セラピーに必要な『共感力』

音楽セラピーをご存じですか?

ここで私がいいます音楽セラピーは、
モーツアルトを聴くなどの受け身の音楽鑑賞ではありません。


自閉症傾向があるまたは発達遅滞傾向があるなどで、
感情の表現力や知能の発達に問題がある児童が取り組む能動的な音楽セラピー。


セッションルームには、
太鼓にピアノにカスタネットにトライアングルやシンバル。
様々な楽器がある。


セラピストは子供に楽器を握らせる。
楽器を握ることに興味を示さなかったり、
極端な拒否反応を起こす子供も多い。
セラピストはそれにめげることなく根気よく付き合う。


子供が太鼓を叩くとその叩き方のリズムに合わせて
ピアノの伴奏をしてあげる。
ジャズの共演セッションのようなものです。


子供は自分が叩いた太鼓の音に共感して、
ピアノが伴奏されていることに気づきだす。
それに驚きと喜びを感じる表情が伺える。


徐々に閉ざされていた生来の表現欲に火がつき出す。
今まで何かに興味を示すという反応が少なかったが、
この共演セッションを通じて改善していく。
子供の演奏もゆっくりレベルがあがりはじめる。
独創的な『音』を表現し出す逸材の子供もいるようです。


人は自分の生きている証を残したいし自分を人にわかってもらいたい。
それには自分を表現してわかってもらいたい。認めて欲しい。
社会的な動物の人間にはそれは自然でいて本能的な欲求です。
その欲求が満たされることは自分の生きる喜びを感じさせる。
そして徐々に無表情だった子供達が笑顔を見せるようになる。
始めは乱暴に楽器を叩いていただけでしたが、
少しずつリズムやテンポを見いだしていく。
そして協調性が芽生えていきます。


実に興味深い自己開示の流れですね。


ここでは『音楽』を「音を楽しむ」ものとして捉え
古典の名曲を演じることが本分ではない。
「うまく弾く」必要がない世界なのです。
嬉々として週一度の音楽セラピーの時間を心待ちにする子供に必要なのは、
音楽や楽器を通してセラピストに共感してもらうことだろうと思う。


『共感力』が人の能力を開花させる好例ですね。


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たとえば旅に出る時に一人旅もいいが、
二人でいけば楽しさががパワーアップ。
そういう旅もありますよね。


『ねぇ見てみて!あそこに綺麗な花が咲いてるよ』と言えば、
相手が『そうだね。あの花のグラデーションが美しいね』と
共感して応えてくれる。
自分の言葉に共感してもらえた喜び、
相手の言葉に共感したときの喜び。
一体感がそこの場所に生まれます。
相手が共感して応えてくれる喜び。


人と人が素直で素朴に共感し合い結びついたり寄り添うときに、
自他ともに幸せを感じるものです。
共感して心が温まる。


その機会が日常生活で増えればセラピーの大半は不要となるかもしれません。
なんとなく、そのような気がします。