ものを縦に積むときの重さの作用とは・

野口体操の野口三千三教授の言葉。


『からだの動きの主エネルギーは、
筋肉の収縮力ではなく、
からだの重さである。
そうであるなら、
からだの動きやその感覚において、
「落ちる(落とす)動き」や「降りる(降ろす)動き」が
基本でなければならない。』


この言葉の意味をかみ締めて思いをめぐらしてみる。


からだを支える力は筋肉の収縮力だと考えるのが普通だと思う。
だがここで野口教授の言葉では、
筋肉の収縮力が主エネルギーではないという。
からだの重さが主エネルギーとして動きをつかさどり、
姿勢を整えるという。


からだをちょっといくつかのブロックとして捕らえてみよう。
説明の便宜上、立方体の三つのブロック、
具体的には頭部ブロック、胸部ブロック、骨盤ブロックとしておこう。
この三つのブロックをモノとして把握する。
つまり本当の積み木のように考えるのだ。
この積み木をひとつひとつ縦に積んでいこう。
骨盤の土台になるブロックを置き、
その上に胸部ブロックを乗せる。
胸部ブロックの上は頭部ブロックを乗せる。
このときに三つの積み木ブロックは糊や接着剤でつけなくてもいい。


なぜならばひとつひとつのブロックは別々のものだが、
ひとつの土台の上にひとつを整理してキレイに載せれば重力によって、
その二つのブロックがあたかも一体のブロック化した安定体となる。
重力がふたつのブロックの関係性を結んでいるためにおきる現象だ。
重力は鉛直線上に働き二つのものの重心点を重ねるようにおけば、
このような接着剤がなくても二つのブロックが一体化するように見える。


ひとのからだもこんな感じなんです。
重力が二つのブロックの関係性を生じさせている。
重力を感じ取りブロックごとの重心点をあわせなければ、
重力により偏り傾き倒れるのです。
筋肉はこの重力で結ばれるべきブロックをうまく合わせられずに、
傾いたときに筋肉の収縮力で倒れないようにつっかえ棒を作ります。
または倒れて傾いている状態が行き過ぎないように筋肉が収縮して
どうにかこうにか正しい方向へと是正するようにと引っ張ります。
つまりうまくずれないようにブロックを平積みすれば、
筋肉の収縮力は今よりずっと小さなエネルギーでまかなえるのです。


そのように考えると、
野口教授のおっしゃられる言葉の意味がわかりやすくなるでしょう。


体の全身に分けられたいくつものブロックが縦に積まれた様子を
『立つ』と呼びます。


からだの筋膜の癒着が点在して歪みが強いときには
体のブロックをうまく積み上げることはできません。
その場合は立つ概念はわかるが体感しづらいでしょう。
そのために上記の言葉が言葉遊びをしているだけのように思えてなりません。
ですが体の筋肉のゆがんだウエットスーツのような癒着が解けてくれば
徐々に野口教授の言葉を深くかみ締める機会がきたといえるでしょう。
頭の中の筋肉の収縮力が支えるというイメージを書き換えましょう。
一部の部分的筋肉の収縮力によってバランスをとる工夫をかみ締めた
ステップを通り抜け、
次のステップの体の全身の構造を整えることで支えるように歩みを進めましょう。


ちなみにその場合には骨格の構造がバランスをとる主役となる、
ということを付け加えておきます。