筋パワーもいいけれど、腱パワーもすさまじい!

靱帯は、関節をまたいで骨を繋ぎ、関節がずれるのを防ぐ組織です。


腱は骨から筋肉に繋がり、関節を動かす役割を果たしているもの。


靭帯は、意識的に動かすのは筋肉につながりを持たないためできないようですが、
腱は筋肉につながっているため意図的に動かすことができるようになっています。


ただ筋肉についての知識は多く持っているのですが、
靭帯や腱の仕組み・機能について筋肉と同等レベルにまで認識していないことがあります。


筋肉の詳細が描かれた人体解剖図を参照する際に、
とっても重要極まりない靭帯や腱なども描かれる。


たとえば、靭帯や腱について観察したいのならば、
手元に『プロメテウス解剖学 コア アトラス』や『改訂版 クリニカルマッサージ』などの本があれば、
参照してください。


カラーイラストで赤い筋肉部と白い靭帯や腱との色の違いが一目瞭然です。
とてもわかりやすい。



新動きの解剖学』にも、詳しく靭帯や腱を書き添えられ解説されたイラストがありますね。
筋肉ばかりではなく、もっと広い視点で動きの起こりえる部位を研究し、解説してあります。


ただ『新動きの解剖学』では、白黒のイラストです。
筋肉と腱の色分けがされていません。
すでに筋腱などを熟知していないと、
腱部分が描かれているにも関わらず、
見た感じで筋肉とどういった区別をつけられない人もでてくるようです。




一般的には
筋肉の存在は大きいのに、靭帯や腱の存在は希薄だといえるでしょう。


機能解剖学的な見識を持たれておられなければ、
描いてあるはずの靭帯や腱をスルーしてしまう。
目には見えていても、重要性が認識できないものでしたら取り立てて注意を向けないものです。


しかしこのような見方はもったい見方なのです。




たとえば太極拳の教えならばどうでしょうか。


ちょっとしたイメージあそびですが
手のひらに生たまごを持つ感触をイメージして、
そのたまごの形状に沿わせるように手の内を作ります。
そうすることで集中力ある腕全体を創りあげてくれる。
手の内側は手掌腱膜で腱にてたまごの形状を作成し、
その状態を楽に維持できるように筋肉部分を過剰介在させないで済むように腱の部分を匠に使いこなす。


筋肉は、一定のテンションでずっとキープするのは難しい。
筋肉の長さは微調整してこの長さでキープしようと思うが、
筋肉は収縮させて筋パワーを取り出す仕組みであるため、
その筋に力を作動させれば、確実に筋収縮が起きている。
そうすると一定のテンションでキープすることは難しくなる。
そこに穴があくような操作がおきることもあるのですね。



それをうまく腱の部分を利用することで、
長さを一定状態にいくらでも長い時間に
維持し続けられるようすることもできる。
ちょっとしたマジックのような感じです。



どうやって腱が使えるかということは、
文章での説明は誤解をされて故障される危険もあるため解説は避けます。
バレエや太極拳など、すばらしい先生に習っておられる方々でしたら、
ぜひ実地で直伝していただくことをお勧めいたします。




そうした腱の作用を引き出すことで、
体を一定の姿勢を取らせることが省エネで楽にできるようになります。


だから疲れにくくなりますね。
スタミナも効率よくアップしているわけですし、
いつも以上に動くことが楽しくなってくることでしょう。




腱を利用した意識で運動できていれば、
たとえばフィギュアスケート浅田真央選手のように、
足の線が細いにもかかわらず爆発的な弾く力を発揮できる。


もしも彼女が、筋肉で三回転以上のジャンプをしていれば、
見る見る間に、筋肉は炎症を起こしパンプアップしていき
太くて今の状態とは比べられないような状態に陥るのです。


一般に筋肉で飛ぶ感覚とは違った仕組みを応用しているのでしょう。




たとえば足底腱膜を使いこなせないと足の甲を出すことができませんよね。
足の甲を出さねば、かかとで地面を押す感覚でポワントでは立てません。
そして足裏の足底腱膜を一定状態にキープし続けるのにも、
筋肉の作業を過剰に介在させるならば、
ぐらつきを作りだして弱い足になります。
なので足底腱膜等の腱をフル活用します。


ちなみに足底腱膜がどこからどこに起始と終点を持つかを理解できなければ、
足底腱膜の一部分にしか意識が行かないようになります。
『クリニカルマッサージ』のChapter10の下腿部、足部の治療法には
足底腱膜につながる筋肉部分が詳細に描かれています。
その状態のイメージを把握するのに役立つでしょう。




そして、腱を使うことの省エネの参考として。^-^
カンガルーのオスは一日に100kmも走るそうです。
100Kmですよ!すごい。。。。
それも繁殖期ではほぼ毎日、
長距離を走り続けているそうです。

走るといってもカンガルーの場合はジャンプして跳んで移動するわけです。
160cm程度のカンガルーでだいたい4メートルジャンブです。


4メートルジャンプを100kmも続けたらどうなるだろう?
ほとほと普通ならば疲れはてるはずですよね。
足の筋肉がパンパンに張ってしまう。
他の動物を観ても、こんなに長距離を高速で走り続ける動物は滅多にはいないのです。


そのようなスタミナの秘密は?


実はカンガルーは筋力でジャンプするのではなくて、
後ろ足にある長大な腱の力を最大限引き出している。


筋肉は使えば使うほど乳酸がたまり疲れますが、
腱のポーンと弾く力を取り出して、
それを主要な動力源とすれば疲労しづらいのです。


アキレス腱の特性をたくみに活かしている例です。


ある一定の速度で走ると、
脚部の筋力を発揮せずとも腱を梃子の原理で伸び縮みさせることができるのです。
それでカンガルー特有の高速かつ長時間で長距離のジャンプが可能になるのです。





このような作用を私達もカンガルーほどではないが、
しっかり利用できるような能力を備えているのです!




または、太極拳の100才を超えた老師が、
20代のシャキシャキした男性を
弾き飛ばすYoutubeの映像を見たことがあります。
老師の筋力は加齢とともに低下しているのです。
ですが老師は腱を骨と協調させて使う技を知る。




筋肉は衰えるのですが、
レーニングされた腱はなかなか衰えずにいる。
一生ものだと言っても良いかもしれませんから。


それを利用する方法を認識し、
腱のパワーを引き出せれば青年にだって余裕で勝てる。


それに日頃の仕事の作業を筋肉だよりから腱を利用し
てこの力をタイミングよく活用していく術を身につけ
相応の肉体労働にも体が負けないようにもできるので。


これは高齢化していく自分の体を、
いつまでも使いこなすための鍵になるものなのです。
そして健康なままでの長寿の秘訣なのかもしれません。





そしてマイヤ・プリセツカヤのように高齢になったダンサーでも、
息を呑むような仕草を私に魅せてくれてただものじゃないことが
深く印象に残させてくれることもあるのです。

アキレス腱などがうまく利用できる位置で立てるものは、
脊椎の椎間板の狭窄を避ける事ができます。
加齢には椎間板内の水分量が若いときの半減となります。
それがアキレス腱などの背面の腱(及び靭帯)で体を支えるシステムを利用出来れば、
背面の起立筋等の抗重力筋が弛緩しておけますから。
そうなると加齢となり身長が縮んでいくということも少なくなる。
筋肉で体のブレが強められるため、
その筋肉量が減少したのが幸いに、
立ち方の精度が飛躍するといえるほど腱の活用がなされていきます。



そしてこのような様子の体の使い方が、
若いうちからできるように技が極められていればどうでしょうか。


その姿は、私にはそれは瞬時に見分けがつきます。
それは私の体が腱を使えるものと共鳴をすることができるように、
腱を主体にして精密な動きをするよう日々の施術を心がけているからです。
これも私の施術が安定している秘密のひとつです。


筋肉を主体にして動くと、
筋肉は収縮し伸長するため圧をかけようとする狙い目にブレを呼びますし、
一定のウエイトを意図的にかけ続けてキープするようなことはできません。



それが腱を利用して動くと、
関節を挟んだ腱の長さを一定にして寸分たがわぬ精密さで固定出来ます。
それには体の骨をどこに置くかの位置が決め手になりフォームを正して、
あとは多方向のベクトルを生み出してウエイトシフトを使いこなします。
ベクトルの合力による和のようなものを利用。


これは腱を利用する意識やテクニックなしに、
現状の私の施術方法はかなえられません。




外見上はあまり見えない部分。
皮膚の下で行なう操作ですね。
こういったものは、大事です。




達者に腱を凛々しく使う使い手さん。
そんなような操作で動ける人が、目の前にいる。
そうなると「この人、できるぞ!」とうれしくなりますね。
顔が、ニンマリしてしまいます。