『脈診講座』脈が浮いた感じの高いときと沈んだ時と、どちらが邪気がカラダの芯まで入った状態なの?

 

施術を受けに来てくれたことがきっかけで、
数カ月に一度、情報交換で互いの近況を外食しつつ話をする方がおります。

いま、カウンセリング技法を習っていて、
その体験をしてみないか?との申し出があり受けました。

数日後に、お会いすることになったのですが、
その際に、カウンセリングの返礼ではありませんが、
私からはカンタンな脈診をレクチャーしようと思いまして。


脈診講座時のノートを見返しているところです。


という話の流れから、
最近はブログ内容を脈診にしているわけです。

本日は『脈位』という、手の橈骨動脈が浮いてるか沈んでるかのお話です。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

脈診講座入門編2.png

 

脈を診る基準のひとつに『脈位』があります。

『脈位』とは?

 

橈骨動脈の深さ>のことです。


脈診部分の皮膚から骨まで.png

薄い皮膚から、脂肪層、筋膜層、橈骨動脈という多層化したそれぞれの部位があります。

 

脈診のとき。

軽く「皮膚のみに触れて」ずらしてみる。
「脂肪層まで至る程度」軽く按じて触れてみる。
さらに深い位置にある「筋膜層まで至る程度」軽く按じて触れてみる。
そしてついに目的の「橈骨動脈」に届くよう按じて触れます。

 

皮膚のみをずらす、
皮膚と脂肪層をひとまとめにしてずらす、
皮膚と脂肪層と筋膜層をひとまとめにしてずらす、
皮膚と脂肪層と筋膜層と橈骨動脈をとらえてひとまとめにしてずらす。

のです。

 


「脈に触れる」とは、多層な組織をはさんでおこなう認識の下でありたい。

脈診前に多層化した皮膚等に触れた部位に意識を通して感覚を鋭敏化させます。


一般的に、いきなり橈骨動脈を触る感覚でとらえるよう指示しますが、
脈診をすぐれてなさる先生方は、
多層状の皮膚・脂肪・筋膜などの層の相を識別なさっておられるようです。
皮膚・脂肪・筋膜の状態からも、

貴重な健康状態のチェックがなされているようだと感じました。

脈診するために触れたとき、
たとえば、
「皮膚が委縮して、乾燥しているな」
「脂肪層が厚みが増したな」
「筋膜層が緊張して、動けず縛りがきつくなっているな」
その他、、、などです。

それらの気づきも、一見些細なことで、脈診に関係ないことかもしれません。
ですが鍼灸師の先生方は、それらについても識別なさっておられるようです。

 

 

まだ脈診とはなんぞや?と、概要もわからないとき。
そんな最初の段階で、解剖学的な詳細を知ることが学び進める前の障壁になりそうですが、
これを知らずに脈だけを診るのと、これを知って脈を診るのでは、
脈位が浮くよう高まる部分を構成する組織がなんであるかと
脈位が沈むよう沈み込ませる部分を構成する組織がなんであるかの把握にもかかわるでしょう。


指先の鍛え方としては、
ティッシュペーパーを、4枚重ね。
指先で、一番上のペーパーのみをずらす、二番目も含めてずらす、三番目も含めてずらす。
というように力加減を変化させて力を与えることで、
ティッシュの枚数を意図的にずらせるようにします。

これができるようになると、
脈診をするときに役立ちます。
指先を皮膚にだけ影響するよう軽く乗せて、
皮膚をずらします。
ずらしていくと、もうこれ以上はずらせないという制限があらわれます。
それを皮膚をたわませた状態を認識してから脈を診ると、
とても脈の見え方がつかみやすくなります。

 

健康状態が良好な、陰陽のバランスがとれているとき。
脈位は、一定の中間位にいるのですが、
体調の悪化により、脈が浮いたり沈んだりという「位置の変化」が現れます。

日頃から自身の脈を診るといいと勧められるわけは、
自分の平常時の脈の高さを知ることにあります。


脈診を慣れてくるとわかりますが、
人により体質から「寸」の脈が深い性質で触れられない。
人により体質から「尺」の脈が想像する位置より大幅にずれて見つけ出しづらい。
またはふくよかさが脈を診づらい状態にしていたり、

脈診上の個人差がかなりあるのが現状だということがわかってきます。


(余談ですが、大人の私が大きな指先で子供の脈をみるのは物理的にムリなど。)

 

平常時に自分の脈を診るといいよというのは、
そのような自身の脈の個体値を理解しておれるということです。

そういった前提が、通常の一般の方が目にする中医学テキストでは、
ページ数の関係上、さっぴいてあります。
ですが臨床をこなす以前に、
自分の脈がとりづらいタイプで橈骨動脈が通る位置の深さが深すぎて触れないような場合。
そういう人もいるんだとわかっていなければ、
その時点で「自分は異常だったんだ!!!」と誤認されかねません。

健康を害しているために脈が見つからない「伏脈」ときもあります。
だが人それぞれ顔が違うように、動脈の通る位置も個性があります。
そこをわかっておかなければ、
一般の方が他者の脈を診たとき「寸口の脈がないから、深刻かも」と言ってしまい、
言われた人がショックを受けることは避けたいでしょう。

 

平常時の脈位から、
脈が皮膚近くに感じられれば「浮脈」と呼び、
脈が平常時より深く感じれば「沈脈」と呼びます。


浮中沈伏.png


浮脈】は、
気や血の流れが体の表面に集まっていることを示唆している。
体の表面で病気の原因となる外邪と闘っている場合や、暑い時などに現れる。


沈脈】は、
気や血の流れが体の深い部分に集まっていることを示唆している。
体の内側で病気と闘っている時や妊娠時や月経前、食後、睡眠中などに現れる。


など、ざっくりしたイメージでとらえていただければよいでしょう。

一般的な状態としてみれば、
浮脈は、病がまだ皮膚近くの体表にあって、カラダの内部にまでは至っていない病気の初期段階:。(太陽病)
沈脈は、病がすでにカラダの内部に入り込んで、闘っている状態を示します。(「病が裏に入った」ともいう)

 

カラダの外層という、お城で言えば城のお堀の外壁での攻防が浮脈だとすると
カラダの芯という、お城で言えば本丸御殿にまで敵が攻め入っている状態が沈脈です。


中脈(正常で邪気はない)は問題ない状態です。

中脈のバランスが崩れたとき、
浮脈からやがて沈脈に至る順序で邪気がカラダに入り込んだ位置を示すのです。

 

 


※ 『沈脈』になっておられる方々を、別の面で考察すると。
   私がチェックした方の多くに「深層筋の筋膜の癒着」が

   感じ取れました。
   
   血液の流れがぎこちなく渋っている脈を『渋脈』といい、
   この場合は、お血があったり、
   寒邪のために血滞があると考えられます。


   この『渋脈』が診られるときは、

   深層筋の筋膜部の癒着をリリースするのは、
   経験上、困難な状態となるようです。

   脈を診ることでどの部位の筋膜の癒着があるかの特定は難しいが、
   カラダの全体的に問題が入り込んでいると推測がつくようになりました。

   これは大きな気づきとなりました。