歩兵よりも大将をたたく

施術をするときは患部のみをみることはしません。


たとえば強い腰痛で長年困っているという方がいたとします。


患部は左腰部。
ならば一般の方はこの部位に薬局で買ってきたシップやインドメタシン配合の塗り薬を塗る。
またもうひとつ踏み込めばキネシオテープを利用したサポートをする。
いずれも患部に直接貼ったり塗ったり。


でも最近は一般書としてマッサージ本などが多数購入できる。
それでなんとなく買ってみて試してみて
患部が悪化して収拾がつかなくなり施術院に駆け込むことがあるそうです。


あまりからだのことを知らないで施術を行うときのリスクは、
もしも炎症を持っている患部の左腰をいきなり圧をかければ、
痛みによる緊張や不安感の増は深まり炎症は長引くでしょう。
痛みがあるからかわいそうだからよくしてあげようと思うが
かえって患部の炎症が活性化されていけば元も子もないです。


母が傷ついた子をなでたりさすったりするタッチは
患部の活性を押さえて痛みを沈静化させる質のもの。
直接患部にアプローチするにはこれを活かしたもの。
そうしておけばよいのだろうと思います。




では施術者がそのような部位を改善するための作業をみるとどうでしょう。


患部を最初から直接触れることはあまりしないことが多い。
巨視的に患部周辺から手足の遠位に至る関連部位を見つめています。
患部とかけ離れたポイントに手を加えていくと患部の痛みが薄れる。
患部がもし打ち身のようなものでも遠位関連部位の緊張部を観ます。


それから患部を直接アプローチする必要があるかどうかを判断する。
患部がじきに自力で回復しそうで触らなくてよければ終了です。
もし患部に直接圧をかける必要があっても
すでにつらく患部を緊張させている周囲の部位が解けています。
そんな血行が回復し癒された患部へのアプローチは無理がない。


無理のないアプローチであればあるほど、
なんとなく狐につままれたような
簡単に自然に解けていく。
すると「はじめからそんな悪くなかったんだな」という気持ちになる。
そういう仕事ができていれば施術者としてうれしい限り。


ある種の施術を勉強していくと、
そのような手順を踏んでいくことがあります。



症状として左腰の痛みが感じられているのですが、
その裏にはいくつもの問題点が複合して含まれているようです。


それらの問題点を整理していく。
そのどれが問題点の大将かを見つけだす。
それを軽く揺さぶりをかける。
そこが患部とはかけ離れたところにある。
そんなことが多いのですね。
痛みがでている患部は大将ではない。
ときには歩兵程度です。
歩兵をたたいても大将がい続ければまた新たな歩兵が連れてこられる。
その繰り返しとなります。
歩兵を倒し続けるのも一苦労でそれだけでも意気消沈してしまうはず。
ここに勢力と時間を傾けすぎてはいけないのだと思います。


そんな中、
大将の勢力は衰えるどころか
潜伏中に増していくのが通常。


そのような背景を感じ取りながらどこに大将がいるか探し出す。


ただすべての人に当てはまる大将の情報などはありません。
そのため一人ひとりの個別の体の情報を読み込み推理判断。
その思索を深めてより深部に隠れ陣取る新たな強力な大将を見つけだし叩く。


そんな雰囲気が私の施術にはあると思います。