半身はどう動くか?
尻尾が右に振れたときに首の力を抜いていても同様に右に動くはず。
そして尻尾を左に振れば左に首が自然に動く。
尻尾をねじればどうか?
尻尾を下げてはどうか?
尻尾を上げてはどうか?
そのほか工夫次第で、
なぜ真の脱力を必要とする合気道の塩田先生が、
瞬時に体を捌く秘密をそこに見つけたのか判る。


『尻尾のある動き』を実践しているかどうか、
おそらく革新的な健康の度合いの開きを生む。


尻尾のある動きをまずは想像してみてほしい。
尾長猿風のものでもいいだろう。
自分の体重を支えることができるだけの強力な尻尾だ。
木々の枝を渡り歩くときにバランス棒のになる。
その尻尾を活かしていれば体の重心は活き、
下半身が充実して上半身の無駄な力は消える。
呼吸も楽になる。


椅子に座って長時間いれば尻尾の存在を見失うはずだ。
そのダメージの蓄積は腰を固める。


長時間尻尾を使えない状態は体によくない。
もちろんその尻尾の存在を意識できていない状態も、だ。


自分の体で実験観察した。
その結果このように考えるようになった。

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蛇足だが、
僕はこの尻尾の大切さを直感したのは、
家にネズミが出てそのネズミとの格闘のとき。
近隣の立て替えラッシュにより手練のネズミが、
新たな新天地を求めて移住しようとする。
百戦錬磨のネズミだ。
「なんてこいつはすばやいのだろう!」
「敵ながらあっぱれ!」と運動性能に驚嘆。


ついに追いつめた。


そのときじっとヤツの尻尾を見た。
動く瞬間にリズムや弾みをつけるために動く。
それを察知してその動きを封じ込めればいい。


だがその尻尾を凝視しているときに、
『人間には尻尾がない』という当たり前のことに驚いた。
この敏捷性あり生命力強い動物にあって私にはない。
それはなぜだろう?
秘密を知りたい。


それが始まり。


人知れず苦労が絶えない。^^1