ラジアルタイヤのベルトと同じ二層構造の筋:「肋間筋」

 

「胸郭」は、理想形が{お寺の釣り鐘}です。

胸郭の理想形.png

施術をする経験上、
左右のシンメトリーな身体にするには、
もっともやっかいな部位のひとつはココ、「胸郭」です。


それは、どういう意味でしょうか?


いくつかその要素があるのですが、
ひとつの筋肉、肋間筋に焦点を当てて観察してみましょう!


肋骨の形状を形作る構成筋として、肋間筋があります。

肋間筋は、2層構造。
内側に内肋間筋、外側に外肋間筋
こちらの2対の筋肉が重なります。
(※ 外肋間筋のイメージを拡張するとき。
   外肋間筋と似た流れで肋軟骨の間を「外肋間膜」という白色の膜系組織がある。
   外肋間膜を外肋間筋に関連すると含めて便宜上扱うときがありがあります)


肋間筋の構成.png


内肋間筋と外肋間筋の筋肉の流れのベクトルを観察します。
内肋間筋は、上から下に向かう筋の流れは外側に向かい、
外肋間筋は、上から下に向かう筋の流れは内側に向かいます。


肋間筋の外肋間筋と内肋間筋の筋の流れ.png


肋間筋の外肋間筋と内肋間筋はラジアルタイヤのベルトと同様の構造です。

 

ラジアルタイヤのベルト.jpg

 

ラジアルタイヤのベルトは、
カーカスというさらに奥にあるパーツを緊縛し強く締付け、トレッドの剛性を高めているのです。


肋間筋に本質的に似た構造を持つ腹斜筋という筋肉があります。
その筋肉は内腹斜筋と外肋間筋という2層構造となっており、
引き締まった脇腹を作る力を持つ筋肉です。

それらタイヤ構造や腹斜筋のイメージからも
肋間筋には強く引き締める力、または働きを持つ非常に強力な筋肉でとわかります。


肋間筋の<作用>として、
・胸椎の回旋
・静かな強制的な吸気
・強制呼気

呼吸をするときの息を吸う吐くための肋骨の動きを作り出す筋肉です。


詳細に観れば、

外肋間筋を緊張させて筋の長さを短くすることと
内肋間筋を弛緩させて筋を緩める。

内肋間筋を緊張させて筋の長さを短くすることと
外肋間筋を弛緩させて筋を緩める。

そうすることで
静かな強制的な吸気や強制呼気などの肋骨の動きを起こし呼吸活動ができるものです。
非常に強力なラジアルタイヤのベルト構造の肋間筋により支えられているのですね。


ただ・・・。

 

もしも、です。

別々の方向へと肋骨を動かす機能を持つ外肋間筋と内肋間筋のどちらかまたは両方が、
互いに癒着し始めたとしたら。


通常肋間筋は、
肋骨を動かすには「前鋸筋」という肩甲骨から肋骨に起始と停止を持つ筋肉と協力しています。

肩甲骨の位置が悪く前鋸筋が使いづらい位置にいつづけることで、
肋間筋に肋骨を動かす負荷が過剰にかかります。
それにより肋間筋のストレスが解消されないまま使い続けることで、
外肋間筋と内肋間筋が筋緊張が元の弛緩へと戻せない硬化へと進みます。

それは息苦しさを感じていれば、
肋骨を広く拡張させ膨らませたままを維持しやすいよう固めてしまう。
これは外肋間筋と内肋間筋の癒着のせいもあるのですね。

 

だったら肋間筋をリリースすればいい!

肋間筋の上をなぜるようにすれば、解けるのでしょうか?

それが癒着があまりないならば、いいでしょう。

でもすでに胸郭の釣り鐘型から遠のいていると、
たやすく解けることは期待できないんです。


なぜでしょうか。

肋間筋の硬化部を見つけることが、
施術をする方でなければ正確に見出すことが難しいというのが、
そもそもの難易度の高いところなのですが。
他にも、、、。


理由、1

肋間筋が、起始と停止が近接しており、
起始から停止への筋の流れに沿ったリリースができない。

 

理由、2

肋間筋の奥が骨部ではないため、硬化部へ押し付けてのリリースができない。

洗濯物を手洗いするとき、洗濯板という硬さがあるものに洗濯物を押し付けて摩擦で汚れを落としました。
効率的な深刻な癒着が進んだ筋膜を効果的にリリースする場合には、
カラダの芯にある骨などの硬さがある部位に患部を押し付けて固定して圧かけるとよく解けます。
肋間筋は、奥が肺という臓器等で、それが困難です。


理由、3

内肋間筋は外肋間筋に隠れた部分という重なった部位のリリースは置きづらい。
それと同時に外肋間筋と内肋間筋の筋の流れ方向が異なる。

以前、私のブログで書かせていただきましたが、
多層化した筋の奥まった部位のリリースは専門家以外の方には手が出ないところでしょう
肋間筋の筋の厚みはそれほど厚くなく、無理にちからまかせの圧をかければ、
神経に突き刺すような激痛が感じられます。
同時に厚みがないため外圧からの外傷障害が起きやすい部位でもあります。

外肋間筋の問題部分を見つけ出すのは手で触ってわかるかもしれないが、
内肋間筋は肋骨の骨の位置のずれ(変位)等が推測できる目がなければ、
手で触れられない内肋間筋部位の状態を読めない。

 

理由、4

シンプルですが。
肋骨と肋骨の隙間は、1センチ前後。
特に肋間が狭窄(せまくなる)するパターンの方は、
肋骨同士が数ミリほどしか間がない。

 

そのような場所は、激烈な痛みが押圧すればでてしまう。
すでにその肋間筋は柔軟性を失しており痛覚がマヒを起こす状態となっており、
押圧をかければ非常に質のよくない炎症があることに気づくのです。
胸郭の状態が異常があるとわかっていたとしても、
たいていはこの炎症をかいくぐってリリースを推し進めることができない。

私が持つマッサージの専門テキストでも、
そのような場合の解き方を書かずに、
そのような炎症の強い場所は解かないようにせよと、
忌避事項と述べるにとどまるものが大半です。

肋間の狭窄が進んだ方の解き方が、効果が目覚ましいやり方で適切に語られた本などを、
私が知る範囲では見つけたことがありません。

手の指先でこのような狭窄が進んだ肋間筋を強めに押圧すれば、
強烈な痛みが出るが、それに見合っただけのリリースはほぼ起こることは期待できない。
かえって痛みが強いことにより、その部位の緊張度が増してしまい、
その後のリリースをしようとするも、仕事がしづらくなります。

そのような患部への対応は、特別な道具がなければ解くことは難しいでしょう。

歯医者さんが、歯科医療をなすときにいくつもの特別な鏡やドリルなどの道具を用います。
素手のみで治療する歯医者さんはいないでしょう。
それと同じことで、適切な道具を見出して対応するようにすべきです。

 


以上、肋間筋のリリースのしづらさを、ほんのわずかだけお伝えいたしました。
他にも、私がかつて感じたリリース困難な理由は多数あるのです。

 


それでは、どのような肋間筋の解き方があるのでしょうか?

 


下準備として、
外腹斜筋と内腹斜筋という腹斜筋が、
外肋間筋と内肋間筋に似たラジアルタイヤのベルトのような構造になっているといいました。

肋間筋をリリースする前に、腹斜筋を先行してリリースすることです。
腹斜筋のほうがリリースをしやすいのです。
もちろんすでに外腹斜筋と内腹斜筋のどちらかかまたは双方が癒着が進めば、
リリースのときは痛みが笑いながら叫び声をあげたくなるほどに強いときがあります。

ただこちらの体側の腹斜筋は、リリースも比較的安全かつ効果的におこないやすいでしょう。

たとえば、簡易なやり方では、脇腹を手で前後をつまむようにします。
腰のほうの腹斜筋の発痛場所を触診して割り出します。
脇腹の状態がわかりづらいときには、体側を左右に側屈するようにして見つけられることがあります。
繊細なチェックができなければリリースがあいまいになりますが、
発痛場所の特定できないときは、成果は弱まりますがだいたいでというところでつまんでください。
脇腹を腰の部位を四本指で挟み、そちらは固定して動かさないようにします。
脇腹の腹の側を親指で挟み、こちらを動かして腰部のしこり部分を狙って緩めます。
時には自身が脇腹の患部を手で挟み込んだ状態で、体側を右へ左へと側屈させることで解くようにしてください。


腹斜筋が緩むと、肋間筋の緊張が低減する場合がありますので丁寧におこなうことです。

 

あとは肋骨の狭窄が猛烈に進んでおれば、
肋骨の上に位置する皮膚層が肋骨や肋間筋に癒着しています。
そのような肋骨の上にある皮膚層を指でつまんで持ち上げて肋骨から乖離させるようなリリースも
効果的に肋間筋を緩ませてくれる場合があります。

またこの皮膚を上方向へ持ち上げるというやり方は、「カッピング(吸い玉療法)」によりおこなってもよい。
腋下の肋間筋の詰まりが強い場所は、肋骨へ皮膚の癒着も進んでおります。
自身の手でおこなう皮膚を持ち上げたリリースより、カッピングのカップを皮膚に持続的吸引をさせたほうが
複数の肋骨上の皮膚の癒着した場所を同時にカッピングをおこなうことができて効率的です。

 


そして鎖骨下や腹側の肋骨と横隔膜の付着点を緩めてください。

 

以上のような下処理がされて後、少しずつ肋間筋がリリースしやすくなるでしょう。

 

スモールサイズのベン石温熱器1.jpg

 

個人的に、ホットストーンを筋膜リリースに応用するようになってから。
スモールサイズのベン石温熱器や他のホットストーンを利用してリリースする場合は、
肋間筋の癒着部をリリースのアプローチ前に、最低でも90秒ほど温熱対応してから、
やはりベン石温熱器等の温熱利用をした道具でリリースをするようにしています。

ベン石温熱器などでは、肋間筋の裏に骨のような固定した押さえ込んで摩擦を起こす部位がなくても、解けます。
ずり圧が壊滅的にやりづらいような委縮が進んだ肋間の場合は、その恩恵は大きいものとなるでしょう。

 

ただし大胸筋のリリースのときに申しましたが、
男性の場合は、胸部前部をベン石温熱器で全体を緩める圧をかけられるのですが、
女性の場合は、それがバストがありますのでできません。

できればそのような場所は、スモールサイズのベン石温熱器を使うなどなさって、
自身で丹念にリリースをしていけば、解けていくでしょう。
それはハンドマッサージの数倍以上のリリースがホットストーンを使うとできるといわれていますが、
肋間筋の詰まりが強く炎症が強い場所は、アプローチ自体がなされないようなところですから。
そのような場所もベン石温熱器を使えばベン石の消炎効果の高さが効いて、
アプローチを可能としてくれます。
その意味で、ベン石温熱器とは画期的な肋間筋リリースに対応可能ですね。

 


さまざまな各人の体質や体型、そして課題に即した肋間筋のリリースアプローチをおこなうことにより、
徐々に胸郭の形状が、上で観ていただきましたお寺の釣り鐘に近づいていきます。

胸郭が理想形となれば。。。すると、、、、

胸骨が動きが正常化して心臓や肺をマッサージを受けることができて、
血液の循環や呼吸代謝の改善がなされます。
胸腺の働きが改善され免疫力が安定的に発揮されます。
そして腕の位置がシンメトリックに配置され、肩甲骨が正しい位置へと向かいます。
肩甲骨のポジションとお尻の腸骨は動作上密接な関連があり、
肩甲骨が正しい位置におさまることで骨盤が正しい状態で地面を捉えたてるようになるのです。
それにより姿勢の改善が起こります。
胸郭が理想形でなければ、物理的に全身の無駄な力が抜けた立ち方ができません。