筋肉を体を動かすエンジンとは考えないようにすると

野口体操の野口三千三教授は人体を理解するうえで珠玉の言葉を数多く残しておられる。


そのうちのひとつにやはり目からうろこをはがすような言葉がある。


通常私たちが体を動かすときの認識では、
筋肉が収縮することで動作をするために
{筋肉=エンジン}と考えがちです。


ですが野口教授は、
「骨が車台(車体)で、体の重さがエンジンで、筋肉が操縦者である。」
とおっしゃられています。


体の重さがエンジンで筋肉が操縦者なんですね。
筋肉をエンジンとは考えないでといいます。


それはどういったことをいっているのでしょう?


体の深部にあるインナーマッスルといわれる筋肉群は、
大腰筋しかりでほとんどの筋肉が梃子の作用で動きます。
その力を応用しているからこそバレエダンサーが
ふんわり脚を頭の高さまでスムースに持ち上げられる。
まるで「重さを感じないほど」の無重力感を見て取れる。
それはなんて優雅な動きでしょう!


足を振り子状にして動かすときも体の重さをエンジンにしています。


他には体を垂直に立てて骨が丁寧にずれなく積み上げられたとき、
わずか数ミリ頭部を自分が進みたい方向へ傾ければどうなるでしょう。
体全体の重みが歩を進める力へと転化しますよね。
すると筋肉の力みが感じられずさっさと歩けます。


そのときに筋肉はどちらに動くかのハンドルを握っているものなのです。
重さだけではどれほどの速度でどちらの方向に進むかの操縦ができない。
だから筋肉が伸び縮みしてどれほどの重さで下に落とすかと、
どちらの方向に進むかを骨を関節を動かすことで実現します。


前述したインナーマッスルの梃子の応用も振り子の動きも
体の骨で構成された立体フレーム構造があってかなうもの。


体の動きを機能的で無駄な力みを消して動くには、
野口教授のおっしゃられることを体現すればよい。


先ほどテレビで無重力空間で毛利宇宙飛行士が体操するシーンを見ました。
その様子を見て筋の筋力で重いものを持ち上げるんじゃなくて、
ものの重さは無重力ではなくなるわけだから筋力は純粋に動く方向と速度を
コントロールするための操縦者に徹しているように見受けられて愉快だった。