一般的にみられる経絡図と経絡と筋肉の関係を示した経筋図との違いについて

私の施術をお受けいただくとき。
鍼灸師さまや東洋医学に詳しい方は、私がワークベッドの上で横たわっていただいているお客様をチェックするとき。
的確に経絡の流れを見て経穴を押さえていることがわかると思います。
経絡・経穴をもちいて改善をはかるボウエンテクニックのムーブの手技を使い、
体全体の状態をチェックしているからです。



幾日前の施術をさせていただいているときのこと。
そのようなチェックをしているまっただなか、お客様から声が上がりました。
それはお客様の手の左手の手三里をチェックしたときです。
『あっ!いま、一瞬、右耳の耳鳴りが収まったわ』
と、ご自身の身体上起きた気づきを私に知らせてくれたのです。

通常【耳鳴り】は耳に届く経絡線を持つ「手の太陽小腸経」によりみるとされています。
ただ小腸経でアプローチしたときは、左手の小腸経をふれたなら左側の耳といった同側に影響がでるのです。
だからこの度のように左手の小腸経を刺激して右耳に影響が起きるわけはありません。
経絡の流れをわかっていれば、そんなイレギュラーな反応は起きることはないのです。


そもそも、私がお客様の左手のムーブをかけた経穴の手三里は、手の陽明大腸経。
耳に直接的な影響が起こるルートは通りません。
手三里は脳充血や脳貧血のようなものを対処する経穴です。
ですが、日頃から他より優れて体に起きる感覚をモニターなさるお客様です。
その方がおっしゃられる体感サインは信用できます。

陽明大腸経は頭部の上部を回り込んで顔の反対側に影響が起こりますが、
その頭頂部を通るライン状には経穴がある訳では無いが経絡線上のそばを耳がある。
そのため気の通りに問題がでていた手三里の経穴に刺激を加えて気が流れた瞬間、
お客様の頭頂をまわり通って気が流れることとなり、右耳にでていた耳鳴りの影響が収まった可能性もあるのだろうか。
そのように推察することができると思われます。


今回、基礎知識としてご理解いただければ思う点がひとつあります。
一般的な経絡図は、
手の陽明大腸経は扶突という首筋の経穴から口元を通ってかりょうという左右反対位置に当たる経穴に最短距離での線が引いて描かれているものが多いでしょう。
これだけしか知らなければ、このたびの、左手三里の気を通して右耳を好意的な影響を与えるイメージは持てないと思います。
こちらの経絡図は学びやすい反面、誤解を生じやすいところもあり気をつけたほうがいいことがあるようです。
筋膜リリースをする者としては【経筋学】という経絡と筋肉の関連にフォーカスした内容の本に目を通して、
そちらに描かれた経筋図をもとに考察したほうがすっきりわかる場面が多々見受けられます。
そしてこの度の件は、その好例でしょう。

経絡感覚がするどいお客様の施術は、私が学ばせていただくことが多いのです。
非常に興味深い臨床を学ばせていただくことができました。
感謝です!