首を緩める地道な工夫

首の筋肉はずいぶんと複雑かつ繊細。


それは目や鼻や耳などの情報収集や、
口などの情報発信装置がついており、
振り向くことで目標方向を自在に捉えられるよう進化。
複雑かつ繊細に筋肉が分化して精密機械のようだ。
直接延髄などの生命にかかわる基幹につながる。
理想的に働いておれば問題はない。
だが非常に壊れやすい部分である。


まさに頚椎や首の筋肉部分は『ネック』だったのです。


多年に渡り骨盤のずれが生じていたり、
肋骨の形状がアンバランスであったり。
首を支えるための下地が不整合のとき。
その場合はおきている間中のみならず、
立っていても座っていても横になっても、
常に首に負担がかかります。
体を走る主要筋膜ベルトが頚部を通る。
幾本もの筋膜ベルトの硬化短縮影響を受けて
体の緊張がよく現れるのが首の筋肉なのです。


そこから逃れるには首より下の部分を、
全体的に整えていかなければならない。
そうしないと着実に首は詰まるのです。


このような首の緊張短縮化パターンは、
多年にわたる負担の蓄積で筋膜組織が
あたかも変質したように感じられることもある。
この様子までくると
呼吸や頭部血行や脳脊髄液の流れ、
精神的な不安定感などが重なりだします。
自分でリリースしようとしても、
スイス時計のような精密さで歯車が動く機械同様、
首の筋肉や頚椎はミスれば状況は確実に悪化する。
怖いことをいうようですが、
プロの施術家でも悪化させておられることがある。
本当の話です・・・。


首の筋肉を緩める方法にはいくつかあります。
オステオパシーのカウンターストレインや場合により筋エネルギーなど。
首を緩める方法としては快適かつ安全で効果的ですよ。
だからベースはこれで対応します。


だがこれだけではまかないきれない方もいる。
他の選択肢を設けなければならないときもあります。
確かにカウンターストレイン等で首が緩んできます。
だが「以前よりはいい」という視点で満足できない。
首深部にあるしこり在庫量が多ければそれに見合う工夫が必要。
それは鎖骨下や胸や背部の肋骨に深くスチール同様の硬さで存在する。
(スチール同様の硬さは比ゆではなく直喩に近い感じです)
手や指で圧しても無理な場所も多い。
生死にかかわる急所がそこにある。


目的をかなえるための用件を洗いだしリストアップ。
そして優先順位をつけて実験を繰り返した。
結果的に生き残った手法は頭、首を揺り動かす方法だった。


その方法は、
カウンターストレインは効果的でそれをベースにしている。
そこは変わりないが+αで頚部の筋肉群をダイナミックにゆすり緩める。
トレガーワークを受けたことがある人はわかりやすい。
そのトレガーワークの動きと似た方法。
だがもうちょっと立体的に患部ブロックを
抜くような動きを揺り動かしにより与える。
微妙な揺らし方を使い分け器用に緩める。
特に代表的部位としてわかりやすく大切な場所をあげると、
「声帯隔膜」と「胴体と首の付け根」と「頚椎と頭部の付け根」ブロックなどだ。
試験段階で試行錯誤と実施効果を身内で検証。
頚部を傷めない安全性を維持するというコンセプトを踏襲したまま、
成果を向上させることができた。


実際に昨日お客様にそのテクニックを応用したものを行いました。
ひとつだけ不安があった。
首を揺り動かすときに、
『乗り物酔い』状態になるのではないだろうか?
というものだ。
だがその心配も取り越し苦労だった。
先にカウンターストレインで丁寧に首をリリースした後に行ったためか、
問題は起こらなかった。
そして予想していた分の成果の向上を感じ取ることができた。


ワークテクニックに教科書的存在はあるが、
踏み出して応用していかなければならない。


料理もプロは一工夫に情熱を注ぐ。
心遣いや探究心や発想力。
そこにこだわりも活きる。
そうやって自分の味を追及する。
私もそのような感性で仕事をしたい。