『上虚下実』と体のリリース深度


だから私たちは
『いい足になりましたね』とか『下半身が理想的になってきましたね』
といってとても喜びます。
ワークを安心して進めていくことができるからです。

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いい足をしているということを、
ちょっと難しい言葉でいえば、
『上虚下実』であるかどうかといいます。


『上虚下実』とは?
中国武術では誰でも知っている姿勢注意の一つ。
下半身がしっかりしていて上半身がその土台にしっかり乗せられている様子。
上半身はしっかりした土台に乗せられているため力まずに楽にしていられる。


というような状態です。


上半身の筋肉のしこりを解く量は、
下半身の状態を観てから決めます。
(私の場合は特に)


足や臀部の筋肉の柔軟性があって初めて『上虚下実』。
同時に物理的な下半身のコンディションが問題です。
これがだめなら安全に先に進めません。
姿勢コントロール以前の問題です。
それがワークで筋膜をリリースするときに
次のステップへ移れるかどうかの指標になるのです。

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三角形姿勢バランスを表現してみると...
『上虚下実』は▲のような安定型。
倒れづらくて安定して立てますね。


それに対して下半身が不安定な方は...
『上実下虚』は▼のような不安定型。


『上実下虚』の不安定な状態で、
体のなかの筋肉のバランスを大きく書き換えたり、
イメージ療法的なセッションを多く受けるとき。


上半身に気が滞留して全身に回らなくなります。
偏差といいます。


・・・といわれてもわかりにくいですよね。^^;
上半身が硬直して呼吸が苦しくなり出して、
パニックディスオーダーと呼ばれるような、
肉体的・精神的につらい状態に陥ることがあります。


『上実下虚』は▼のような不安定型であれば、
ぐらつくのが当たり前。
そのぐらつきを体の中の筋肉をしこり化させて、
「第二の骨」を体内に作り上げてしまいます。
骨の硬度まで固まるほど癒着した筋肉です。
状況に対応した能力です。


そのおかげで不安定な『上実下虚』でも立てるのです。
長年かけて不安定の中に安定を築き上げてきたのです。


体内のしこりに頼って立っている。
これが『上実下虚』状態です。


だからいきなり頼りにしているしこりを抜かれれば、
つっかえ帽を失った家屋のように揺れがきつくなる。
人間は倒れたくない強烈な本能により、
筋肉を硬く張ります。
体を全体的に固めることで新たなつっかえ棒を作るのです。
そのつっかえ棒を作るときには、
体を緊張させて硬直させる必要がある。


息を止めさせるのが最も効率的に体を硬直させる術なのです。


驚いたときに息を『ハッッ!』と吸い込み、
そのまま固まってしまうのと同様です。


そのとき肛門と性器の間あたりの会陰部分が、
ぎゅん!と上方向に引きつるほど引きあげられる。
するとみぞおちが固まり横隔膜がうまく上下できない。
同様に喉の声帯隔膜も硬直してしまう。
首を軽く締めつけられた状態です。


そうやって『呼吸ができない』状態を作るのです。
呼吸関連筋がことごとく硬直して動けない厳しい状態です。


これが偏差に至る要因の大きなものの一つです。

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『上実下虚』の肉体コンディションの方も、
『上虚下実』になるような技術を学んでいれば状況が変わります。
太極拳日舞や・・・と下半身を巧みに裁いて姿勢を維持する技術を
事前に学んでいる方々です。


そのような学びに親しんでいる方々は、
体の不安定さのなかに定住しないでしょう。
新たなより安定した支えを発見してくれるはずです。
その方の立つ技術力の理論や感覚での習得度を信じて。


許可を得てそれに賭けるときがあります。


そう考えてみると下半身の使い方を日頃研究なさっている方々は、
一歩前進して体のコンディションを改善できるといえるでしょう。


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