体が慢性的に重だるくて、
にっちもさっちもいかずにいる。
そんなときには、
えーい、こんな体はいらないや！
と放り出したくなるものです。
気持ち、よーく、わかります。
それが命にも関わる病ならば、
本当にどうにかならないかと。
切なく祈る気持ちになります。
ですがそのような都合のいいことはできないのが現状です。
自分の体を機械のパーツのように、
部分を切り離して別の新品に取り替えることはできないのです。
たとえば山に登り足が痛くなったから、
山頂で代わりの新品の足に取り替えてルンルンして下山すればいい。
そのような今ある自分の体を大切にしなくてもいいとすれば、
不幸の始まりとなるでしょう。
取り替えることをあきらめてみて、
使い込まれた体を愛し敬い
徹底的に生かし切るしかない。
そう、いさぎよく腹をくくります。
いま、自分が持っている体自体を、
大ざっぱにしか見つめないならば
いくつもの分化した部分が集まり、
一体化して動くからくりが見えてこない。
そこから小さな不具合が積み重なる。
にっちもさっちもいかないつらさが生まれてくるもののようです。
数学や物理などでは、公式というものがあって、
それに当てはめて数値をおいておけば答えがでるようになっています。
英語を学ぶときにも英文法のような、所定の並び順のような決まりがあります。
そして体を動かすためにも、
ロボットを効率よく動かすための物理規則に乗っ取ったプログラムのようなものを書いてあります。
小脳に手続き記憶という体の操作を自動化させてくれるプログラムが書かれているのです。
そこに書かれているプログラムを、より実状の体のからくりにそぐったものにしていけば、
自然に大きなメリットが享受できる仕組みです。
昨日メールで（メールの返事、今晩書きます）、
最近、アレクサンダーテクニークという身体操作法を
教えてもらうようになって、体が今までにないほど
楽な感触を味わえたんですよとご報告をいただきました。
施術で受けて楽になったという感覚とはひと味違います。
自分の内側に備えられている潜在機能が発揮されていく、
そんなときに覚える高揚感は実にうれしくなるものです。
数日もすれば、徐々にそのときの感覚は、
平素の動きに浸食されて押し戻されるものです。
人から伝えられるものは、
事前に同様なことを自分が発想できるほどの用意がなければ、
胸の内に深く突き刺さり同化することがないものですから。
ですがそのような動きの公式を何度も繰り返し利用して、
それを自分なりにアレンジして応用を施していくときに、
完璧に自分のものにすることができちゃいます。
他の人が与えられる動きの指示とは、
ヒントだけなのかもしれません。
ただ、ナイスなヒントを工夫してだすのも問題への理解の深さの現れです。
完成度の高い剣術の先生が、
「 剣はたゆまぬ個人の工夫なんだぞ、
もっといいものへ、おまえたちが成長させていけ」といいました。
既存の知識を十分に吸収してから、そしてその型を破って、
自在に使いこなせる高見へと押し上げよということでしょう。
その殻に収まりきらず、
器を広げなさいという、
すでに成熟したものに見えているものがいうと、
空恐ろしい格の高さが感じられてなりませんね。
余談です。
体の中の脊髄神経から延びる神経や各部の臓器など、
それらは実に多くの神経組織につながれていそうです。
ですがあまりこれらは細やかに動かせるような指示命令系統を持たない。
それに引き替え筋肉は一本一本の筋繊維の中にしっかり筋肉の長さを決めるための器官があります。
つまり筋繊維、細いやつのひとつひとつにとなるので、それは莫大な量の感受性を秘めた存在です。
おおざっぱに指を曲げてものを握ってみるという動作も、
包丁使いの日本食の一流のプロとそうでないものでは、
捌く方が違うのも小さな筋肉一本ごとに命令を送り
別々に使うことで三次元的な軸を巧みに刃先に伝え
繊細な刃のあてがい方が違う。
運動神経系は、体の筋繊維一本一本まで制御しうるほどの分化したものです。
この莫大な筋繊維に巧みな命令を送れば送るほど脳は新たな領域を認識して
活性化の波は止まらない。
狭く収まった体の内面のエリア認識が、
広大に膨張していくかのようですよね。
一本ずつの髪の毛より細いほどの筋繊維まで意図的に動きに参加させるならば、
運動神経系の電位が高いため活発な磁気が体の内側に生じるような気が増して、
それと同時に動きに伴い筋肉が動くことで静脈血を心臓に押し返すポンプが働く。
リンパ液の廃液も助けてくれて免疫力も向上していく。
それは年を重ねても、
運動神経系を巧みに生かし切ろうとするものの優れた特徴です。
いい感じの、アンチエイジングだと思いませんか？
