昨日取り上げた『腹診による「毒」と「邪気」の診察と鍼灸治療』という本とは別の「毒」のお話し。
昨日のブログでは、上記の本では「ガス(気体)、瘀血、津液、便秘、食滞」などの
「病へ転化するリスクのある毒」が体内にはあるんだ、と書かせていただきました。
そしてもうひとつ。
私が普段使いで気にかけている毒といえそうな体液のひとつにも気を配る必要があるでしょう。
上図はざっくりとしたイメージで、
解剖学的な詳細を丸めに丸めた感じです。
筋繊維、筋束、筋肉丸々全体の周囲は、
熱さセンサーや伸張制限を感知したり、衝撃や外圧から身を防御する保護として「筋膜」という高機能な組織が配置されています。
「筋膜」は、コラーゲン組織で構成されていて、体内の内部体温によりゲル状に近いやわらかさが維持され機能します。
ただ体内では一本の筋肉のすぐ脇に別の筋肉、骨、内臓などがあり密集しているわけです。
そうなると隣り合った筋膜同士、または骨膜や内臓の膜などと膜組織が直接ひっつくとき、
ゲル状であるためぺたぺた粘性が強い粘りつきにより、骨格筋等は身動きが取れなくなる。
そのようなことが起こらないように、
筋肉等膜組織を持った器官周囲には潤滑油の川が流れているようなイメージとなっている。
すぐ隣の膜組織とは、かならず潤滑油の油がさしてあるため引っ付くことがない状態です。
このとき正常な健康さを保つ肉体では、
潤滑油の川の流れは清らかで無色透明でさらさらした印象です。
ところが、不良姿勢で作業し続けたり、緊張状態が続くようならば、
筋肉が張った緊張したままとなってしまう。
すると隣同士の筋膜が密着度が強まるだけでなく、それが元で圧着させられるようになる。
すると潤滑油の源泉からは清らかさを保つものの、
徐々に筋膜の癒着がはじまったところを境に、
潤滑油の循環が悪くなっていきます。
つまり
「新しい潤滑機能の高い液が入ってこない不利益」と、
「使い古された捨てるべき油が捨てられずにたまり続けている不幸」と。
そして新たな潤滑油が供給されなければ通常なら捨てるべき潤滑油を、
その油が酸化して真っ黒に変色しても使い続けるようにしてしまう。
私たちはその黒に変色したものをみたならば、
フライドポテトを10回ほど同じ油で揚げたあとに残る油と似ている。
そう思うでしょう。
内部的におきている原理はまったく同じことで、
同じような現象なのですから。
こうなると筋肉を柔軟に操作することもできませんし、
このようなものは時間がたって悪化が進めば体の奥にまで引きこもりをはじめます。
中医学的にいえば裏に入るという状態を指します。
老廃物を捨てやすい皮膚表層から離れしまうと、
そうなればなかなか毒素を排泄するのは至難の業で、
そこに対してのアプローチをよくできる方法についてどのようなものがあるか、
あまり知りません。
私は自分でやり方を工夫して対応したいと施術法を考えるという試行錯誤をして、
前進すべく取り組んでいるところです。
一般的に筋膜のリリースというと、
筋肉の操作をしやすくするためのスポーツ能力向上のものと思われそうですね。
それももちろん、大切に考えています。
ですが主だった戦いの場は、深部層のこの湿潤した老廃物が固形化したものを、
どのように溶かして正常な状態に戻せるかという視点で戦況を見つめています。
日本人の体の奥に入るこの潤滑油の酸化したものの質が、
年々皆様の状況が悪くなってきているように見えていて。
潤滑油の酸化した毒が活性化して病を引き起こす病因になりえると考えています。
それが私にとって課題としている筋膜リリースなのです。
ただ同時に施術だけで緩めて、一時的に老廃物が多少流れてそれでOKというのでは心もとなく感じてしまいます。
根本的なこころを緩め緊張させない生き方、
そして体の隅々までムリ・無駄・ムラのないからだの動かし方を学び養生すること。
こころとからだの使い方を学ぶ課程で、
人間の輝きが増すことでしょう。
それにそれらの下地になければ、施術の成果は長持ちするものではありません。
基礎的な身体部分の潤滑油が回りだしたら、
体を動かす楽しみが増していくでしょう。
ぜひたのしめる範囲での運動習慣を持つことをお勧めします。
(※ 自分の体にあったペースで。やりすぎは厳禁です ^-^)
※ 上記の本では津液の老廃物化した毒ということで、
潤滑油の問題について意味合いが含まれているかもしれません。
ですが私としてはもう少し明言させていただければと考えて、
このたび、書かせていただきました。