心が及ぼす動きの覚醒


八卦掌の河野先生からお電話をいただいたとき、
次のようなことを教えていただきました。


『私の講座は武を伝えるだけではなく、
自強不息のような心の有り様なども含めて伝えている。
するとフルコンタクトの実践をしたい若者が
「そのような話は辞めてほしい」という。
王樹金老師も心を大切に学ばないものはいけないというのだが。
残念だ。』

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たとえば片足で立つとき。
「倒れそうだ〜、ぐらついてる〜」と思います。
するとより心は緊張して体を固める。
それにあわててしまい倒れてしまう。


ですが足の裏の地球に対して
『私を足の下でがっちりと地球が支えてくれている。
有り難いことだ。
地面のありがたさを痛感してみます。
このしっかりとした地面があるから、
接触点が点であっても支えてくれる。
僕を持ち上げてくれているんだ。』


など念じますと重心が下へ落ちて、
ぐらつきが減少していくのです。


そして不思議なことが起こります。
地面に対して強大な愛を感じていると、
目の前の敵役に小突かれそうです。
でも薄ら幸せそうな笑みを浮かべる者には、
気味悪がってかかっていけない。
そこまでいけばこれも武器です。^^;


でも感謝の気持ちの力はそれだけではなくて、
不安定な状態で体を支える粘りになる。
それが武術では威力にもつながようです。
地面から巻き起こる結ばれた糸状の力が、
そのものを守り鼓舞してくれるように感じます。


地球の重力と気持ちをマッチさせるのか、
地球の重力を私を貶めるやっかい者ととらえるか。
前者は地球を味方にして協力して戦えます。
後者は地球を敵にまわして巨大な敵を増やすだけです。


武術の練習のときだけ、
地球に有り難いという感謝の念を持ってもそれは付け焼き刃。
日頃より感謝をする習慣を持つものには敵わないのです。


感謝のコップが臨界点まで満たされたときに
始めて心の技が使える。

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王樹金老師は
『なぜ自分がここまで強くなったのかわからない』
そうおっしゃっていたそうです。


人並みはずれた練習量と質はされたはずです。
ですが同時に肉体の殻を破るまでの心の修養を努めた。


そこに底知れないものを感じます。
年老いて体力が失われていく老後。
衰え知らずの心の筋肉を鍛えれば、
体の筋肉へ反映する。


そのように心を醸造して活かす技があるように思います。