内臓の施術をする難しさの考察の一部

人体内臓部の胃の下部から垂れて腸の前面を覆う脂肪に富んだ薄い膜の『大網(だいもう)』
をご存知でしょうか?


脂肪でできたあみあみ状のシートのような組織といえばよいのでしょうか。
開腹手術をするときにはじめのほうに見えてきますね。


大網。


これは非常に役立つ内臓の修復サポーターです。


内臓が炎症や傷を負ったとき。
手術をしなければ私たちはそこに包帯を巻くこともできない。
固定して動かさないようにしたくても、
呼吸をするたびに横隔膜が激しく上下動して動いてしまう。
それでは患部を安静にして傷口や炎症部を固定していたくともだめ。
簡単に傷口が開いてしまう。


そんなときに大網の脂肪つきシートがスルスルッと患部に舞い降りてきて
その患部に付着してクッションになってくれる。
固定してくれて炎症を和らげる成分が患部に定着できるようにしてくれる。
多少の内臓部の問題でも大網のサポーター役が機能することで
直してくれるわけです。


それに大網は患部を包み込んで腹腔内全体への波及を防いでくれる。


これで大網はとても重要なお腹のガードマンだということは、
お分かりいただけたことでしょう。


内臓部の手術をしたため開腹手術をしたあともこの大網が活躍します。
手術は止むに止まれぬ理由で他に方法がないという最終手段として
おこなわれるものです。


ですが大網は少しだけ困ったことを引き起こします。


問題ある内臓患部を包み込みサポートしてくれるのですが、
その患部が癒えたあともそのサポートが消えてくれません。


大網が患部周辺に絡まった状態がずっとつづいてしまうのです。



たとえば開腹手術をしていて、
大網の玉になっている部位が残っている。
それを診てかつてそこが悪かったんだなと見えてきてしまう。


それにときにかつての大網の修復痕跡が多ければ
臓器に大網が病的癒着を起こしてしまうこともある。


内臓を常に圧迫するように状態を維持しているならば、
炎症部が出てきてそれもサポートしたりと
大忙しのお腹の環境を持っているとそうなっていくことでしょう。
強い精神的ストレスは自律神経系を誤作動させて内臓の機能を低下させ、
それもあまりよくない原因になるともいわれています。


他には内臓疾患を起こす方は血液が内臓部分にたまりすぎて、
それにより内臓内部からも自ら気づかぬうちに圧迫しているときもある。
本来なら足先まで流れるべき脚部の血液が、
鼠径部のしこりが強く鼠径部下の脚に向かう血管を圧迫しているとき。
少なからず内臓内部の血液の滞留がでてしまうのです。


骨格筋の痛みや不快感も本当に嫌なものだと考えてますが、
それを手間はかかっても安全にリリースする方法はあります。


ただそれ以上に外見的には目に見えない内臓部への問題が本当にシビア。
それはやはりそのような状態になっている部位は
事故の起きるリスクが高いのです。


私は慢性的な内臓疾患による内臓部の手術をしているビデオを
何例か見せていただいたことがあります。


少しでも内臓部分の理解を深めるために必要なことですから。


そのときに印象に残ったのが大網が複雑に臓器同士を癒着させ、
患部がある目的の手術をする部位までたどり着くのに、
どれだけ慎重かつ丁寧に時間をかけて臓器の癒着部を外していったことか。
大変な骨を折る仕事であることが、その映像を延々とみていて感じました。



つまり大網は便利な半面、
内臓のダメージがある人の場合は問題もおきます。


たとえばそれは子宮内膜症のようなときもあるでしょう。
子宮が大腸等に癒着しているようなときにもその部位が炎症を持ちますから。
このときはすでに大網のお世話になっていて、
修復痕跡が残っていることもあります。


それがわかっているので内臓を臀部含め脚部や腰背部のしこりを解かずに、
いきなりぐいぐい押してしまうのは、内臓を緩めるメリットもあるが
痛めてとんでもないことになるリスクが怖く感じます。


内臓をマッサージすることを勧める書籍について。
内臓を適量の力で圧迫してという表現では
一般の方には正確なことが伝わりません。


そこかしこで内臓の負担を強いているようなときは、
内臓の自由な動きを抑制するほどのものともなりかねません。
臓器に大網による病的癒着が生まれてしまうならば、
大網の縛りを緩めて内臓の動きを再生したいのところですが、
内臓部に付着している大網は神経やリンパ管や血管にも癒着しています。
内臓部にある修復未了の箇所の大網がはげてしまうのは致し方ないにせよ、
そちらの管関係の部分には破けるとか千切れるなどのトラブルは避けたい。


胃より下の開腹手術後には臓器に傷がつくため、
その臓器を守るために大網が患部を包み込み修復をしてくれます。
それがもし時間を過ぎて同じ臓器の場所を痛めるようなことがあれば
その部位にまた大網が降りてきてということになるようです。


すると数年経つと手術した跡の部分に問題の輪を広げることにもなります。
たまたま先日9年前に手術した知人がその部分が小腸と癒着して
大変な経験をなさった方がいてとおっしゃっておられる方がいて。
この大網の重なりも問題となることがあるようですから。


手術後の内臓を縫い合わされた部位の大網の跡は
必要最小限のものであったのです。
しっかりとレントゲンやCTなどの機器を利用して、患部を正確に把握。
余計な部分の開腹をすることもなく
患者の負担は少なくなるようにしています。
医療技術進歩はすばらしい。


それが手術後に再度、内臓部に負担を課するような生活を送るとしたら。
同位置の部位に負担を強いる体の状態や使い方をしているならば
また同じ位置に問題箇所が再発してきやすい。
それは同じ場所に再発しやすいことは、
知られていることと思います。


そのような再発は、
なぜ今の自身の患部の部分に問題が生じたかを突き詰めて考察し、
再発防止方法を具体的にとっておれば再発が防げたり、
再発リスクが少なくなったりするのではと思います。


もちろん多角的に把握していく必要があります。
例えば姿勢を調整していくというのは、
そのうちのたったひとつの側面を観察するのみです。
ですがもし知的好奇心が旺盛な方ならば、
「へぇ〜。そういう見方があるんだ〜」と興味を持てると思います。