施術での手の使い方のポイントをいくつか


本日は新たに施術を生業としようとなさる方へ、
マッサージをする際の「手の使い方」についてお話をさせていただきました。


一般的なマッサージ関係の書籍では、
体全体の使い方を含めた手の使い方はざっくりとした内容しか描かれていないものが多いと思います。
個人的には、それでは長時間に渡りマッサージをし続ける人の体調管理は難しいと思えてなりません。


施術をするものは体を壊すことが多いのですが、
手の使い方の研究を深めることで、
一部対処できるところもあります。




大事な視点として。


手の使い方を巨視的に観れば、
「施術者の骨組み」が安定した状態を作り出していることが求められています。


・重心の位置を正すには、踵重心の意識が必須。


・構造体として、場合により両足や両手が安定ポジションの二等辺三角形を描き出しているか?
 (膝や肘の関節の向きは、理想の位置に設置できているか?)


・伸筋を活かしたストロークができているかどうか?


のようなことを、思いつくまま話をさせていただきました。


以下に、話をさせていただきました点を補足しつつ、
書いていこうと思います。



・重心の位置を正すには、踵(かかと)重心の意識が必須。
では、つま先に圧をかけた瞬間、
そのものの腹部は硬化して呼吸ができなくなります。
それは脛骨が床を押す方向性を見失い地面に設置する感触を手放したとき起こります。
踵で床を押す意識を、たとえ踵が空中に浮いた立膝で爪先立ちをしているときも保持。
それが基本です。


それが余裕でこなせるようになってくると、
腓骨側を足首から膝の方へと持ち上げる力のベクトルを描き出していきます。
すると踵を中心に設置した感覚で軽々と踵(きびす)を返す操作ができだす。



・構造体として、場合により両足や両手が安定ポジションの二等辺三角形を描き出しているか?
 (膝や肘の関節の向きは、理想の位置に設置できているか?)


上記の両手足で二等辺三角形を描くイメージは、
肘や膝の関節の向きが理想形であれば自然にそのようになります。
これがなされなければ、
施術者が圧をかけるときにまずいことが起こります。
それは施術者が『筋力』でグイグイだったりゴリゴリだったりと、
不快感が生じてしまうような圧をかけてしまうのです。
常に圧をかける方向は皮膚から最短距離にある骨へと垂直方向へ。
これが基本中の基本です。
もちろんこの基本を破ることも必要な場合はありますが、
十分に常に骨に向かって圧を垂直にかけられるようになってから。
それから変法として圧のバリエーションを増やすときのお話です。



『筋力』での圧をかけていては、
一定の圧を維持し続けてマッサージのストロークできない。
施術者は、『筋力』でグイグイ押しこむ圧をかけてはいないならば。。。


それではどのような圧を創りだしているのだろうか?


それは施術者は、施術者自身の体の重さを重りとして使っている。
施術者の体は床やマッサージベッド上に横たわる。
そこよりも高い位置に施術者がいます。
だったら落下する際に発生している位置エネルギーが高いのです。


その施術者の体重という質量を使い、
自由落下という位置エネルギーの解放をするのですね。


すると
エネルギー=質量☓速度の二乗(E=mc2)
と計算式がでていますから。


施術者の体重は変わりませんが、
どのような部位を乗せるかのイメージで質量を変えられます。
腕を乗せるか、腕と肩を乗せるか、腕と肩と頭を乗せるか、
上半身を乗せるか、胴体以上すべてを乗せるか、
下半身を含めて全身を乗せるか。
それぞれの乗せるモノの意識により質量の数値を可変できます。
圧をかける際のニーズに最適な圧を計算して割り出すと、いい。


つまり自分の体を意識ある肉体から質量を持つ物としての見方に改めるセンスが必要になる。


例えば
柔らかい腕をマッサージしようとするならば、
施術者の腕と肩の重さを乗せるイメージでいいでしょう。
硬化が著しい臀部筋を弛めたいときには、
施術者の頭や腕等を含む胴体以上の質量を乗せる必要がでてきます。
それらを施術者はボディコントロールをしながら、
コンタクトしていくわけです。


質量を乗せたときの押し込み具合で、
筋膜の浅い層を捉えるのか深い層を捉えるのかが決まってきます。
そしてたいていは浅い層を捉えたならば、
その浅い層にそってマッサージ圧を維持して、
ロングストロークショートストロークを施します。



ワンストロークのなかで、
あまり浅い層から深い層へ、深い層から浅い層へと、
うねりながらのようなストロークはすることはない。
それは受けてみればわかりますが、
やられるととても気持ちが落ち着かないものです。
雑な扱いを受けているような気になってきますし。


芸術的なまでの一定の圧を創りだされているほど、
マッサージを受ける者はリラックスすることができます。
そして筋肉が緩むリリース効果も高くなるのです。


それをかなえるのが、
施術者が自分の骨組みを安定させていくようなポジショニングを得られるような習慣をつけること。


体全身の骨格に関わることでもありますが、
特に肘や膝の意識をキーとして考えてみてもいいでしょう。
肘や膝のコントロールする計算が機能面に則していなければ、
その時点で施術をするものの体にかかる負担が著しくなってしまいます。


自身の身の起き方を俯瞰から眺める気持ちで見て創りだすようにすれば、
そこに美しい『型』を見出すことができるようになるでしょう。
そうなればしめたものです!


私もかつてはここでの計算が不十分でした。
それで呼吸器やら頸部の詰まりや腰痛等に悩まされた一人です。


そして接触している面に対し、
どのような速度で圧をかけるかですが、


・伸筋を活かしたストロークができているかどうか?


たとえばハンドマッサージをするときに、
手の伸筋を活かしたストロークができる。
そこにどのようなメリットがあるのだろうか?


指先までの伸筋を意識を入れておくことで、
明らかに指の腹側の接触している部位の感度が上がるのです。
手のひらの鋭敏さがあるからこそ、
お客様の体の凹凸を鋭敏かつ瞬時に感知することができます。


手の伸筋を使えるようになると「肩甲骨の動き」が出てきます。
肩甲骨がローテートする分だけ手が肩から伸びやかに伸び出します。
それも体の重心がかかと側を押す状態が保てたままの
丹田に重心キープ状態でかなえられるのです。


するとアバウトに言えば脊椎を中心軸に据えて、
回転することで手が遠位まで伸び縮みできます。


押す操作を意識すると、
人体は自らの重心が押した方向へと傾斜して崩れる事になるため、
持って行かれた姿勢の崩れた状態になってしまいます。


それを避けるために肩甲骨を背面方向へ引く動作をすることで、
脊椎を中心にして回転させることで引いた動作の反対側の手が前に繰り出されて押す結果を得られる。
そのようなことができるのも手の(手の指)伸筋を伸張させるからです。


余談ですが、
手の屈筋を使ったストロークでも受けてみて気分の悪いものではありませんし、
気を出すことができるようなタイプの施術者からは十分に気がでているように感じられます。
ですが屈筋が主体になった動きで気が放出されているときには、
しばらくすれば施術者の内部の気が枯渇してくる実感が生じる。
決まって体調不良や極度の疲労感がぶり返してくることがある。
それが伸筋を活かして気が出ているように感じる手を創ったときは、
施術者の内部的な気は一定に保たれたまま維持できている感じになりやすいのです。


それは主観でそう感じるということなのですが、
その裏側では、屈筋主体で動いている重心が不安定な状態を強いているから、
それで疲れたから気が枯渇したように感じるほどの疲労倦怠感が襲ってきた。
そのように考えられる割合もかなり高いのだといえるでしょう。


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以上、3つ程度に要点を押さえました。



手を使って圧をかける要点は他にもあります。
ただし欲張りすぎると未消化な知識ばかりで、
混乱して使いものにならなくては困ります。



数少ないノウハウを概念的に理解してから、
実際にパブロフの犬のように条件反射的にそのように動けるよう、
身につけることができるまで研究を深めつつ、
意図的な反復練習をしていくことが大事です。


少ない知識でもそれを大事にして繰り返すなら。
磨き上げて身につけられれば強力な武器になります。


最初に少しでも知識として得ておいて、
体を使いこなしていく際の工具として
後々に動きのヒントにしていただければ幸いです。