人の立ち姿を見るときに、
武術の本などを読みますと興味深いことが書かれています。
体の全体に意識が行き渡るような人は稀でして、
どこか意識がほとんど届かずにいる疎の部位と、
十分に意識が行き届いている密の部分があると。
密の部分にかいくぐって打ち込もうとすればなかなか入らないが、
疎の部分に打ち込もうとすればすんなり打ち込めるようなことに。
人体をよく観察すれば意識が行き届いている部分のムラがある。
だからそれを瞬時に感じ取れるならば攻撃もしやすいでしょうし、
相手からの攻撃も読みやすくなるわけです。
そのようなことであれば「後の先」といわれうような、
相手が先に攻撃してきた後にこちらが動いたとしても先手がとることができる。
そのような達人がなさるようなこともかなうようになるのでしょう。
そしてこの体の意識の疎と密のバランスは、
実に立ち方や姿勢維持にも関連が深いもの。
つまり意識の行き渡らない部分があれば、
その部位が正常に体を支える等の機能を発揮できません。
そのために意識が疎の部位の筋力が弱化して支えにならないときがあれば、
疎の支えが支えられないところを別の筋肉部分を補完させて支えるために利用。
そしてこのような二次的な支えを造る作用により異常な筋肉の硬直を強いてしまう。
それが長い月日が経過すればしこりと化してしまい、
自力でその部位を緩めることができなくなっている。
私が施術前後で「ちょっと立ってみてください」、
とお願いしているのは姿勢の良し悪しを体のラインでみているのですが、
それと同時に体の各部への意識の疎と密を見ています。
そして疎であろうと思われる部分があれば、
少しずつ遠巻きに感じ取りづらいところは?
などと質問をして気づいていただけるように誘導をしようと試みます。
このような疎の部分がずっと放置されていれば、
その部位の虚弱した支えの力やその筋肉本来の機能性を発揮できない状態ですから、
時期に姿勢の歪みなどの問題は再燃するようなことが予測されるためです。
体の各部をまんべんなく感じ取れるように日頃から訓練していきますと、
体の疎と密のバランスが極端になってしまうことを防ぐことができます。
まんべんない体の各部の意識の密度が姿勢を自然に整えてくれるのです。
そしてそのような状態を私は自然体であると呼ぶこともありますね。