『陰虚』の意味をどう解釈するのか?日本漢方と中国医学の違いについて。

独学で東洋医学を学ぶ人にありがちなことですが、
日本漢方と中国医学を入り乱れて学ぶ過程で話しが見えなくなる場面がでてまいります。



たとえば、『陰虚』の解釈です。

私は中医学の本のみ学び始めでは読み続けておりました。
そこで中医学解釈を先に申し上げられればと思います。

中医学では『陰虚』を、次のように語を分けて考えます。
『陰 ≒ 血 + 津液』が『虚 ≒ 正常量より少ない状態』です。
『血と津液という身体に有益な液体が、足りてないですよ』となります。



このときの性質として、
『血と津液という液体』には【気の亢進を抑制する作用】があるといいます。
生命エネルギーの気には温煦作用という身体を温める作用があります。
気が亢進する、つまり気が活性化しすぎて過剰に熱を持てば冷ます必要がでてまいます。

それは自動車を運転中、エンジンが熱くなりすぎたらラジエターで冷却するのと同じことです。
もし熱くなりすぎたエンジンをさらに加熱すれば、熱膨張して金属強度を越えた灼熱のエンジンになってしまうでしょう。
火や煙がでて故障するでしょう。
そうならないように冷却水がエンジンの熱を適温化させるよう働いてくれるのです。



人体の内側でも気が熱を上げる力を発揮したとき、
『血と津液という(液体)』が過剰な熱を吸収し冷却。
それにより熱暴走が起きないよう調整をしております。



陰虚体質』であれば、
『血と津液という(液体)』が正常量から足りてない。

この状態で気が亢進して内熱を高めたとき、
過剰な熱を冷却して鎮めることができません。
「ほてりのぼせ」『ホットフラッシュ』を感じることもあります。


ほてりのぼせは内熱ですから、
体温を計測しても通常の体温のまま変わりません。

(計測した本人は不思議に感じることでしょう)
本人は気の亢進で適温を上回る熱にさいなまれて、
たまったものじゃない不快を感じますが、
まわりにわかってもらえないのもつらいことです。
この状態を更年期障害ということもあります。


血と津液の損失が補いきれない総和が積み重なった末に、
更年期障害が起こりやすいのです。



女性は、生理や出産等で男性より血を失いやすくあります。
それにより女性の更年期障害の発症率は高くなります。

ちなみに女性ホルモンのバランスが変調をきたしたから更年期障害となるといわれることもございます。

『女性ホルモン 更年期障害』でGoogle AI にて検索。

更年期障害は、主に卵巣機能の低下による女性ホルモン(特にエストロゲン)の急激な減少や変動が原因です。このホルモンバランスの乱れが、自律神経のバランスを崩し、のぼせ、ほてり、動悸などの症状を引き起こします。さらに、加齢による身体的変化、元々の性格、ストレスなどの心理的・社会的要因も複合的に関与します。

 





ただ男性にも更年期障害があるといわれて久しいことです。
僕は女性ホルモンは元々少ないから大丈夫だと、
油断はなりません。
男性でも何らかの要因で陰液(血および津液)を多量に失い、
陰虚体質』が強まれば、気の亢進を止められず、
内熱により不調を感じてしまうことになるのです。


こうした不調感の軽重の度合いや感じ方の実感は、
人それぞれともうされることもありますが。。。
女性より痛み等の耐性が弱い男性が強い陰虚体質となって感じる不調感は
深刻な凄まじさを実感するそうです。
とある芸能人の方が、そう述べておられたことを記憶しております。



急場を凌ぐ意味合いで足りていない血および津液を補うと、
気の亢進が抑制されることとなり、
ほてりのぼせ症状を鎮めることができます。

そうした症状が収まっている落ち着けるときを得て、
本格的な『陰虚体質』の改善に主軸を置いて事に当たります。

といったようなことで、
だいぶん話は脱線いたしましたが。。。

陰虚といわれると、『中医学』では<ほてりのぼせという熱>を意味します。



対する『日本漢方』では、
陰虚と言われると、冷めた寒々しい状態を意味しております。



個人的に中医学を学ぶ前の私は、
ほぼなんとなくという素人視点でお恥ずかしいことですが、
陰虚と聞いて、温度は冷めた低い感じを想像したように思い出します。
ゆえに(中医学陰虚体質のものが熱く感じる)と説かれた書を読み、
混乱した記憶があります。

現在は中医学での見方を理解できているものの、
こんどは『日本漢方』の本を読み始めていくと、
陰虚中医学とは別の意味で使われていたと気づくまで、
『なんでしょうか?・・・あの、話しが見えなくなってますけど』
と混乱していたことがありました。




中医学と日本漢方、どちらが正しい正しくないというよりも、
ひとまず知識を吸収するにはそれぞれの言語使用の差異を知り、
そのうえで中医学の先生か日本漢方本の先生かを分けて読むこと。

そうすればほしい知識や情報を正確に把握吸収できます。
そうしないでごっちゃに読むと、
後に臨床上で手痛い失敗のもととなるのではと危惧いたします。



そこに一ヶ月前ほどに、
ようやく気づきました。
(遅いといわれそうですが、
観察力が乏しく、
ひたすらつまづいておりました)


鹿野教授のyoutube映像でも『気』のタイトルで
中医学と日本漢方の陰虚の使用の差異を、
そうしたところの部分解説をなさってくださっておられました。
まったくの門外漢から独学で学び始めた私のような場合には、
こうした助言をくださる先生が活躍していただけまして、
本当にありがたいです。



私が習った脈診講座の先生は生粋の中医学ベースの鍼灸師で、
その先生の本や他の中医学から東洋医学に入りました。
対して日本漢方の考え方や取り組みを存じ上げませんでした。
なので反射的に中医学ベースの意味で解釈するようになっております。




ただ私の目的といたしまして、
中医学と日本漢方の両方の優れたお考えを吸収したいと願っています。


手持ちの『中医用語辞典』は、中医学に沿った単語解説をします。
他に手持ちの『知りたいこと、いっぱい!東洋医学ポケット用語集』も、
別段、中医学と日本漢方の両方を分けた単語解説書ではありません。。。
なにかいい手引書がないか、現在探しているところです。

ほんと、独学で勉強していこうというと。
つまづくこともすくなくありませんよね。