注目してください! ここだけの話、施術の狙い目は「皮膚」でした

皮膚をとらえて施術をすると、その皮膚の下に位置する硬直した筋肉のリリースが起きます。

ただ実は、、、。
その皮膚をとらえる施術をかなえるためには、高度な手の内を作る修練が必須で、
短拇指屈筋や短拇指外転筋、拇指内転筋や拇指対立筋などに肥厚が見られる体作りができている人の施術では、
絶妙で効果の飛躍するような皮膚への施術もできますから。

たとえば、施術家と握手をした瞬間に、手の内側の筋肉の厚みが一般の人とは大きな違いがあり、
握るときの使い方がつかむ感じではなくつつむ感じに近いようであれば、
もしかしたら「皮膚を使った施術」をなさる先生なのかもしれません。

私が施術をなさる先生方にお会いしたとき、必ずチェックするポイントがそこにあります。






私が朝顔の手の操作の練習をする理由には、
筋肉に強圧をかけない施術のし方を新たに採用したいと考え、
皮膚を触れるだけという刺激から施術効果を引き出すという課題をクリアする意図があります。

筋膜リリースなら、当然のようにとなりあう筋肉同士の筋膜の膜組織が癒着し、その癒着をはがす作業がメインと思われがちですが。


以前といってもそう昔ではない以前ですが、
私は自己研修として、武のたしなみがある施術家の施術を体験しにいきました。

そのときの圧の意外性に、驚きを隠せなかったことがあります。

とにかく「触れるだけ感覚」。
その触れた指先からは、ごつい胸板を誇る先生からは想像できないやさしさが皮膚を通して感じとれます。
それだけ(?)にもかかわらず、よく体が緩まるのです。

すでに筋膜の癒着度合いが骨化と呼びたくなるほど硬化が進むと、そのやさしさを弾き飛ばして効きがよくないようなので使い勝手が悪い手法となりますが。
急性の凝りのような、その皮下の筋に十分な血行を妨げる障害物の質がほどけやすいときには、
まさにこの皮膚に触れるだけのリリース法のみでも、直ちに改善効果を示してくれます。

中医学で言う太陽病といわれるような、陽の気の循環が一時的に阻害されたような場合、
同様に皮膚に触れるだけのリリースでも、直ちに改善効果を示してくれるようなのです。


「それは、どういう仕組み?」


不思議に思えて聞こうと思いましたが、聞いてわかったつもりになると、しっかり層の厚い背景を読み込むことがなくなりますので。
あえてその不思議な感覚を課題として、自宅に持ち帰りました。



皮膚に触れるだけのリリースが効く。。。

これって、ボウエンテクニックのムーブをするときに関連筋をとらえてその筋へ刺激を送る場合、
以下の2つのパターンがあることがわかりました。

・しっかりとした圧で筋を一本まるごとムーブ刺激をくわえることで効かせるリリース
・皮膚に触れるだけの圧でムーブ刺激をくわえることで効かせるリリース

つまり、後者の皮膚に触れるだけの軽微な圧でムーブをかけるときにも、人体はよく自己リリース反応が現れやすい。
場所によって、
200g~500gほどの圧を目的にあう筋へ手指の母指球等をフィットさせて圧をかけるよりも、
5g程度もあるかどうかの圧を目的にあう筋の上に位置する皮膚上へ手指の母指球等をフィットさせて等速な刺激をかけるほうが
驚くほどしっかりと人体がよく反応し自己リリース反応が現れることがあった。
その後者の5gの圧をかけたときには、ボウエンテクニックのムーブを意識しないほどの小さな皮膚をとらえたムーブに抑えていく。
それがまさに皮膚上に軽く線を描くだけ。たったそれだけの、いわば誰だって難なくできそうなことをしているに過ぎないように見える行為で、人の身体が自動的に微痙攣をおこし始めて内在した凝りやゆがみをリセットし始めてくれる反応が起きていた。

そのときこそ、私には「???」という感想に近いものでした。

その当時、私は、直径3センチほどで10センチ長の真鍮製の丸棒を削ったもので、
トリガーポイントへ筋繊維をよくほどけるよう考慮したピンポイント刺激をかけるというやり方を研究していたころだった。
その真鍮製のスティックを使うときにインパクト圧で、硬化が根についてほどける様子も薄い癒着した筋をリリースしていた。

それがボウエンテクニックでは、表皮あたりをなでただけの刺激で、普段、これほどの快方へ向かう自己修正反応がでる姿は見たことがないほどの場面が見受けられる。


そこには偶然ではない、私が知らなかった仕組みがあるのだろうと考えたのです。
当時、それが経絡や経穴をボウエンテクニックを発案したトム・ボウエンはよく研究していたから、
経穴を含む経絡の刺激により自律神経系のネットワークの不具合を調整できた結果なのだろうと考えていました。

それも正解です。

ですがその経絡だけでは説明がうまくつかない部分も含まれているようで、うまく腑に落ちた感じがしませんでした。



その腑に落ちてこない欠けた部分を補う説明として、
皮膚の構造を考察することを試みてみました。



皮膚構造.jpg


皮膚は、人体最大の器官です。
2㎡ に相当する体表面をカバーし、その重さは、最大10kg。

皮膚の機能には。
• 外界からの刺激に対して体を保護
• 新陳代謝の終末産物を体外へ排泄
• 体温調節
• 感覚器–(触覚・庄覚・痛覚・冷覚など)


構造的に皮膚は3層に分けられます。
・表皮(わずか0.03~0.05ミリメートル)
・真皮(細かい血管や神経がある)
・皮下組織(真皮中のものより太い血管や神経がある)



表皮と皮下組織の間に挟まれた真皮にフォーカスを当てて考えていきましょう。

真皮は、皮膚の最も厚い層であり、コラーゲン、弾性組織、および血管系、神経終末、毛包、腺などの他の細胞外成分で構成される線維性構造です。

真皮の構成は<乳頭状層>と<網状層>の2層に分けられます。
乳頭状層と網状層の間は 乳頭層は、緩い結合組織で構成される真皮の薄い表層であり、網様層は、密な結合組織で構成される真皮のより厚い層です。

マイスナー小体と呼ばれる触覚受容器が、乳頭層に存在します。
網状層は真皮の乳頭状層より深い層です。
網状層は太い膠原線維束が3次元的にからまった網状構造から成り、下層になるほど線維束の走行方向が平行になる傾向があります。
この層には弾性線維はほとんどありません。
ですが網状層の底部は次第に弾性線維が多くなり皮下組織に移行します。
網状層が真皮の大部分を構成する厚い層で、密な結合組織で構成されています。
不規則に配置された粗いコラーゲン線維と少数の弾性線維があります。


という基礎解剖学的な条件から推測すれば、
乳頭層にあるマイスナー小体で触覚受容器がわずかな力の作用で触れられた圧をとらえると、
「えっ?その刺激はどういったものなのかな」という情報を集めようとし始める性質があります。
刺激は同じ圧量で等速がもっともそれが聞き耳を立てるのです。

ちなみに皮下組織に達する強さの圧がくわえられると「皮膚抵抗」といわれる外圧から身を守る反射が生じてしまう。
刺激に強弱がつくことで一瞬でも皮下組織に達する強さの圧が感じられたら、その後の圧のすべてに対し皮膚抵抗という強力な保護ガードがかかって、軽微な刺激をその後に入れようとしても弾かれて影響できない状態に陥ります。
それがあるためマイスナー小体触覚受容器が聞き耳モードを維持できる圧刺激をかなえるのには、同一な圧量にキープすることが必要です。
圧を移動する速度に急激な加速があれば、真皮ごと皮膚をずり動かす圧となって皮下組織に刺激は達しやすく皮膚抵抗が働く状態に陥ります。
そのようなことが起こらないようにするための良策として、真皮を一定にとらえたままの等速運動による圧を保つとよいでしょう。

この乳頭層への刺激の閾値を通りこさないように注意しつつ、
網状層という太い膠原線維束をよくとらえて刺激を与えます。
皮下組織には厚さが加わったウエットスーツのとらえとなりますが、
網状層という太い膠原線維束は、それが独自の非常にセンシティブな皮膚を全身を覆うウエットスーツを着込んだ状態と例えることがあります。



この真皮の乳頭層の触覚受容器に触れて網状層の膠原繊維束を通して(皮下組織に達しない)与えられる周辺へも通る刺激に対し、人体は大きな治療脈が現れるような反応がよくあらわれます。




そのような繊細な真皮のとらえをする武として合気柔術があるのだろうと思います。
「触れ合気」と呼ばれる神業のようなミラクルな反応を相手に起こさせることで、
相手の軸を取り倒すようなことへ。
そこで使われる手の内の練習に朝顔の手の操作のがあります。

これが真皮をとらえる軽微な同一圧を等速でという条件を可能とする技術のベースとなります。
これを起こすための理を、よく体現できるようにするためには。。。
それに触れて感じてみるしかないと思いますが、一般的な握るとか触るとかとは別物の質を持ったものといえるでしょう。


合気柔術の達人に、触れ合気をかけられていると、肩こりが減ったり体が丈夫になったという人がいると聞いたことがあります。

推測ですが、合気をかけるときに触れる部分の「ココ!」っていうような厳選されたところは、経絡ラインの上にあるのです。
その経絡線(特に経穴上であるとより強力)に触れ合気をかけられると、
途端にその合気の操作に逆らうことができなくなるといったことが起こります。
そういった技をかけられているときが、経絡の気の流れが悪化し停滞した部分の修正をおこなう効果が現れるのだろうと思います。

意図的に経絡治療をしているわけではないが、経絡線上に触れたほうがより技がよく効くということを、
長きにわたる修練や経験で合気道合気柔術の達者な先生方は身に染みてわかっています。
そんな「接触ポイントとして一番技が決まるところだ!」という点が、ベストな治療点と重なるのです。
そのため驚きの治療効果を発揮するのでしょうか。