中医学診断では立体的に人を見ることができるよう、複数の診断法を寄せ集めた!?

中医学の診断法を学んでみると。


中医学では、
おおよそ以下の流れの順でチェックしていくのです。

 

1.「望診(ぼうしん)」といって、見た目での判断をします。
姿勢をみたり、顔つきを見たり、身体の手足などの局所を見たり、そして特化して舌をみたり。

2.「聞診(ぶんしん)」といって、耳と鼻を使います。
声を聞いたり、呼吸をきいたり、咳をきいたり、においを嗅いだり。

3.「問診」もします。
たとえば、寒と熱を問い、発汗を問い、頭身の痛みを問い、胸腹の痛みを問い、
耳目を問い、睡眠を問い、飲食や味覚を問い、口渇を問い、大小便を問い、月経を問う。

4.「切診(せっしん)」といって、患者様に手を触れてチェックをしていきます。
たとえば、お腹をみたり、脈をとったり。

 


ずいぶん多くの検査項目がありますね。


学ぼうという側は大変な負担でもある。。。。
その大変さに、今の私としてはなんだかなぁ、とぼやきたくなるわけです。
あさはかにも、、、。


ではなぜ、これほど多くの検査をして情報を集めようとしたのでしょうか?

ちょっと違った視点で考えてみれば、
たとえば、もしあなたが就職面接の時の面接官になったつもりで感じてみてください。

就職希望者の履歴書を見ただけで解った気にはならないものですよね。

履歴書内のデータは、大切な情報が集まってはいますが、
五感で面接官が得られる情報はときとしてそれ以上の有益な人物性の判断材料となります。

直接面接官が会って話をして、その履歴書には書ききれない事項をチェックするものです。
その人物の印象や発話や発声に身だしなみなどなど。
そのものの仕事に対しての信条なども伺うものです。

面接官は五感を使い鋭い目で貴重な情報を集めていき、
総合した手抜かりない判断をしていくわけです。

 

その様子と中医学診断をするときは似ている側面があるわけですね。

 

特別な陰陽五行説に基づき人体を気・血・津液の様子などから読み解いて、
陰陽のバランスが正常からドロップアウトした状態を分析的にみて分類しました。
そして身体をチェックしていくことで、どの分類に当てはまるかを決定づけることとなります。
そこから対処法を見出して漢方や鍼灸などの治療へと進むわけですね。
かなりシステマチックで利益の高い教えをまとめ上げたものです。

中医学診断では面接官がなさるように、
面接を受ける方の履歴書にもにた問診もいたしますが、
それと同時に自分の目で見たり、鼻を使ったり、耳で聞いたり、手で触ったりという五感を通して
患者様の内部状況が体表等に現れている表れ方を知って、
病因や病起がどうであるかを当てはめて理解していきます。
そうしたほうが、情報量も層の厚みがでてきます。

すると、
この部位をみたこの検査では虚だが、この検査では実になってみえるが、、、など、
一見すると矛盾しているように見えることが現れることもあるのですが。
複数の検査法で見ていくことで、そこに気づくきっかけを得られますし、
そうすればその部分をより深く掘っていって貴重な情報をゲットできる。

そこは大きいことですね。

 

 


また多様な検査法が複数使われる理由のひとつとして、
中国独特の百花繚乱の検査法がかつて存在していたことから起こります。

中国武術も百花繚乱、中国思想もそうでした。
だから中医学上の検査法もそうだったのです。

中国人独特の価値観から役立つ検査法が取捨選択されました。
そして現在の中医学診断ができたのでしょう。
これで寄せ集めの検査法だと言う人もいます。

ただひとつだけの検査法では「点」でしかみえていなかったものが、
もうひとつのものの役立つための検査法を加えることで、点から「線」になりました。
それから線を増やして「面」にして、
それをもとに「立体化」させて最上のものの見え方ができるようにしていく工夫をなさったようです。

それを寄せ集めというのはちょっと手厳しい。
もともとが別々の質の検査法を合わせようとすると、
なかなか整理できずに困ってしまうこともでてきたり。
いろいろと理解を進めるうちに大変な事柄もあったのでしょうね。
それで、寄せ集めといいたくなったのでしょうか。。。

 

 


中医学の話から一歩引いてみますが、
中国武術は、容易には先生が深い秘技を教えてくれないんです。

中国武術は心臓部分の大切な教えは
門下生の中でも門弟として尽くすものにしか教えてはくれないのが常識です。
その心臓部の工夫は、合理的かつ画期的なもので、
容易には一般の私どもが思いつけるものではありません。
それは日本武道でも同様な傾向があるのですが、
中国武術をしているものは、
特にそのことをつくづく感じるエピソードはざらにございます。

そのことを脈診講座の受講生の方ももうしておられました。
まったくそのとおり。。。

その中国人気質を知っていると。
中医学の診断法もおそらく、そうなんだろうなと思えてなりません。


秘伝的な知識や技術などは、
残念ながら諦めなければならないところが出てくるものです。
ただ現在は書籍を読んで頭に叩き込むだけで、ヒーヒー言ってるので、
いきなり秘伝をさずけられても「?」と理解不能だと思います。
ひとまず中医学では門外漢の私の手にできるところの上限までを
得ていければと願っています。

 

 

ただ少しおもしろい想像をしてしまうんですよね。
それは中医学の診断法を本場の中医学をなさっておられる先生たちから要訣を口伝されて、
しっかりと人体を立体的に見る目を養えたもののみている像はどういったものだろうかと。

「扁鵲(へんじゃく)」という透視能力をもって病を診て治した医師が活躍する物語がありました。
扁鵲のような透視でものをみえているわけではないが、
それ以上の像の厚みと層を創る立体感を持ってみえていた中医学の猛者たちがいたということなのでしょうね。

そのような気がいたします。