内なるドクター、健在


バリエーションは豊かな方がいいという考え方があります。


歩き方ひとつとってみても、
多様なものでいいのです。


たとえ、それで腰痛になる歩き方であったとしても、
たとえ、それで長距離歩いても疲れない歩き方であったとしても。



それぞれに学ぶところがあり、
今後の自身の試行錯誤に活かすための教材にしていけばいいのです。




昨日、施術をさせていただいたお客様が工夫した歩き方は、
胸椎を腕や肩の回転の力を活かした胸椎部の回旋の操作をなさっていたようです。


骨盤の腸骨棘部分が進むタイミングと下脚を前方へ送るタイミングが逆転しているようになっていて、
それは私がイメージする大腰筋をつかった歩き方とは異なる点も見受けられました。



お客様の脊椎の硬さは動きづらさが私の施術を受けていただく方の中でも5本の指に入ります。
脊椎のすぐ脇にある骨化したほどの硬化が進んだ起立筋群は脊椎と肋骨との隙間奥深くへ入り込み、
それを手で指では解くことは、
私が個人的に考えぬいた範囲ではありますがその解は見つかりませんでした。
ただそれも真鍮製の太い自作てい鍼でのリリースを幾度か丁寧に繰り返していくにしたがい、
私が「鈴木さん、痛いぞ」という殺気を感じずにはおれませんでしたが、
そこを必死に話しかけて気を紛らわせてもらったり、
「ここのリリース、ほんとうに意義があって最重要よね〜」といったり、
そんな雰囲気をぐいぐいだしていってみたり。
そんなこんなの格闘をしていくうち、
緩みが出てきたように感じます。


ちなみに胸骨が肋軟骨と結ばっているジョイント部分が緩まないと、
胸椎が動けないままでいるというのが、
知っておくと良い条件のひとつなんですね。
この胸骨周囲も、やはり自作てい鍼でならば安全かつ効果的に緩められます。
ただし、胸骨周囲の固まりが強い人は、
そこには肋間神経やら肺や心臓に向かうような神経の出張部分も、
その胸骨周囲で神経が異常な緊張状態で深刻な問題を持っています。
そのため自作てい鍼を、比較的軽さのあるてい鍼の自重だけをかけて患部の上部を滑らしただけで、
神経に突き刺すような激痛が出てきて驚くことでしょう。


ただこれも幾度かリリースを受けると、
胸の前部分の筋肉がこわばり肋間を動けないほどに固めた張りが消えていきます。
そうやって肋骨の肋軟骨部分の可動が現れてきまして、
ついには胸骨の手押しポンプの動きが現れ出します!


そうなるとはじめて胸椎の側湾やら歪みが緩むという人が、かなり多いんですね。
そのような臨床ごとをいく人ものお客様で確認していて、非常に興味深いです。
もしかしたらコブ値の深すぎない器質的な胸椎椎骨の異常がない状態の
側わん症の診断を受けた子どもたちにも有効かもしれませんね。
子供の施術はボディワイズではほとんどしておりませんので、
その臨床例はございませんが、推測するにそうなるでしょう。


ちなみに通常はこのようになると、
胸骨柄部分も動き出して胸腺が免疫物質を体中に流せるように変わってきますから、
胸腺からくる免疫物質のたりなさからくるアレルギーや風邪が引きやすくて、、、というひとに
とても大きなメリットがあるんじゃないかなと思います。


少し横道にそれました。。。^-^;




ということで、
何度かそのお客様の胸郭を緩めるような施術も進んできて、
ようやく胸椎がゆるさが多少ずつ見えるようになってきました。 ^-^v


その動けるようになったタイミングを、私としては絶対に逃したくない。
代わりばなが変化を受け付けやすいタイミングになることが多くあって。
かなりいつも以上に時間をかけ歩き方のノウハウのディテールまで伝え、
そしてお客様の身体もその解説に通る体の状態であったため反応もよく。


そのうえお客様本人も常日頃から自己メンテのストレッチ等はよくしていただいている方ですが、
それに上乗せして歩き方への改良への意識が高められておられる様子も。
そちらが、かなりいつも以上に伝わってきまして。


うれしいです。



実質、脊椎が硬かったり側湾がきつい状態では
精密機械のように体を左右当分に割った配分で
理想に分けた動きの連続である「歩き方」は、
核心部分は体が動かせないので。


私が伝えたい歩き方が体験を通して腑に落ちることはありません。
ですからできるところまで+α、というところを見極めています。


いきなり定形の理想型の歩き方はこのようなものですよ、といってみても、
それは、最終目的は、その目の前のお客様がそれができるように至るかどうかなのです。
そこに前提条件を定め見極めていくことは、
対面でのセッションを意義あるものへとするために大事なことです。



冷酷な見方かもしれませんが、
片側に意識が逃げてしまいシンメトリカルなデザインを自身の体の動きの中から見いだせない。
そこは実際問題として、私がもしロボット制作キットを作った際に、
支柱になるフレームがいくつか曲がってしまったキットならば、
うまくそれは動くようなことはないでしょう。


そのロボットを動かすには、倒れないようにへんてこな左右の動きがわざとばらばらになる
複雑な歪みの状態に対応させるプログラムを組み込まなければ歩いてはくれないのです。


それに人体も変わることはありません。


体の内側にてつくられた骨格のフレームが歪みが大きかったり、
関節が自在に適切な動きをしてくれなかったり、
等々のネックになる部分を持っていたとすれば。


必死になって、歩き方のスキルとして高いものを伝えようとしても、
体はその流れを受け付けてくれるものではありませんから。
かえってそれは言われれば言われるほど、
真摯にその説明を受け止めようとする人ほどつらい気持ちになってきます。


「あんたの言いたいことはわかるよ。でもねぇ、できねえもんは、できねえんだよ」
とテヤンでぇというような反発心があれば食って掛かってもくれるでしょう。
でもそこから
「なんで私は解説されたとおりにできないんだろう。なんて、自分は融通が利かないんだ。。。」
と落ち込んでしまうようなことがあれば、
そこでひとつ嫌な体験を刷り込まれたことになります。
もう、歩き方についての解説なんて耳に入れたくない!という拒絶感です。


だから「現状ではお体の状態として難しいと思いますが、できる範囲で意識してくださいね」
という言葉を前置くようにしてはおりますが。
そうであっても、慎重さを持っておかねばと。


そのようなトラウマのようなものを得て欲しくはないので気をつけるものの、
どこである程度の動きの精度をあげた歩き方に転換していただけばいいのか。
お客様の性格やニーズ等が千差万別で、正解はあるようでないもののようで。
正直、いつもいつも、ここは悩むところです。





下部胸椎部分という腎臓のある高さ部分が自由に左右回転できるようにならなければ、
大腰筋を使った歩き方がうまくできないように仕組まれているようなところがあります。
そちらも左腰部の裏手にできていた患部に柔軟性が出てきて動きを出せるようになって、
問題が少しずつ改善されていきました。
そんな歩き方を伝えるための下地になる条件を、
私の胸の内ではいくつか用意させていただいておりますので。
それらがパスできるように、施術でも設計されているのです。



そしてそちらのお客様がいくつか私が投げかけさせていただきました歩きのヒントを咀嚼して、
試行錯誤を繰り返した後に完成させた歩き方。
大腰筋も使っているのですが、同時に広背筋の後方への引きが強いタイプに仕上げていました。


かつては上部胸椎部分の上方1番、2番、3番が前方へ湾曲しながら流れていた状態が、
定規を押し当てたかのように少しストレート気味になりつつ上方へと立ち上っていたのですが。


現状は胸椎9番部分が一番後屈した頂点になっているため背骨の曲がりが感じられるものの、
今までは胸椎椎間板部分が狭窄して押しつぶされた感じの詰まり感と動きの悪さがあったが。
それが改善されてきていることが確認できました。 ^-^


胸椎椎間板の関節可動域を改善させる歩き方の工夫により、
胸椎の回旋ができるよう胸椎椎間板の詰まりが解けてきたのです。


ただひとことだけ付け足させていただければ、
私の歩き方のパターンの発想からは思いつけない歩きをお客様がなさっておられて。
その歩きの際の動きが、あまりに胸椎の回旋を誇張させる動きでしたので、
ちょっとその意外性にびっくりしましたが、
こちらのお客さまにとって、
まさに現状を良化するための適切なステップとして機能した歩きになっていました。


それが、脊椎の前に位置するひどく骨化が著しすぎて、
私の施術でも手出しがしようがなかった部分が解けて、
このたびの胸椎の動きや頸部の垂直性等の改善につながったのです!!!


これは最高にハッピーな事なんです。


歩き方の工夫により、
こんな前縦靭帯骨化症の解き方があったんだなって、
相当、私もそちらへ向けてのアプローチを考えてきたが、
落とし所として昨日見せていただいた歩き方だったとは。
お客様に教えられました。 ^-^


本当にここは圧では手の施しようもなく、
カウンターストレインやらマッスルエナジーテクニックやら、
他の手技をなしてもすべて弾かれた状態で。
前縦靭帯骨化症は状態が強ければ、
その改善方法として外科手術で扱うケースですので。
少しずつ胸郭全体が自作てい鍼で緩められていたとしても、
それを維持発展させる手を打ち出し続ける日常の運動に落とし込まれなければ戻りはある場所です。
そこを自助努力で完遂させていかれていたとは。


前回の施術が2ヶ月前でありますが、
いい時間を過ごされてきたのですね。


自分の体を動かす際の観察眼を鋭くして、
体験を通して成果を積み上げていく姿勢。


貴重です。


本人は気づいていないかもしれませんが、
本人の内側にいる内なるドクターがいる。


そう実感させていただけました。