背中側を活かすことが理想状態で立つ要素のひとつ

ずーっと以前に、同種の内容を書かせていただいたことがあるのですが、
文章だけで述べてあっただけかもしれませんので、
イラストを入れてみました。


背中側を活かして立たねばならない!!.jpg


胴体をおへその高さで輪切りにすると、
腹部側は内臓ととても体を支えるための部材には成り得ない筋肉群。


背中側が脊柱という骨の柱と、それを四方から支える大腰筋と起立筋。
体を重力に対して自由に支えるヂカラを得るには、
背中側「脊柱と大腰筋&起立筋」が精力的に活躍せざるを得ない。
背中側の支え部位を植物的に体を支え続けようとする幹に例える。


この幹の下方の根が勢いよく地面に潜り込み、
幹になる脊柱が緊張せず伸びやかに上方へ効率よく伸び上がる。
それがとてもしなやかで周りの圧からの負担を軽減させますし、
立位の安定感を増すことになる。


ただ伸びやかに上方へという流れを勘違いして、
上に頭を単純に引き上げようとしていたのでは、
地面の根付きが台無しになるから工夫が必要。


ここではちょっとコツが必要になってくる。


十分に脊柱の並びのなかで軸を中に取りつつ、
起立筋や大腰筋で十分な筋肉の始動が必須だ。


疲れてしまっていたり背中の張りがある人は、
起立筋や大腰筋が硬化萎縮したり肥大したりしつつ、
左右の状態が変わってしまっていて均一ではない。
なかには大腰筋が使われず萎縮して量がなくなり
脊柱を支えるための部材としては活躍できません。


背中に勢いを持たせ、お腹側を虚に緩めるという『姿勢』のコツを誤解すると、
徐々に体全体の統一性を見失います。


そのようなときは腹部側の腹直筋や腹横筋等の、
腹式呼吸をする際に、柔軟性が必要不可欠な部分を異常な硬化を強いさせて、
ここで支えようとする習慣が付いているケースが多いように見受けられます。


それはすでに先に述べたような、
起立筋や大腰筋、それら背中側の筋肉群の理想状態から離れただけではなく、
腹部側の呼吸筋を硬化させて腹式呼吸不能にさせる筋肉の使い方によって、
本人が気づかないうちに下丹田部分に意識的に重心を維持できない。


この状態で、身体操作をするのが慣れすぎているのならば、
そこから自らの力だけで理想状態へと引き返せることは困難なことが多い。


それは、、、
重力線にそぐわない立ち方をしていることが、
理想的な姿勢で暮らせている人の、
幾倍もの負担を自らに強いていることに気づかずにやり過ごしているからでしょう。
理想的な姿勢で暮らせている人が、
幾倍もの楽な状態で日々を送る事実に
実感が持てないからかもしれません。


背中が張って不快だと思えたとしても、
その不快さを齎す源がわからなければ、
局所的な問題としてしか発想しづらい。
「先生、腰がいたいから、痛いところを緩めて!」
というのが真っ先に起きることでしょう。
危機回避のため逃避行動を誘発する感情。
不安感から痛みの部分だけが見えてくる。


その気持は、よ〜くわかります。
私も、腰が痛くなったら、
真っ先にそこに意識がいきます。


ただそれではいつまでも、
その苦痛からは逃れられません。


その解決の一つの糸口が、
「私は、脊椎や起立筋や大腰筋が活かしきれていますか?」
という自問自答からはじめていくことも大事でしょう。


実際は起立筋や大腰筋の筋肉を感知できる人は少数で、
容易にその活かせているかどうかわからない人が多い。
ですが問題の起こりの源を把握してから、
健康知識を獲得し、身体への気づきを得たほうがいい。



私の場合は、
背中の使い方の未熟な点をチェックして改良しようとします。
これがなければ、
痛みや不快感という動きの改善方法を教えてくれている指導教官からの言葉を、
なんら耳を傾けることないこととなるでしょう。
そこから気づきをえなければ大損しています。


そして起立筋や大腰筋をどうやれば活性化していけるか実験。
筋肉の使い方を精査しつつコンディションを改善するのです。
このコンディションの改善には、
起立筋や大腰筋の左右差を消す意味もあります。
左右の筋肉の硬化度やしこりの出来具合に太さなどでしょう。
弱く細っているならば、日々のトレーニングが欠かせません。


私の場合ですが、そのコンディションのチェックには、
脊柱の立ち方を、最初自分の感覚器官からの情報は無視して、
ひたすら客観的に状態を観察し続けて見つめつつ、
全体像のアウトラインが固まってから、
身体の内部に意識を潜り込ませ内部感覚的に不具合を見つけて修正をかけていきます。


これはおそらく、
相応の柔軟な筋肉を備え、運動神経系や他感覚神経を動員できることや、
自分の身体像を内観できるようなことがそろわなければ難しいことかもしれません。


すでに相当な身体の硬化が先んじておられる方の場合は、
あまり参考にならないかもしれません。
それにすでに身体的な柔軟性があったとしても、
容易にやってのけることは難しいことでしょう。


本当は、速攻で役に立つんですよといいたいのですが、
浅薄な、スキルではないのが立ち姿の理想形ですから。


いずれ背中側を活かして使えるコンディションになった時、
記憶の隅から思い出していただけまいたら幸いです。





追伸:

先ほど施術をお受けいただきましたお客様。


かつて腰部の不安定さは大変なものでした。
ただそれも収束してきていったところです。


そのようなおり、腰部の痛みがきたという。


どのような状況か説明させていただきます。


身体的には以前のひどい硬化は減少しているが、
あまりにも起立筋ばかりに頼って、頼りきって、
数十年間ずっと生活をしてこられました。


本来は大腰筋と起立筋で脊柱を立てる仕組みだとは上方で説明したとおり。


ただなかなか本人的には大腰筋の利用がなされているかどうかについて、
以前の状態の悪化が並みの状態を逸脱していましたから理解が難しくて。


バレエのプリエをゆっくりとなさるようなエクササイズを伝えてみたり、
さまざまなアドバイスをしていく。


無意識的に大腰筋を使わず怠けさせて起立筋ばかりに仕事をさせているので、
その仕組を伝えていったとしても、
すでに大腰筋を利用できる身体的回復がなされているにも関わらず、
腑に落ちない。


これは言っておかなければなりませんが、
こちらのお客様に限ってのことではありません。


自己を客観的に観察する力を平素から養う人は、
なかなかいないものです。
私も、施術業をしていなければ、
今ほどはものが見れていなかったはずですから。



それは自分で内発的に生じた疑問を持ったときに、
誰かがそのヒントになるアドバイスをもらった時と、
自分では不都合なことをしているつもりがないのだが、いつも同じことを言い続けてるような・・・
と他人が本人がぜひに聞かせてほしいというような内容ではないことについて、
真剣な顔で繰り返し同じことを手を変え品を変えて言われてしまっているのと。



まったく反応が異なってくる。



ただここで言っておかなければならないことは、
内発的に自分の身体操作について深く理解している人は、少数派に当たるのだと思います。
自分自身の状態を、冷徹なまでに観察をして、
不具合部分を十分に把握しておられます。
このような方々は身体の改善がスムースです。
ときとして奇跡の人のような変化を産む人です。
一気にすべてがわかるというものではありませんが、
着々と前進を続けて後退がありません。


多くの一般的な場合は、
そこまでの観察力は育っていないことが多いものです。
自分では理想に近い状態で体を操作しているはずだという肯定的な思いがあり、
その信念を他人が揺るがすことが、如何に難しいことか。
そうであることを感じ入るトレーナーやインストラクターさんたちは多いでしょう。


私は、前者のような優れた観察力を備えた人々は尊敬に値すると思います。
後者のような場合は、とにかく少しずつでも自分の体への観察眼を育てることから。
そこから、始められるといいでしょう。



ちなみに本日のお客様は、
アウターマッスルなどは、かなりしっかり解き進められていて、
筋肉の全体の状態が改善しているにもかかわらず、
大腰筋の使わなすぎ、起立筋の使いすぎ。
そこに気付かず手を加える意識がなければ、
この先も、体が柔らかくなったのにもかかわらず、
ずっとずっと腰痛で苦しまれることになるでしょう。


本日は、太極拳で胆力をつけるためにトレーニングのひとつとして用いられる馬歩立ちをお伝えしました。


また正しい立位状態を、お客様が自分の携帯電話のカメラで写真を残したいとおっしゃられましたので撮影。
そのときご自身では、状態を例えようもなく反らして立っている変な格好に私によってされていると思いきや、、、
普通の、、というか立派な勢いのある立方になっていたので驚かれていました。
それほどへんてこな姿勢をとらせるようなことを指導しているわけではなくて、
意外に真面目な指導をしていたのねと、ちょっとでも伝われば嬉しい限りです。


確かに、自分の目で観るにはカメラで撮影されたものをみるのがわかりやすい。
そう思います。


自身の感覚は、体に癖があるならば、大方が間違って感知してしまうものです。
だから上級者には自分の感覚を頼りにというところで押していくのもいいが、
体に現在進行形で不安があったり不調があったならば、
または正確な自己観察をしていきたい人ならば、
誰かに写真を撮っていただければ、
自分の姿勢の良し悪しがわかりやすくなります。



それに大腰筋を、私がお伝えしていったことを参考にして捉えていたあければ、
少しずつしっかりした筋パワーが発揮できるようになっていきますから。
そうなれば疲れにくくなるし、内臓の活躍も活発化するし、呼吸も楽に。
筋肉を整えるということには、硬いものを解くばかりではなく、
使われずに弱化した筋肉を適量使うようにして成長させること。
そのようなことがセットになるとき、
体の不安が体の希望に変わると思う。


まさにこの方は筋肉を解くだけでは、
対処が十分ではない。
筋肉を解かれるだけでは、施術から離れられない。
施術でリリースが深まれば、前進していくものの、
今ひとつ、自分で自分の体を把握しきれない不安。


そこから抜け出すときが、来て欲しいですよね。



ここはひとつ、石にかじりついてでも大腰筋を少しずつ改善なさっていかれて、
腰痛の不安のない生活を送れますように、期待しています!