筋肉の変容

書籍『メカニカル・リンク』より。
オステオパシー系のワークテクニックです。

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オステオパシー的障害(病理素因)】

(1)炎症(可逆的状態)
   ↓
(2)緊張(関連する機能)
   ↓
(3)線維化(中間段階-混合関連)
   ↓   ↓   ↓
(4)癌性・硬化性・壊死性(少しまたはまったく復元不可能な段階-器質的関連)

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この流れ図でわかるのは、
筋肉部分に問題が深刻化する流れです。


まずは初期段階が正常な筋肉部分が
(1)炎症した状態です。


たとえば運動不足のお父さん。
昨日までは正常だった痛みもない筋肉が、
いきなり父兄参加の運動会でリレーの選手に。
翌日は筋肉痛でという感じでしょうか。
痛みが伴う炎症ですよね。


千切れたり傷ついたりしたような
ダメージをうけた筋繊維に血液を送り修復中。
自然治癒力に任せて治していただける。
可逆性ある状態だから問題はないです。


次に筋肉が
(2)緊張した状態。
状況としては、
炎症化した筋肉部分を回復すべく自然治癒力ががんばってました。
ただ炎症が治る前にその炎症にだめを押してしまうようなダメージを与えてしまうと、
その筋肉部分を萎縮したまま戻りが悪くなる。
可逆性が弱まった状態です。

たとえば非力な人が、
重いかばんを手で持ち上げ長時間を歩き続けた。
かばんをつるした手が握り締める筋肉は長時間緊張させる。
重くてしょうがない!
握り締めた手は緊張してわなわなこわばる。
そして目的地に到着、かばんを下ろしても
しばらくは手は緊張し握り締めた感覚が手のひらにしっかり焼きついている。
手が勝手に握られるような状態に持っていかれる。


このようなときは神経系を傷つけなければ、
10分もすれば元に戻ります。


筋肉は脳からの収縮せよという命令で筋緊張となります。
ただ脳からはかばんを下ろしたから
筋緊張を緩めよとメッセージは出てます。


無駄なエネルギーの浪費をすれば生命維持に不利益だから、
常に省エネで設定していますからね。


ですがすでに筋繊維を取り巻く筋膜は縮んだままでいたり、
脳よりも手の神経に近い部分が筋肉を硬化させ続けるよう
命令を出し続けた状態がループしていたりするようです。


この命令は意識的に出しているものではない。
無意識に出ている緊張したままでいてという命令です。


無意識に出ている緊張したままでいてという命令。
これがキープされた状態がここ(2)でいう緊張でしょう。


先ほど例であげた重いかばんを下ろしたときは10分程度で回復する、
と申しました。
ですが長時間のデスクワークで前傾していたり、
虚脱姿勢や軍隊姿勢、または側湾状態という不良姿勢をしていたら
回復するまでには問題の筋肉にかけられた負荷量に相当する時間がかかる。
それは10分ではすみませんし、
回復する前にさらに緊張状態を進行させるよう緊張の上塗りを不良姿勢や
動き方の悪癖によりされていきます。


こうなると自然に回復することを期待するには、
ヨガやストレッチ等の運動やマッサージなどで問題箇所に血液を増やす必要があります。
セルフワークでもこの状況ではずいぶん成果が出てくれますので、
この時期にがんばって改善して健康維持に努めるのが理想ですね。


またカウンターストレインなどの筋膜リリース法などを利用して、
要領よく問題解決を進めることもできるでしょう。


このときの状態で注視しておいたほうがよい状況として、
ちょっとずつ自然治癒するのに必要な血液が、
筋緊張するにしたがい血管が圧迫を受けて減少していく。
それにより血液中の酸素を多量に消費して活躍する神経の働きが鈍りだす。
そのような潜在的な下地ができ始めている状態だからです。



それが(3)線維化(中間段階-混合関連)から(4)癌性・硬化性・壊死性へと進むと、
対応がもっと難しくなります。


患部への血液循環量は減少して冷えていますから、
体内のコラーゲン物質が硬化しやすいわけです。
動くときに体内の筋肉が伸び縮みしづらいか
または動くと痛みを覚えるようになります。


この状態になるとすでにダメージした部位が深層筋まで達している。
(3)線維化まではどうにか時間をかけていけばリリースできます。
線維化にもその進み方がどれほどか。
全身に対しどのような分布しどれだけ深く入り込んで影響するか。
個々の状態がずいぶん複雑なもので深層の深層をみていくには
知識と経験が必須でしょう。


それを観ていくと、
もし深層にしこりが入り込んでいてその量が多かったり、
関節や靭帯、腱などのリリースに痛みがでそうなときは、
適切な施術法を受けることが大切です。


線維化をリリース。
それにはある程度の高度な技術が必要となるでしょう。


さまざまな施術院等に通った人の言葉で、
施術を受けて持って数日だったり、
かえって体調が悪化したりと、
体調の改善が進みづらい人もおられます。


そのような方々がこの線維化した部分を暫時リセットしていくと、
リセットされた分に比例して体調が回復していく兆しを体験できた。
そういう感想をお伝えいただけることもあります。


だからとてもしつこい虚弱状態などの体調問題には、
少なからず筋肉の線維化傾向が絡んでいるように予想いたしております。



お客様の鋭い施術院を選択する眼力が重要となることでしょう。


ですが次の(4)癌性・硬化性・壊死性となると困難です。
硬化性といっても本当に石やスチールと同じほどの固さ。
水分の残量が微々たる状態となっています。
ここまでいくと手技で筋膜の癒着をリリースするという範囲を越えています。
相応のメディカルな臨床を持ち研究しているものでなければ、
施術をすれば致命的なダメージをあたえるリスクがあります。
このようなときには問題が強く出ている患部の施術は避けて、
その遠位関連部位で状態が悪くない部分をよりよく改善させ、
その生命力の向上で全体の状態をよくしていくような計算。
安全を確保していくにはこれがベターでしょう。