光の動脈と影の静脈

人類が二足で立った歴史と、
四足で犬や猫のように歩いていた期間と比較する。
すると二足歩行をし始めたのはついこないだです。


二足歩行するため縦に長くなりました。
そのために心臓と足の裏までの距離が四足歩行の際の倍以上となったのです。


人間は今でも四足で歩く犬や猫のような動物仕様で
血液循環設計を流用しているように感じます。


その推測根拠はといいますとひとつに『心臓の大きさ』が挙げられます。


人間の心臓は250〜300グラム程度。
体重の0.4〜0.5%の重さです。
握り拳と同じくらいの大きさ。
サラブレッドの心臓は4〜5kgと大きく、
体重比は約1%をしめる。
人間の心臓の大きさの13倍〜20倍です。
運動量の少ない牛の心臓は体重の0.35%程度。
でも2Kgもの心臓です。
人間の心臓の大きさの8倍前後ですね。


心臓の位置が高い動物は、
それに比例して心臓自体が大きくなる傾向がある。
それは他の四足動物を調べてみるとおおむね言いえておりました。


60Kgの体重をもつ犬の心臓の重さと
人間の心臓の大きさを比べるとそれほど違いが出ない。
四足であれば心臓と足先の高低距離が短い分血液がいきわたりやすい。
その心臓の大きさで十分だった。


だが人間は二足歩行したことにより、
心臓から足裏までの末端距離が長くなった。
血液がいきわたりにくくなっているのです。


そのことから考えれば、
四足歩行する弱い心臓ポンプ力を供え続けている人間。
四足歩行心臓分の大きさしかもっていないのです。


人間の二足歩行には、
今より大きな心臓が必要なはず。
そう思えてなりません。


ここまでは血液の流れの心臓ポンプの動脈系を意識してきました。


血液を送るシステムですね。
その重要性は、
心臓という器官化したものが存在しているのでイメージしやすいでしょうね。

      • -


次に循環機能の影『静脈』を意識していくことにしましょう。


上述のような心臓の脆弱性を補う必要があります。
そこで人間が得た『第二の心臓』と呼ばれる、
『筋肉ポンプ』に他の動物以上に頼らなければならないのです!


静脈を血液が流れる仕組みは、
筋肉の動きにより発生するポンプ効果によります。
静脈中の血液を心臓へ押し返すため、
逆流防止の弁が付いています。
それ以外は何の変哲もないただの管です。
心臓のような血液を送り出す特化器官は存在していません。


では静脈系は心臓のようなポンプはいらない程度の仕事しかしないのでしょうか?


静脈系に全血液の65%〜75%もあるのです。
動脈系に25%〜35%です。
静脈には動脈の1.8倍〜3倍の血液が存在しています。
この静脈中の血液を順繰りに心臓に返さなければならない。


その多量の血液は酸化して粘性が強まっている。
動脈の血液よりも流れにくい特徴を持ちます。
特に血液粘性が強くなっている方などもおられます。


そして足裏から心臓までの距離は大変な長さなのです。
細い血管を伝って流れる。
それも重力に逆らい上へ押し上げる作業は、
他の四足動物とは比較にならない重労働。


そして脚部が硬くなり脊椎が側湾して大関節や腹部奥などにしこりがある。
そうなれば上の生理的な重労働に更なる負担を強いることになります。


もちろん静脈の酸化した血液が心臓へスムースに運ばれなければまずい。
静脈系が正常作動して血液が帰らねば、
結果として動脈から流れる血液もその分減っているのですよ、
ということになるのです。


そうなれば体内の酸素量も減ります。
栄養素量も減ります。
免疫量も減ります。
実際にさまざまな不具合に見舞われることにつながるわけです。


人間には循環器系が特別な意味を持つ。
特に『静脈系』においてなのです。
私の場合、陰陽を考えるときには、
まずは陰を基礎に置き、
その上にちょこんと陽を乗せます。


私には静脈系の流れの上に動脈系が乗せてあるように感じています。



特に。
脚部は多くの身体を支える筋肉がフル活動しています。
その運動量のおかげで血液が脚に集まり、
脚部静脈に多量の血液が流れ込みます。
そして歩くなどの運動をしたときに、
静脈系の活躍に欠かせない筋肉ポンプが作動します。
血液が静脈を伝って帰っていくことができるのです。


心臓から一番遠い場所が脚部です。
だからそこに心臓まで血液を返すための強力な筋肉ポンプを働かせれば、
脚部から心臓までの間の静脈血が心臓に変えることができるようになる。


脚が静脈系の最大のキーです。
脚部の硬さは筋肉ポンプ力を大幅に低下させています。
それは全身の血液循環にかかわってくる要素なのです。

      • -


私は愚直なまでに循環機能の重要性を感じております。
その上でワークをしております。


もし脚部が硬ければ、
そこのリリースに多くの時間を割きます。
臀部を含む下半身を特に。


「なぜここばかりに」と思われるかもしれません。


      • -


余談ですが。。。


人間の心臓は進化の過渡期であり、
四足の心臓を保持しているのでは。
そのような仮説を意識しています。


ハイハイで四足歩行をしているとき、
人間の血液循環はすばらしく回復。
ハイハイでさまざまな疾患が軽減した、
という報告も聞いています。
腰痛も軽減しますし手足のしびれ感も軽快。
おまけに大腰筋というコアの筋肉は、
特別なトレーニングなしに自然に強化されます。
このように身体状況が好転することが多い。


人間は四足で立つという能力は後天的に学習で身につけられた。
狼に育てられた少女「アマラとカマラ」は、
幼少期に二足歩行を学習していなかった。
それにより四足歩行でなんら問題なく、
狼との生活をしていました。
その彼女たちの敏捷性や体力。
優れた嗅覚や聴力。
それはどれをとっても常人を超えていました。


また知人のボディワークの先生で4歳まで
ハイハイを息子にさせ続けた方がいます。
尋常ではない運動能力と俊敏性に驚かされました。


レッスン上でのひとコマ。
猫とじゃれあう息子さん。
すばしっこく逃げる猫。
そして攻撃してくる猫。
俊敏にかわし笑いながら首根っこをつかんでました。
猫が数メートルの棚に飛び乗れば、
息子さんもしなやかに飛び乗ります。
自分の背丈など眼中にない様子。


これが四足歩行から二足歩行への過渡期と考える理由です。^^1


人は四足歩行から二足歩行へ変わり、
失ったものと得たものがあります。
失ったものを取り戻したいのなら、
四足歩行を実践するといいでしょう。
定期的にエクササイズのコアとして。


とてもカンタンなことなのですが、
あまり実践してくれる人がいないんですよね。
ちょっと残念に思います。

      • -