一点集中の意識による、他部位の盲目現象

体への意識の配り方は、
どの部位も同じように注意力を向けられるような平均しているものではありません。


たとえば、次のようなことがあります。


左側肋軟骨下に位置する胃が痛いなとずっと考えていました。
どうも消化不良がここからきているのではないか?
それにより私の全身のコンディションが悪化しているのだから、
この部分が治りさせすれば他は大丈夫だろうと考えている。


ところが胃の不調が気になりだすことで、
不調部位を不安に思えてきてしまう。
すると不安な部分が気になりだして、
胃を一点集中をして着目してしまう。


そうすると、
人は真っ白な大きい画用紙の中央に、
黒マジックで1cmほどの直径の点を描いて、
その点のみを見つめようとするとどうなるか?


実験していただけばわかりますが、
黒い点へ意識が集中する度合いに比例して、
徐々にその黒い点が大きくなっていくよう
感じられて来ませんか?


黒い点が大きくなり、
同時に余白の白い部分が見えなくなるか、
存在が薄くなって気づきづらいものに化けたように感じられるでしょう。


これと同じことが人体を見つめる目にも
絶えずおこっているのです。





いったん自分のこの部分が不調だと認識すると、
その部分ばかりが意識に大きな影を落とします。


ただその意識された不調部分とは、
小さな黒い点と同様に大きくなってクローズアップしていき、
不調感覚は格段に増すことでしょう。


すると体調的に集中してしまった分だけ確実につらさが増す。
そうなれば、つらさはその部位を一点集中していた前以上に
不調感は膨張して眼が離せなくなってしまう。


そうなるともっと強烈な一点集中をしてしまうサイクルに。


別の視点から考察すると。
黒い点が描かれた画用紙の白紙部分のように、
余白は観る必要が感じられないと思えている。
白い余白だと思っていた画用紙部分に多くの問題が後々に書き込まれても、
黒い点を見つめなければと信念を固めた人には、
新たに書き込まれた余白部分の点は気づかない。


または以前からあった問題点があったとしても、
黒い点の色合いの濃さが、飛び抜けて強ければ、
飛び抜けた痛みや不快感部位ばかりに気が向けられて、
他の部位への注意力が低下してしまうこととなります。



体の不調部位の一点へ注意喚起情報が強烈すぎると、
多くの他部位に存在している問題点を隠してしまう。


身体的な問題点が幾つもあるが上位1〜2番め程度がほとんどの気を引いてしまう。
それ以降の問題点がそれなりに大きなダメージ要因を含んでも、
感度を悪くなる軽度の麻痺を起こしてしまいやすくもなるため
3番目以下がないもののように感じられるという錯覚が起きる。



身体的な問題ありだと情報は、
3番目以下の問題であっても、
実際にはずっと炎症や張りなどの不具合があると
脳に情報を伝えてくれています。


ただ3番目以下の不具合部分は、
優先順位的に低いため対応を後手にしてもいいと脳が判断してしまうようなときには、
脳に幾ばくかの不快感ありと刺激がきてもスルーして取り合わないようにしてしまう。


そのような偏りある脳の痛みなどの不具合部分への意識が数日も続けば、
血流がある程度確保されているので末梢神経系の麻痺はないのだが、
脳のほうで痛覚をブロックしてしまうことによる麻痺が発生する。



そうなると、、、もっとも気になる体の不調部位の問題点が、
他の小さな問題点のしわ寄せからきているものも多くあって、
いくら一番気になるところを気にして痛みや不快を感じられ、
気にした場所に血液が多めに流れ込もうとも改善はできない。


そのようなドツボにハマることもでてきます。


意外に、慢性的な筋膜系の炎症のようなときはよくこのようなドツボにはまりやすいようです。




一点集中と巨視的分析.png
(巨視的分析ができると、発痛部位の関連性が見えてきて、
軽微な発痛を先に解消させれば、メインな発痛部位が癒える仕組みがわかってくる
/体性感覚が発する正確な気づきのリアリティが欠けると意識は混乱をして、
改善への道が見えてこなくなります)



そのような際には、
たとえば体の部分を頭の先端から足先までくまなく部位ごとに感じるような、
自律訓練法のような体の一部分ごとに意識を持って行きその場への集中を維持するような訓練をすることは、
有益な対応策となるようです。


また、施術を受けてみると、
私どもは客観的に筋膜系の硬さやほかいくつかの際立った不具合などを冷静に見つめるため、
一点集中して、他の部位が見えなくなっている方々には気づかなかったような問題ある部位の指摘をさせていただけます。


多くの場合、成果がこれが明らかになってからしか確実に積んでいけないことを体験するかもしれません。
これらが見えていなかったから思うように改善の道に進めなかったのだと気づく人もでてくるのです。



自分の体の状態でどこに炎症があってどこが硬くなっているというようなことを
体全身視野で正確に自己把握できている人は、
私を含めてですが、特殊なボディワークで気づきを増やしている方でなければ、
少数派なのかもしれません。


ほんと、一点集中すると、全体像がぼやけるものなのです。