施術中は放鬆 (ふぁー・そん)と戦闘モードの合致した状態

気功をするときも、
太極拳を練習するときも、
大事な注意事項があります。


放鬆 (読み方:fàngsōng:=ふぁー・そん)』することです。
簡体字として「放松」と表記することもあります。


意味は「緩める(ゆるめる)」「リラックスする」ということ。
身体を緩めるということでも、
心をリラックスさせるということにも使います。




放鬆で緩める動作の要点や機能性を、散文的に述べれば。



体の骨格構造体を理想位置に保持します。
それができたのならば、
力を抜いて体の各部を重みにまかせます。
重さに任せきった動きは、
どんなに気持ちがいいか。
実感したものでないとわかりません。


呼吸を整えて、体の関節を逐一緊張から解放させる。


肩の力を抜き、腰の動きに調和させる動きです。
腰が動けば肩も動き、腰が動かなければ肩も動きません。
腰が動かず肩だけ動くということはありません。
腰、股関節、膝、肩、肘が一緒になって、
変化しながら動作をします。


百会と会陰を結ぶラインを感じ取ります。
立位では、かかとに7割、つま先に3割。
その割合で重さのかかり具合を設置しましょう。




そして私が施術をするとき。
積極的にリラックスした放鬆状態を求め、心がけています。
ただやってみると、思った以上に難しい。



放鬆状態に身を置く場合、
放鬆となった手でお客様に触れているだけ。
それだけで、
お客様の身体が緩んでくることがあります。
なんらかの力(気功等をなさる方は「気」というかもしれませんね)が出てくるかのようです。


気が出ているかどうかはさておいて。




施術者が、放鬆した状態で施術をしているかどうかが、
施術成功の鍵になることもあるといえるでしょう。


私が他の施術者の方が施術をしているところを後ろから見学させていただくと、
十分に放鬆状態で作業をなさっておられるのか、
緊張して動きが硬い状態でしているのかは気になります。


放鬆が心がけられていない方は、
多くの場合、施術を続けていくことで、
後々に体に不調を背負う方が出てきます。


ただ放鬆している状態で、
太極拳では戦うのです。
外面には敵に対峙して戦闘モードを見せないかもしれません。


そのような無念無想の様子がいいとされるかもしれませんが、
人気店のレストランの戦場のような活気ある厨房でいい仕事をするものたちは、
自分の仕事に集中しつつ、ときには大声で後輩をしごくような怒号が飛ばして、
時間に追われていてもベストな料理を出そうとしています。
殺気立った雰囲気があるなかでも放鬆している状態。
それが保たれていなければいい仕事ができません。
そのようなレストランの裏方シーンを、
映像で観たことがあります。



つまりある一定以上のテンションを上げた状態で、
創造的な料理という作品に絵を描く繊細な仕事を
雑にならず丁寧迅速にすることができること。


そのような気働きができるのも、
緊張して浮足立つ心境ではできません。
放鬆している状態に心身ともに至り、
その上で活況した戦闘モードになって動き出している。


厨房が戦場。



そのような気持ちと、
私自身の施術をするときの感覚は似ています。


放鬆している状態に心身ともに至り、
その上で活況した戦闘モードで闘いぬきます。
そこに意識が乗ってキープできたときは、
4時間が2〜3分にしか感じられません。


戦闘モードを支える武器となるものは、
戦に負けるようなやわなものは使えず、
工夫を凝らして磨きをかけ続けます。


私の仕事は誰かに後見人等がいてダメ出しをされるわけではないのです。
そして戦闘モードに入らなくても、
そこそこ経験値がありますから、
お客様を納得していただけるような施術を提供できカバーできるでしょう。
そのようにさせていただく自信はあります。


ただ、気持ちが安易に流されやすいほうへと向かえば、
そこで成長曲線は途切れることになるでしょう。
人は成長に気持ちを良くするものです。


戦闘能力を上げるためにはということで、
常に臨機応変に対応できるように考えて、
本質を少しでも見極めようとしていく。


患部の本体のしっぽを握るのは難しいのですが、
戦闘モードで問題と正面切って向き合うときに、
いい仕事を残す目的が達成されるのでしょう。
つまり、その時点での私のベストを少し上回る。
そんなパフォーマンスを続けられるのも、
放鬆と戦闘モードの合致した状態だから。


ただ、やってみればわかりますが、
心身ともにゆるませながら戦闘モードを貫くって。
至難の業だと思います。
私も、甘いところがあるので、
そういったところが成長の伸びしろがいっぱいあるというところでしょう。



余談ですが、
私が施術で圧をかけるとき工夫していることがあります。


圧を、何段階かに分けるということです。


たとえば、
施術に慣れていない場合には、
圧をかけるにも直線的に一打を放つようにする。
その一本調子となりがちです。


ですが慣れてきて研究が進むに連れ、
最初にソフトな圧をかけるように心がけて、
徐々にぐいぐいぐぃっという感じで奥に入るようにする。


二段階に圧を分けるメリットは、
ソフトに圧をかけた瞬間、
どのようにその直下の筋膜が癒着しているかを察知して、
それを実質、理解してそちらのリリースに最適な方向や圧の質等を計算し、
最適化した状態の二段階目の圧を加えるのです。
よーく吟味してから次の手が出せているので、
自信をもって圧の上限を狙えるようになります。


するとずり圧の効果が高まるだけでなく、
安全性も飛躍的に伸びるように感じます。



多くの場合、最初にソフトに圧をかけられているために、
いきなり強い厳しい圧をかけられてしまう恐怖感を低減。


それから圧をかけた手を接触したまま第二弾の圧をかける。


そのような「トン・ドーン」のような二拍で圧を繰り出す。



実際に実地で手とり足取りしてでなければ伝わりづらいかと思いますが、
二拍で圧をかけることを覚えられたとき、
一拍で、一気にドーンと強い力をかけようとするから力みがでるのだと、
気づきを得る方も出てくれるかもしれない。
一気にいこうとすると、相手に触れた瞬間、
押し負けないように頑張ろうとして力むんです。


そこで頑張る気持ちが緊張を呼び負けているんです。


そんなところも圧の良し悪しを左右させるような興味深い研究点ですよね。