五十肩等では、拮抗筋がリリースの狙い目

昨日は、主導筋と拮抗筋について、お話をさせていただきました。

2022年05月09日
主導筋の動き出し前に、ぜったい、しておくべき操作とは?
http://bodywise-note.seesaa.net/article/487861915.html




たとえば、腕を横へ挙上する手順は。。。
(1)拮抗筋の弛緩:しっかり上腕三頭筋(上腕の裏側の筋肉)を意識して筋緊張をゼロになるよう弛緩させる。
(2)主導筋の操作:拮抗筋が弛緩し終えた後に主導筋の筋収縮をおこして手を挙上させる。
※ 拮抗筋と主導筋の両者が同時に筋緊張または筋収縮が起きた状態が力んでいるといい、
  動きが外側に及ぼされず内側に溜まり凝りを生ずる原因を作り出す。

主導筋と拮抗筋.png


拮抗筋を弛緩させるのが先.png

主導筋の三角筋後面(肩甲挙筋上部や棘上筋や肩甲下筋の凝りがある)が激痛だという五十肩。
通常ならば直感的に、激痛をおこす部位へと直接湿布や鎮痛作用のある軟膏などを塗ります。

ですがあまり成果が思わしくなくて、長々と尾を引いている。
そうしたことが継続しているときは、拮抗筋の筋硬化が著しく芯に食い込んでいることがあります。
五十肩なら、力こぶの出る上腕二頭筋の上腕骨を挟んで裏手にある上腕三頭筋のことです。
その上腕三頭筋の付け根の腋下の深部にボール状のちょっと大き目なスーパーボール大の筋の凝りや、
深く上腕三頭筋の奥をつまみ上げたら信じられないほどの激痛をおこす強烈な炎症を放つ凝りが鎮座している。

主導筋が屈筋群に占められ、対する拮抗筋が伸筋群に占められるような傾向性を把握できていれば見方がわかってきます。
主導筋の痛みがでたという場合、
セットになる拮抗筋が先行して硬化や委縮が慢性化してしこり化してでた主導筋の激痛。
もともと伸筋群のほうが屈筋群の筋の筋断面の2~3~4倍と太さが増しているもので、
伸筋群の凝りが入り込めば関節の異常な収縮が出てきます。
身体の前面にある屈筋群が硬化短縮するときの関節は、前方への一方面の詰まりが出る力が作用するのが主ですが、
伸筋群は筋断面が太いだけあってパワーが屈筋群の比ではなく、その筋力が関節全体を詰めて動きの間を奪います。

関節とは、必ず骨と骨の間にクッション性のある軟骨様の素材等が挟まれており、遊びの空間が作られているので、
骨同士といった硬さがある組織同士が当たって削りあうことが避けられています。
そして間がある部分には潤滑剤がはいっており、そのおかげでスムースに関節が動けるのですが、
その潤滑剤の役割をもつ組織が、伸筋群の硬化により関節の間を奪うことがでれば外へと漏れ出るのです。

そうなれば関節の遊びの間が消え失せて、骨同士が削りあう具合になる。
そこを避けようというプログラムが人体にはあるようで、そのときに肩甲骨を挙上・外転させて、
肩関節の骨の直接的な接触を防ごうとするようです。
絶妙な危機回避能力です。
ですがこれは緊急避難としてなされた、とっさのことであって理にかなった本来の動きではない。
処々に補正的な不具合を押し付けあってかなえられた状況です。
その結果が、五十肩、または四十肩、そして三十肩・・・。



ここまで申し上げましたら察していただけると思いますが、
上腕三頭筋をしっかり緩めるようにするといい」のです。


ではどうやって上腕三頭筋を緩めればいいのか?

現実問題として、すでに五十肩等が厳しく感じられていれば、だいぶ上腕三頭筋が状態は悪化しています。

ハンドマッサージは、激痛で、奥にあるコリの骨化した本体に圧を贈るのは難しい。
それはセルフでのハンドマッサージでもそうですし、施術者のおこなうものでも、そう。



では、排酸棒を使ってみたらどうか?
これなら持ち手がしっかり握れて、芯の凝りに圧が効率よく届けられるからいいんじゃないの?



でもやってみるとわかりますが、痛すぎて、ムリ。 ^-^;
つまり接触が点で加わるのは、ハンドマッサージは手の硬い骨が点で当たって刺さるし、排酸棒も同様に先端の鋼が点で当たって刺さります。
そうやって刺さった点を動かす、動かされるのは拷問に使えるほどの激痛。
私自身がやってみて、そう実感します。



なので、私ならどうするか、というと。
次のようなアジアのほうではよく見られるような木製のマッサージ道具を活かします。







これらの形状を観ていただくとわかりますが、カーブがありますよね。
円柱形の腕のカーブ面に沿って作られているため、
使ってみるとちょうどいい感じにフィットするのです。

ハンドマッサージや排酸棒では点で刺さる感じの刺激が加えられまして、
さほど解けず激痛がひどかったのです。
ですがオカリナ型や四本足の動物型の木製マッサージ道具では、
患部との接触が線になり面になります。
点で刺さる痛みがないため、
これらを使う場合、かなりの強圧でも痛気持ちいい程度の刺激。

つまり。
「ハンドマッサージや排酸棒では、骨化した凝りがとけない程度の弱圧でしか刺激が加えられずに延々溶けてくれなかったじゃないの!」
から脱却できるんですね。

これもまた人間って、真剣にその凝りに対してリリースを模索すると、
手では難しくてできなかったことが、安心して気持ちいいほどを繰り返せば解けちゃうんですね。
人類の進歩は道具を作ったことから始まったという原点を思い出しました。





上腕三頭筋は、ベン石温熱器を使うとき。
セルフリリースでは、あまりいい成績が出ません。
というのも四本足の動物型木製マッサージ道具のような患部にフィットする把持力がないため、
腕のような細い部位は力が逃げるのです。

だから私が腕の施術をするとき、つまり他者施術でのリリースでは必ずベン石温熱器を2機同時に使います。
一台を主導筋の固定をするようにして、もう一台を拮抗筋を緩めるというように使うのです。
この時に二機をうまく連関して凝りの刺激に力が集約できるように操作するのが、うまいリリースができるコツなんです。
なので固定する側の一台も微妙に動かしてリリースの補助をしています。

ちなみに、肩周囲の問題を含まれていてという方は気づくかもしれませんが、
主導筋と拮抗筋を同時にベン石温熱器を当ててリリースをされると緩み方が非常に深いんです。
その理由の一つは、ホットストーンを使うことで60~180秒ほど熱を患部に注げば、
3センチほどの奥までその熱が伝わって凝りの部位のゲル化が進むという特性を持っています。
だから腕は個人差はあるものの脚ほどまでは太さがなく、挟み込んで熱を注ぐことで通常は3センチほど届く熱伝導がさらに奥へとのばせる。
そこを利用して、熱で凝りを溶かして解いているのです。

腕は、人類は手を良く使い発達していて、あたかも脳とそれが直結しているもののような感じがあり、
加圧によるリリースは、その大事な腕をダメージを及ぼされて壊されるのではという感情面の緊張と、
脳とそれが直結しているといえるほど腕に入る神経の太さや量の多さから、基本、外圧からの刺激は非常に嫌うのです。
痛みがそれだけ強く出やすいということです。

ですが適温での熱刺激の場合、加圧リリースとは異なり、すんなり受け入れて、すんなり熱伝導が通りやすくあるため、すんなり緩められるのです。
結果的に硬化して骨化した腕の上層組織が緩まったなというところで、ざっくりとその緩んだ部分を拭いとるように、ベン石温熱器を使ったずり圧で解いていく。そしてまたベン石温熱器を使っての注熱をして、腕の中の幾層にも積み重なったしこり化した筋膜層を、着々、拭い去って正常な状態となる部位を増やしていくので。



オカリナ型や四本足の動物型の木製マッサージ道具では、熱刺激ではなくて圧刺激のみに頼るため、
おそらくは10年かけてつけた上腕三頭筋の凝りは1年かけて緩める計算になるでしょう。
一度や二度、やってみて効果がないと木製マッサージ道具をうっちゃるのは、間違いです。
特に慢性化した方々では伸筋の側の凝りが深く入った部位は、骨の骨膜への癒着が進行してますので、
その骨膜への癒着がはがれることがなければ引き連れの量はリリースで減少しても消えないのです。

ですが体調的に血圧がそんなに異常ではないという方、循環器に問題は含まれていないという方は、
お風呂でのそれらの木製マッサージ道具を使ってセルフリリースをしてみると効果的に肩の不調を改善できます。
イメージで言えば、インドネシアやタイなどで、湯上りに木製マッサージ道具を使ってもらったマッサージを受ける感じでしょうか。 ^-^)
※ 循環器上の異常がある方は、左腕とその近辺のリリースは、お風呂の中ではしないようにお願いいたします。



最後になりますが、
五十肩等での痛みが出る主導筋にあたる患部は、拮抗筋の症状がぬぐえれば、それで半減するか解消することが多いので。
施術をする先生たちは、すでに炎症が出て触れない患部を触るのは避けて、拮抗筋を緩めて様子を観察をしていきます。
拮抗筋を緩めて、それで問題が解消すればOKですし、そうならなければ、加えられる他の要因部位を探し出して、
ケアの範囲を広げていきます。
そうすることで患部の筋膜の膜状が線維化が進んで切れやすくなっている部位に圧をかけてダメージを与えるのは避けて、
段階を経て快方への階段を上るように進むことが通常です。
あまりに五十肩等のつらさがあるときには、キネシオテーピングを同時にもちいることで効果的な補助をあたえることもできます。