血圧計でわかる『脈圧』と、中医学が指す『脈圧』の違いとは?

■ 血圧計で、血圧を測ったことはありますか?

血圧の上下と脈拍数が表示されます。
上の血圧は「収縮期血圧」といい、心臓が収縮したときの血圧です。
下の血圧は「拡張期血圧」といい、心臓が拡張したときの血圧です。

心臓が拡張収縮することで、血液を全身へ送っているのです。

血圧の正常値は、一般的に最高血圧が140mmHg以下、最低血圧が90mmHg以下とされます。
それ以外の数値は「低血圧」と「高血圧」といいます。
正常血圧と高血圧の間を「境界域高血圧」と分けられます。

 

血圧の上下の差のことを「脈圧」といいます。
脈圧から血管の状態を知ることができます。

適正な脈圧の差は40~50mmHgです。
血圧上下の差が大きいということは、
血圧の上下のうちどちらか、もしくはその両方が平常時とは違う働きをしている可能性があります。


これが一般的に言われている『脈圧』です。

 

血圧計で脈圧チェックすると脈管の状態がわかる.jpg

 

血圧計で、先ほど私の血圧を計測してみました。
ちょっと体がだるいから異常かもとおそるおそる計測しましたが、

上が 126 で、下が 77 でした。

すると「脈圧」は 126-77 = 49 になります。

なので40~50mmHgの間に収まっています。

ほっとしました。 


ここまでが西洋医の言う指標としての脈圧です。


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中医学にも脈診に『脈圧』があります。
ただ西洋医の『脈圧』とは概念上の違いがあります。

 

 

脈を診るときに、
橈骨動脈のなかを流れる血管内の正気をチェックします。
(※ 正気=天地人に存在する正しい気。 「邪気」と対になることも)

指先の感覚のみに頼るしかない数値にはあらわれない橈骨動脈内部の現状を見ていくのです。

 

脈の位置.jpg


橈骨動脈の脈管に触れ、脈を診るときに指先につたえられる情報のひとつとして、

・【平脈】 脈管が硬すぎず、さりとて軟らかすぎない状態
・【実脈】 正気が過剰にあるため脈管がパンパン
・【虚脈】 正気が虚損( 気力や体力がだんだんと弱くなっていくこと。活力がなくなっていること)しており血管がスカスカ

の3つのうち、
どれに当てはまるかを読み取ります。


中医学脈圧.png

【平脈】と呼ばれる適度な硬さと軟らかさの『バランスがとれた状態』が理想です。

バランスの取れた感覚という状態を、
言葉で伝えることが難しいものです。

脈診講座に通う前の私は、3冊ほど脈診の本を買いあさってみましたが、
結果、指先で感じるバランスと乗れた感覚という状態を感じているのかどうか。
そこまでは本に掲載してある比喩表現等で読み取ろうとしてもわかりませんでした。

ですから、硬軟の基準を知るには実際に脈診ができる人に手ほどきを受けて、
「この状態は、平脈だよ」とか
「これは正気が弱って気血が足らないから、虚脈だね」など、
実地で事例を具体的に触りながら理解するしかないと感じました。

 


たとえば、
ちょっと触っただけでは「実脈」のような脈管の太さを感じられても、
脈管を押し込んだら血管の内部が血や津液が足らず「スカスカ」で「実脈とは言えない」こともあります。


この場合は私でも、どうにか触ればわかりますが。。。
さらに見分ける難易度の高いものも多数、あります。。

 

 


脈の断面が太ければ『大脈』とされますが、そこから細分化して識別するのは難易度が高いです。
・正気が充実
・熱が過剰(実熱)(洪脈)
・気が不足して(気虚・気脱)脈が一定の太さに収められないためにか膨張する脈もある(孔脈・散脈)←スカスカは駄目なんだね!


脈の断面が細ければ『細脈』とされ、そこから細分化して識別するのは難易度が高いです。
・血が不足している(血虚
・血も気も不足している(気血両虚)
・湿が多く(湿滞)血液量が圧迫されて減っている脈(濡脈)


などと脈診で脈に触れても、
これはどのような脈と分類されればよいか、
脈を診てもわからないことも多々あります。

脈診力の優れた一部の先生は判別できるのかもしれませんが、たいていは至難の業。

だから問診、舌診、腹診、その他いくつもの診断基準となるものを中医学では用意してあり、
同時に他の診断法で診ていくことで、
「この脈は、~脈だ」とわかることがあります。
他の診断法が補完があって脈診結果が導き出せることも多いのです。

 



もうちょっとだけざっくりとした簡易な診方をするとなれば、、、。

たとえば、脈拍を脈診で感じ取り、
その陰陽の特徴を読むだけでもいいでしょう。

陰陽の陰:一般に引っ込む感じのもの、ひっそりしたもの、遅いもの
陰陽の陽:一般に押し出る感じのもの、動くもの、速いもの

のような印象に分かれます。


まずは自分の脈を取りながら、
自分の脈拍から「陰か、陽か。またはちょうどいいか」を感じ取りましょう。

脈拍が、90回以上の場合、数脈(さくみゃく)といい、陰陽のうちの陽です。
脈拍が、50回以下の場合、遅脈(ちみゃく)といい、陰陽のうちの陰です。

それは時計を見ながら脈拍数を計測すればわかります。

ですが他は、触った際の感触が頼りです。
脈拍を診るときに脈を触った瞬間に引っ込んだ感じか押し出される感じか、
またはひっそりと動きの少なさを感じるか行動的に動くものか。

それらは「ファーストコンタクト」で、慣れれば感知できてきます。
おそらくは数名の脈診の先生がいたら、同じ結果を告げるでしょう。


ただこのような場面でも脈診講座の先生の手ほどきがなければ私にはその基準が立たずに、
いつまでたっても診断と呼べるような使い勝手の良さは感じられませんでした。

だから目の前に、中国に本場中医学を学ぶために留学された先生がおられて、
その手つきやしぐさを見せていただき、
私たち受講生の脈診結果の正誤をつたえていただくトレーニングを受けさせていただけたのは貴重な体験でした。


おかげさまで、
陰陽という「ネガティブな」とか「ポジティブな」という印象が触れてすぐ見えてきます。


人間の手先の感覚は、鋭敏な検査器具以上の働きをすると工場の熟練工の様子を見ると疑うことはありません。

元来、人間には鋭敏に状態を感じ分ける力が備わっており、
必要に応じてそれが発揮されるということなのでしょう。

 


脈診も、それと違いません。

 


  私は過半数を受講後、仕事の都合により中途で講座を辞めております。後日、機会を見て再受講する予定です。
  脈診講座は、中医学をすでに学んだ方々の受講がほとんどで、正直に言うと私には追い付いていくのがやっとです。
  丁寧な講習ですがレベルが徐々に格段に上がっていく感じで、難易度は、かなり高いと思います。
  中医学の基本全般が理解がなければちんぷんかんぷんで、絶望的。歯ごたえがありすぎです。

  でも、少しずつでもわかりだすと、人体の見え方や見える視野が変わるというのは本当です。
  わかりだすまで、愚直な勉強を頑張れる人じゃないと。
  中医学は身にならないと、痛感しました。
  恥ずかしながら、私は、いまだに身になるには至っておりません。

  ですがこれからも、また時間を見つけて中医学の基礎を学ぶ勉強をし続けます。

 

  脈診を専門的に学んで、施術に活かすというまではしなくてもよい方の場合は、
  ここまで細部にこだわらず、日々、自分の脈を診る習慣をもっていただくのが何よりです。

  たとえば、

  ・脈が浮いてるか沈んでるか、

  ・脈管の形状が硬軟いずれにあるか、

  ・脈拍のテンポはどうか、

  ・脈の強弱はどうか。

  この4つを注視して微差を読み取れるようになるだけで、
  中医学的な視野に立った身体内部の内科的な情報をキャッチできるでしょう。

  日頃のセルフチェックの一助となります。
  そして私どもに、いつもの脈状が変化した要項をお伝えいただければ、
  体の中でどのようなことが進んでいるかを理解する助けになります。
  するとケアするべき場所の焦点を絞ることができて施術の精度もあがります。


  なので脈を診て4つの状態を感じ分けられるようなトレーニングコース。
  これはまじめにできないものかと、考えているところです。