『人間は動く建物』

操体法の本を読むと『人間は動く建物』と書いてあります。
実に含蓄に富んでいます。

建物には構造力学もとにした、
柱があります。
屋根があります。
土台があります。

それに準じた仕組みが人間の体にも備わっている。

もっと細分化してディテールをみていくと、
そっくりな部分が数え切れずにあるのです。


その仕組通りに体の各部が機能していれば素晴らしい。

体の各部が本来の設計通りになって利用されていれば、
強靭な体力と体の諸器官は高性能に機能してくれます。

体が丈夫な人は遺伝的に丈夫な体を受け継いだ人もありましょう。
そして自身の体を頭で考えずに肉体感覚でモニターすることができている。

それが理想かもしれません。

ただし私のような生来の体力がなくて運動が苦手だった人には、
自然にそのような状態が身につくことはなかったでしょう。
体の関節が硬いし少し歩けば腰が痛む。
心臓が激しく脈打って汗が滝のように流れ落ちる。
そのような条件であれば、
ごく自然に自身の体を頭で考えずに肉体感覚でモニターはできません。

施術でリリースされていくことで、
体力がある程度向上するところもあるでしょう。
それだけでは、
絶対に自分の内側に秘められた機能の歯車が回りだすことはないと思う。

ある程度、体の状態が上向いていったとするならば、
ぜひとも施術を受けるのと同時進行的に、
体の内側に秘められた設計図を覗いてみてください。

本日の施術で、お客様と話したのですが、
施術は補助的なものであると心得るべし。

施術とは自らを深く理解して行く過程で、
体の状態を一時的に自分の本来あるべき状態に他力で近づける行為。
そのような状態になることで肉体感覚がより鋭敏になり
体の設計図がより認識しやすくなっていくのです。

そのように後押しをするのが施術。

頭で考えずに肉体感覚で『人間は動く建物』だと、
自分の体の各部に意識を向けて実感する上で、
自己調整が自然に起きていくことが目標とすべし。

これはこれで容易なことではないかもしれません。
ですが有史以前から人間は医者や施術者がいない世界で生き残りつづけた。
生き残れる仕組みが確立していたからに相違ないのです。

生き残り続けられた遺伝子を私たちは、
自分の内側に備えているのです。

そういう実感が大切なんです。
その意識で。

野生の生命力。
そこに目覚めること。

大切だと思います。