筋膜の考察の続き

筋膜の考察の続き

昨日の『筋膜の支える仕組み』に畳み掛け、
筋膜の様子を考察していきましょう。


筋肉は、
通常関節をまたいで伸びたり縮んだりすることで、
骨格を動かして姿勢を維持したり運動をするようにできています。


人体は良くできたものです。
体重が増えて体の容積が倍になっても、
体重が減って体の容積が減じられても、
だいたい体重の増減が落ち着いたころには、
体の全体が満遍なく増えたり減ったりする。


つまり顔だけの体重が2倍や3倍にならないですよね。


腹や足だけが太くなったということもありますが、
それは多くは腹部は腰椎が前湾曲して上下が萎縮しつつ前に出ていたり、
足は歩き方や立ち方で脚部に負荷をかけすぎていてバンプアップが著しいか、
そけい部や膝裏等の硬化がすすみリンパ管がつまりむくみだしているときか。


いずれにしろ体全体が膨張したり収縮するときには、
少なからずある程度のふくらみをもった風船に
もう少し膨らまそうとするときのような、
満遍なく膨張する仕組みが成り立ちます。
逆に少しずつ空気を抜けば、
満遍なく前後も上下も斜めも八方が等しく縮みだす現象が起きますよね。


このとき風船内部で起きていることは。
風船内の空気が八方に同圧で外に向かい押し出そうとしている。
「空気」が風船を膨らませたままにするための支え材です。


人体にも同じような支え材がある。


おもちゃのホバーマン・スフィア(Hoberman Sphere)を
広げたりたたんだりする感覚です。


ホバーマン・スフィア参考(YouTube映像):
http://www.youtube.com/watch?v=xRL0tMaNgjQ
http://www.youtube.com/watch?v=d7EHG6aV8EU


スフィアに触れたことがある人がおれば、
なめらかに広げられたり閉じられる仕組みに驚くことでしょう。


なめらかな動きで膨張と収縮します。
広げればプラスチックでできた弾力があるボールとなる。
このような弾力が人体の皮膚の弾力の仕組みにも入っているのです。


そして同時に、
もしスフィアのパーツの一部分だけでも接着したら、
全体が膨張収縮できなくなる仕組みも人体に似ている。


ここに着目しておかなければなりません!


筋膜の癒着とは、
一部の癒着が関連部に甚大な影響をあたえ、
全体の動きにも悪影響をあたえてしまうというかかわりあいがあるのです。


体の全体が動きにくいとしても、
全体が等しく問題があるわけではなく、
ここの影響力ある一部の癒着がぎこちない動作や
できない動作を生み出していたというわけです。


そういった仕組みを理解すれば、
「ではその一部の癒着ってどこにあるの?」と探したくなりますよね。


この一部の癒着というものは急性の場合は、
炎症がある程度治まってから癒着を解けば、
リリースがしやすいですし劇的に快方する。
そのようなケースがあります。


ただ長年かけ固められた慢性の凝りは別物。
一部分だけの癒着だったのが、
動きを抑止されて可動が悪くなった部分も癒着が進むのです。


筋膜の目が恒常的に萎縮したままで
血行等の代謝が悪くて筋膜が萎縮したまま癒着しだすのです。
そうなるとそのような場合にしこりができやすい場所とは?
という知識や臨床と深部に癒着が進んでいるのでそれを解く
技術がないと対処がしづらいと思います。


そしてそのような癒着した筋膜部分を緩めると、
美容にいいというのは筋肉や肌に張りが出てきます。
血管やリンパ管を圧迫して体液循環を阻害してしまう
そのような作用が強く出る深層筋膜の癒着が緩められたからです。


体液循環の改善は栄養素を末端まで進めてくれる。


それにリンパ液等に含めて体中に送り出す胸腺からの免疫物質も、
柔軟な筋膜となれば末端まで送りやすくなります。
筋膜を深部まで緩めてもらうと、
去年まではこっぴどい風邪を何度か引いていたが、
今年は平気だよという人が、ずいぶんでてくるんです。
免疫系の行き届きが改善したからという側面もあるのでしょう。


またヨガ等をおこなっている方で、
長年難しかったポーズがとりやすくなることもありますよね。
関連した筋膜の癒着した部分が緩みだす量に比例して関節の可動域が正常に近づきますから。
ただ脳裏に私の動かしていい関節の可動域はここまでと制限を加えている人がいて、
そのような方はイメージで体の関節がすでにゆるくなって曲げ伸ばしできていると
描ききりましょう。


私はそのような運動をすでにしてしまったと、
過去にすでにしてしまった実感を想像しつつ。
どの筋肉が伸びてどの筋肉が縮むでしょうか。
皮膚感覚や体内の内部感覚を伴いつつ
感じ取りましょう。


そして「現在完了形で動作を描き切る」がポイント。
先ほどより数センチから10センチ近く前屈量が変わる人もいますから。


それができてもまだ伸びないっていうところは、
筋膜の癒着等が内在しているかもしれません。
それそのようなバリアは一気に打破せようとしては、
体内にダメージが生じます。
少しずつ可動範囲を広げる日々の積み重ねと修練が大切ですよね。


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それは骨から皮膚の間にある細胞の体液を含む連なりであったり。
世の中で水ほど圧縮してもつぶせない液体はないですから。


ただ、もし水分だけで立体化しているとしたら?
重力によって下方に水分はたまります。
それにやわらかく伸び縮みする布袋に
水を入れたら「たぽたぽ」して「ぶるんぶるん」して
常に大幅な変形をしてしまうでしょう。


たとえばビニール袋に水を詰めて持ち上げてみてください。
水の量が多ければたぽたぽで、
水の量が少なければぐにゃぐにゃ。


もちろん人体は動きとともに変形をします。
ただ明らかに水入りのビニール袋とは異なる動きをする。


ビニール袋は大雑把なビニールの仕切りひとつで存在しますが、
人体では細胞ごとの仕切りもありますし筋肉同士の仕切りもありますし、
そしてもうひとつ重要な仕切りがありまして。


水入りのビニール袋に同程度の大きさのしなやかなスポンジを入れます。
そのようなようなものを握り締めた感触が生体の筋肉に近い扱いです。





ただし私の頭の中には「へちまたわし」が観えています。


「へちまたわし」ってご存知ですか?^-^;

筋膜部と骨を残して筋肉のたんぱく質等をすべて取り去る。
すると骨とこの「へちまたわし」のような筋膜の支え材がそこに残る。
へちまの種の入っている部分が空洞になって、
これを隣り合う筋同士の中隔とイメージしても面白いだろう。


生体にできた複雑系フラクタル構造だから
樹木のフラクタル次元が1.3〜1.8に近しい。
そのようにイメージしています。


PCでフラクタル次元の数値でフラクタルを描画すれば、
筋膜の骨から皮膚に至る間の支え材部を描けるでしょう。


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余談ですが、
たとえば粋がよい魚の刺身をいただきますと、
こりこりとした触感と食感を味わえますが、
鮮度が落ちてくるとぐにゃぐにゃしてきます。


生体の身と死体の身とでは体の中が別物。
そこを分けて考える必要があるんですよ。


筋膜のコンディションも大変顕著に、
生体であるかどうかで異なるのです。


生理学の本などを読むときに、
生体条件目線で研究してみる。
そうしないと施術をするとき、
迷宮に迷い込むことになります。


ご注意を。