慢性化した凝りがあるときの筋膜の癒着をたとえるとどう見えるもの?


どんな場合でもどんな状態の筋膜でも、
筋膜がカンタンにはがせると思うのは勘違いです。

施術者が施術で筋膜の癒着が進んだ状態をリリースするときに、
残念ながら、まったくの理想形の筋繊維に即座に復活するなんてありえないのです。

特に、慢性化した凝りの場合は筋膜の膜組織自体が正常なものとは別物といえる状態にスリップしているため、
慢性状態になった凝りを正常に戻すには、鋭い目と技が必要だと言わざるを得ないでしょう。






お願い
以下に2本の密接する筋組織、つまり筋膜が巻き付いた筋肉があるとイメージしてください。

2本の密接する筋組織.png


筋膜の癒着ってくイメージ.png

3つのパターンを描きました。

{左図}正常。筋膜の癒着がないケースです。

コラーゲン線維が主にできており体内の水分が多く深部体温ほど高い温度をしめす場所にある筋膜。
そちらは、半ゲル状でぺたぺたし状態です。
ぷるぷるのゼリーのようなイメージと考えていただいて、おおかた間違いはないでしょう。
そうなると隣同士の筋膜が直接接すれば容易に癒着がおこるので、
そうはならないようにたっぷりとした潤滑油が筋膜の外方には満たされており、
その潤滑油により仕切られて別々の筋は、それぞれが動く際に互いに干渉せずにすべるように滑らかに動けます。


{中央図}筋膜癒着の初期段階:筋膜を包む場にある潤滑油が切れてしまう場所があらわれ、癒着が徐々に始まり糸を引く様子です。
精神的緊張からくる筋緊張を含め、筋肉の部分的な使い過ぎが積み重なり、張った筋同士の隣との間隔が減り密着し始めていけば、
筋膜を滑らせる潤滑油の供給が滞りだします。
そうした潤滑油切れが起きれば、粘り気のある筋膜組織が隣同士、直接膜がついたところが癒着していき、
それらの筋を引き離せば筋膜コラーゲンがクモの糸のような引く状態となります。

この場合、生理的に日々体を使って凝りはでてくるのが普通ですから、初期段階では寝ればリセットして両者の癒着した筋は離れます。
つまり通常は、左図の正常な筋膜の癒着がない状態と、中央図の軽く癒着した状態を日々行き来しながら暮らすようにできており、
筋膜の癒着がおこること自体は体内でそれをリセットする機能がついていることからもわかるように生理的な現象です。

このような自らの筋膜をはがすための機能がお客様の体の中に正常に発揮できる状態下であれば、
私どもとしては「これだったら問題なく、リリースがスムースにできますし、良い状態の元通りにリカバリーできます」といいます。

このときの初期の初期段階からもうちょっと進んだ程度の癒着のリリースは、
痛みが出ることのないカウンターストレインやマッスルエナジーテクニックなどで、
効果的に緩めていくことができます。
なかなかこのような対処のみで終わることとなるお客様は少ないのですが、
ベン石温熱器をもちいはじめて、
少しずつ副交感神経というリラックスモードによく引き入れてリリース促進を図るという対応でOKな方がでてきてうれしい限りです。



{右図}筋膜の癒着が進行し、膜状が柔軟性を失した線維化が進みはじめる。

(右図は、鍾乳洞の下絵を使って描いたため、線維化が進み過ぎてみえます。ですが誇張しすぎてますが、術者の友達からは納得の声をいただきました:私どもの感触では、正常な筋膜と変異した筋膜は形状も水分量も温度も組成成分状態も、そしてそのうちにある筋繊維への保護能力もまったく状態は別物で劣化した状態だという認識です)



筋膜はもともと代謝が激しさがある組織で、
ひっきりなしに古くなった筋膜組織を壊して新たな筋膜に入れ替えることで、
骨格筋や各部臓器を含む筋組織を鉄壁にガードする仕組みになっています。

そのような新築するのががいちじるしい筋膜組織に対して、
すでに凝りが進み血流等の代謝が落ちてしまえば、いざ新たな筋膜組織を作ろうとしてもままなりません。
すると古くなって通常は破棄する仕様の廃材として価値のないはずの現存する筋膜を再利用するしかなくなります。

私はぶたの解体を施術学校に通い始めたとき人づてて見せていただく機会がありました。
比較的豚の臓器と人間の臓器は似ているといわれるだけあって、筋組織も類似しているところもあります。
そこで見たのは本来は半透明であったはずの膜が脂肪層の漏れ出しからか黄色味を帯びた着色がなされ、
だまがいくつもの部位にみてとることができました。
あきらかに正常な筋膜組織ではなくて、筋同士をはがそうとすると、
細いクモの糸が出る場所と、
他にはあたかも鍾乳洞の上下に突起して引きはがしづらい抵抗ある場所と。
明瞭にわけられていたことを観察しました。


鍾乳洞のような状態の筋膜部は、
すでにそこにある筋膜組織は新調性の高いソフトでのびやかな組織ではないものに変異しております。
体液の減少もみられます。
そして一部、粗くなった筋膜の筋繊維は剥がれ落ちて筋繊維が露呈しています。
ここはかなり顔をつけるようにしてのぞき込まなければわかりませんが、
すでに筋繊維は筋膜というガードマンがいなくなり、非常に衝撃にもろさがある状態でむき出しになっています。
部分そこは赤みがかり微量の出血痕が見受けられます。
何年もの間、新調されずに使いまわされた筋膜の線維化が進み、ぶたの首筋近くの凝りがあったことでしょう。

そして昨今では海外では筋膜系の参考となる専門書が多数出版されて和訳本もいくつかでております。
それがあるおかげで正常な筋膜と変異が進んだものとの違いは明らかにされております。
ただ書籍だけでは変異後の癒着が進んだものの感触は得られません。
だからそこを補う情報として私はぶたの解体の観察をし、手で触り感触を確かめた特徴を、記憶の奥から蘇らせつなげることができました。
その体験がいまだに生きています。


ですが実際は人体のなかに入り込んだ凝りの硬化度の高さは、
おそらく私が触れたぶたのものとは違うでしょう。
ぶたはそこまで体を酷使したりせずに生育されていて、
部分的な凝りが進むトリガーポイント部分はあのとき観たような癒着があった。
そして人体のなかには、それと同等か、または私が骨化と呼びたくなって呼んでしまっている、
別に石灰化がはいってもいない筋膜の膜状の古さやダメージの状態は、
そのときのぶたの様子を超えるものだというのは明らかです。


筋膜は、単なる筋組織の周りに巻き付いていて癒着していてもそのまんま普通に巻き付いたままの組織だと思う。
そのように考えておられていては筋膜リリースをするときに適切な回復段階を想像できないでしょう。

以前、たまたは知り合いの鍼灸師の先生に筋膜の癒着ってどうなってるのかと問われて、
癒着が進んだ膜状は、柔軟度の失せた廃材利用で、正常な筋膜の組織とはまったくの別物だから、
剥がしただけでまた元通りに瞬間的に変わるなんていうことは組織上はないんだと説明しました。

するとその先生も、お客様で硬い人だと鍼を打っても折れるか刺さらない部位がだいぶあるのでそういったところが、
もしかすると柔軟性の失せた廃材を使った筋膜ということだといえそうだねといっておられました。

実際、コラーゲン線維でできた筋膜の膜組織を水分を抜いてカラカラにすると、骨以上の硬さに変わります。
そして触る人が触れば、人体内部のその硬化した組織の性質と、その鋼の太さの板ゼラチンの軽さと硬さとタップしたときの響きから、
同様の組織だということを察することができるでしょう。


長時間にわたる負担の大きい同一姿勢を続けたり、
それが過酷な力みを入れざるを得ない筋力を発揮させて酷使させたり、
重篤な衝撃が体内に入り出て行かないほどの量のダメージを受けたり、
緊張して息をするのをひそめたり息を止めたような作業をしたり、
精神的なストレスが筋緊張を呼び筋力の弱化が生じて筋バランスが正常に保てなくなったり。

そこは想定される日々の軽微な筋膜の癒着の範囲を超えるものとなり、
急性の癒着期から進行して慢性の癒着状態という次のステップに進みます。


実際的に慢性の癒着まで進行したときには、
右図}のような物質としての変質が起きてしまっております。

そのような慢性状態(※注 慢性状態のざっくりしたイメージ。)となれば、
この部分の組織を実直にリリースするということがない限り、
ほぼ永続的に、その凝りによる身体内部の関節のずれは続き関節可動域の制限は残りますし、
深層筋にまでそれが進めば血液等の代謝が血管を硬化した筋膜の圧迫により停滞する等の不具合がいつまでも残ります。
そしてやっかいなことですが、すでに生理的な筋膜のリリースがおこる範囲の外まで凝りが積載されてしまえば、
いったんできてしまったその凝りのため筋使用が制限された状況を他の筋肉を動かすことでカバーするため、
また新たな部位に凝りを創るようになります。
これはこれで優れた人間の持つ機能の一端ではありますが、本来は自分が担当ではない苦手な労働を他者から丸投げされてさせられることにより、
こちらの新たにできた凝りのほうが張ったり凝ったりが強く感じられて、
そこを主訴として訴えられる方が多くおられます。

実際はそこを緩めると余計に痛みが増す関係になっており、
さかのぼって仕事を丸投げした先に動けなくなった部位のリリースが先行されない限り、
いくらアプローチしても改善の長続きは起こりません。
慢性化した状態であれば、多層的にそのような問題が含まれていますから、
そのような点を順序だ出てて優先順位付けして解いていくことに力を注ぎます。


(※注) 慢性状態のざっくりしたイメージ。3カ月以上とか6か月以上など体の部位により慢性の読みが変わります・伸筋や屈筋としても異なります。
ただ1年以上昔のモノとなると、多くは表層筋は右図のようになり、負担蓄積度合いがつもればそれが中層筋や深層筋まで浸潤して、やがて骨膜へ癒着が観られれば自力での復旧が難しい状態となったといえるでしょう



たとえば10年以上前からかなりしんどい凝りによる不調が続いているといった状態のときは、
残念ながら、多くは体内の奥に{右図}のようなものを私どもは非常に多くの身体内部に広がるものとして見つけ出します。

それゆえに、筋膜の癒着が慢性化した凝りを為している場合、他の施術とはアプローチの手順、手技、プログラムなどリリース法が変えられています。
通常のマッサージでは線維化が著しいものには対処が難しい面があると思えます。
たとえば筋膜の膜状をタッチでどう読み取るか、そして全身的にその筋膜の癒着はどのような係を担っているものか、そのうえでどのような手技を使うのが最適か、等々を順繰りに解きつつ、その解かれた後の瞬間変わった状態からまた状況曲面を新たに模索して次の手を考えて、
リリースする個所の深さや圧の質や上下左右前後のバランスなどみていき、仕事終わりにつなげられるよう詰めて微修正を何十回、何百回と繰り返します。
そうするにもそうした対処できるようなセンスをみがき、独自のアプローチ法を模索していきます。
私の今の施術上のマイブームは、ベン石温熱器や棒状かっさによる骨への垂直刺激を渡さずになすずり圧でしょう。


そうすることで、癒着が進行して筋膜が変質した状態が根付いた患部に対して血の流れを寄せるルートをあけて、
その廃材を使わざるおえなかった部位の筋膜組織を変えていきます。
ただ筋膜が剥げてしまっていそうな部位は、圧にもろい切断されやすい筋繊維が犠牲になるのですが、
そこを筋繊維の流れを読むことで沿って圧をかける点と、骨に押し付けすぎない意図的に一定層の浮いた圧を棒状かっさで作り出すことでぺりぺりと目的層の癒着をはがすことができるようになった点と。
あとは筋膜組織が廃材化したときに硬度が強まり伸張性が減少してダメージを受けやすく変質しているところに、
ベン石温熱器で患部のコラーゲン線維を加熱して先行してちゃんと緩めて解けやすい部位をつけてからそこを解くを繰り返すことで、
筋膜組織へのちぎれるダメージも減らせるというのは本当にありがたい、ベン石温熱器様、ありがとうです。