傾いた胸からはまっすぐ首は伸ばせないものです

立ち姿を正すときの意識にスカイフックがあります。


空中に架空に設けたフック。
そのフックにロープを掛けて下に垂らし、
そのロープ末端を頭頂部に据え付けて体全体を吊るすようなイメージです。


このような意識で立つようにと言われて、
がんばっても、思うようにいかないこともある。


なぜだろうか?


その理由はいくつもあるので割愛させて頂きますが、
単純に首を上に伸ばしていくイメージならば、
首の直下にある胸(胸郭)が理想の立ち方かどうか。
そこを見ればみえてくるものがある。


一生懸命頭を上に引き上げようとしてもうまくいかない人の胸を観ると、
前傾したり後傾したりねじれていたりしていることがほとんどですから。


首を据え置くための基盤となる胸、つまり地面のようなものが斜めっている状態となる。
胸部の上部は斜めっている。
その斜めの胸の上部に垂直に頚椎が伸びられるはずがない。
それでは椎間板が極端な楔になってのヘルニア状態である。


そうならないように大きなカーブを持たせつつ首を伸ばしきる事ができず頭を支えのが精一杯。




頭はボーリングのボール大の大きさと質量を持っているからかなり重いものなのです。
それは脊椎が理想の下方にすえられたところから上方へ無理なく正しくつらなれば、
脊椎の骨と椎間板の本来持つ数百キロや数トンのウエイトを支える能力に頼りきれ、
頭の本来の重いウエイトなど気にすることもないほど軽く感じてしまう。


それはまるで、頭が、空中に吸い込まれていくというほどの浮く体感で、
空中のフックに掛けられたロープに釣られている楽な感覚です。
まさにスカイフックといったところでしょう。



だが胸部が前傾してたり後傾することで、脊柱の支える力が発揮できないロスしたぶんは、
抗重力筋やその他、傾斜して倒れてしまわないよう急場をしのぐための屈筋群を強烈に使い続ける。
それにより慢性的な肩こりや首こりにまで、発展してしまうことも多いのです。


つまりスカイフックで首を立てようと頑張っても、
胸が斜めっていたら、
それはどんなに一瞬だけがんばっても瞬間芸で終わることです。


喉が苦しく呼吸がしにくくなって、不快な姿勢にしか思えない。
そんな不都合のある姿勢は、どんなにそれがいいといわれても、
生理的に嫌でしょうがないから、以前の首のスカイフックを忘れた状態に舞い戻るのです。


そして意外に、胸をどのような位置に置けば理想的なのかが、
あまり考えたことがない人が多いのです。


その点バレエなど、本当に繊細にシビアに垂直性を重視するダンスは、
レッスン中に胸の状態をチェック指導されるのだそうです。
胸の位置をどう置けば楽に姿勢を保てるかとか首を綺麗に見せ、胸元も優雅に美しくさせることができるか。
それに胸を利用して体の前面を全体的に軽くするようなこともできて、
それゆえに体幹の力を発揮させても同時に軽やかさも表現するための
胸の位置に相当にこだわるのだそうです。


でもなかなか他のダンスやスポーツなどで、
ここまでシビアに理想的な胸の状態にこだわるものも少ないはずです。


ただ、私はいろいろ胸部を研究するに際して、
ここってものすごく大切至極なものですよね。
そんなことを痛感することも多くありました。


肋骨や胸骨や胸椎の歪みグセをリセットできたもののみ、
こんな胸の位置にしてみると首や頭が楽ちんに支えられるから、
ちょっとやってみましょうかといって、トライしてもらうと。。。
すると、言葉通りに苦もなくできるし、
同時に、あっこの位置に胸を置くと頭が軽いよ!と驚くこととなる。


実は、肋骨や胸骨や胸椎を含めた胸郭が萎縮していたり変異しておれば、
そのために胸の上に乗っかるしかない首や頭はもろに影響を受けており、
楽な状態でまっすぐに首を伸ばして頭の前後左右へのウエイトのバランスを取るようなことはできない。



それは器質的に現状はそうなっているんだと、
切ないことだが、認めざる負えないところだ。



胸郭はしなやかに呼吸のリズムに合わせて開閉し前後に動き続けることで、
頭の位置を常に楽に骨で支えられるような位置へ修正及び調整しています。


そのような能力によって、
頭と首は胸部上端のフラットな基盤の上に支え続けられるようです。


そういったことで、
私が姿勢をチェックするときに、注意する点は多いのですが、
その人の骨盤の傾斜具合のチェックと修正処理と同時に、
胸の傾斜具合も重視しているのです。



胸郭の立ち上り方の成否.png
肋骨横断面心臓と肺2.png

右図が胸郭が釣鐘型に吊り下げられている状態になり、
その上にある首や頭部を楽に支えられる頚椎を形作っています。


左図が胸郭が前傾したため首や頭が前傾している状態。
この胸の状態のままではスカイフックはしづらい。


そのときはまずは胸のコンディションを整えよう。
脊柱のそくわん傾向や胸郭の変位があれば、その問題の改善が先です。
整えられたら初めて胸の正しい位置を体感できるだろう。
胸の位置を正す指導をするときに、難なくできます。
そうすることで右図へ移動定着を図ることができる。