指先は腱で動かす仕組みとなっております。

腕の筋肉の使い方について



手先を力ませて、肩を怒らせる」と、
力を出そうとがんばっても十分に体幹からのパワーが手先まで伝わらなくなります。


そうすると知らず知らずのうちに、
重心は臍下丹田から上へとずれて上ずります。
そうなると赤ちゃんのおもちゃの「おきあがりこぼし」の頭部分にオモリを入れたようなもので、
なかなかすっくとおきあがれずに右往左往しながらぐらつきまくります。
体軸の芯を骨格中心として揃えて捉えられずにいるため、
垂直性を保たねばならない骨部分が斜めってしまうので、
それを支えるつっかえ棒としてしこりをつくりだします。


緊張した姿勢で作業をすると、どうしてもこんな感じで長時間過ごすこととなり、
それが長い期間続けば、人によってはかなり深々としこりを入れ込んで体を支えています。


それはあまりよくないですよね。


たとえば合気道を習っておられる方は
手先を張って、肩を緩め落としましょう」といった注意を受けたことがあるかもしれません。
これが腕の本来のパワーを取り出すためのポイントとなります。


それはなぜでしょう。


ひとつ、その注意は、腕の筋肉の特性から来ているところがあります。


解剖学の詳しい本を見ていただければ、
手の指先の部分に筋肉がないことに気づくでしょう。


えっ?と驚かれる方も多いかもしれませんが
骨と靭帯と腱と脂肪で指はできていますので


プロメテウス解剖学の本などで指の先から第三関節部分までの縦斬り図を観ていただくと、
確かに指先には筋肉らしきものが見えないようですから。


指を動かそうとするときに、
「指先にある筋肉に縮め!」と命令したとしても、
そこに筋肉がないのです。





ありもしない指先の筋が縮むわけはないのです。



そしてこのありもしない指先の筋肉を縮ませようとした瞬間に、
解剖学的に辻褄が合わないような運動をさせてしまおうとする。
そうなると、指先という体の体幹から離れた部分のひとつが、
力んで硬直してしまい本来のパワーを発揮できなくなります。



長掌筋の様子.png


腕の筋肉のひとつを観てみよう。


こちらの筋肉は、肘から腕の中ほどまでが赤い筋肉部分で、そこから先は白い腱部分になっています。
そして腕のこのように肘から指先まで伸びていく筋肉たちは、
だいたいこれと同じような様子で赤い筋肉部分と白い腱部分でわかれているのです。


肘から腕の中ほどまでの筋肉部分は筋収縮性があるので縮みますし、緩めれば弛緩して伸びていきます。
その先の白い腱部分は筋肉ではありませんので長さは一定です。
筋収縮のような伸びたり縮んだりということはありません。


肘から腕の中ほど部分の赤い筋肉部分を収縮させると、
指先の白い腱や靭帯などの自らの力では収縮しない組織がそちらへと引っ張られていく。
すると指先が握られるようになるという仕組みです。


以前に腕を動かすときにマジックハンドと例えたのは、
マジックハンドの握り手を握れば、
マジックハンドの数十センチも先にある距離の離れたものをつかめるのと同じ仕組になっているからです。
この赤い部分の筋肉を収縮させるのは握り手で実際につかんで握る部分はここです。
ここを握ってみれば、勝手に指先は物をつかんでくれるようになっている。


そうやって手先を動かすときにも、できるだけ体幹の近くから動かして末端を遠隔操作していこうとします。


なぜ、そうするのか?



理由はいくつもあるのでしょう。


それをいろいろ考えてみるのも面白いと思います。


末端部分の先細りした筋肉は筋断面も細くて非力です。
物理的に強力な力を発揮させることはできないのです。


筋断面の太さと筋パワーの発揮する力の作用は正比例する。


指先が器用に物をつかんだり細工するには指が丸太みたいに指の筋肉が太ければ邪魔ですよね。
細い部分にしておきたかったんだろうと思います。
そして繊細な動きを表現できるようにしたかった。


体の体幹近くの肘近くに太い筋肉を置き、
その先は細い腱を伸ばしそれを靭帯で骨に固定させて先端の指を作る。


なかなか精密機械のような仕組みじゃないですか。


「手先を力ませて〜」と、いうのは、
つまりこの肘近くの筋肉を利用する意識をすっ飛ばして、
ありもしない指先の筋肉でものを握ろうとしている状態。
そうなると手先が重く感じられそっちに軸が傾倒される。
軸が垂直性を失えば筋肉でその傾斜を支えようとする。
そうなると、体の前面の筋肉が傾斜した体を支えるため、
胸鎖関節や恥骨結合が詰まり呼吸筋が働きが悪くなる。
そうなると、肩をいからせるつもりがなくても、
息苦しくなってしまったのを肩で息をして補おうとする。


そのような様子で、普段使いの仕事をしていると、
どうも体調が優れなくなってくるようです。




そう、観ます。




ここからは、ぜひ、抜け出したいですよね。


私のような施術をするものにとりましては、
これができることが自分の体が壊れることから身を守り、
お客様への施術の成果を高めることになります。


そのあとに、
山ほど、腕の使い方の応用編があるのですが、
この手がないと、先には進めないと思います。
合気道でもこの手を作るのは基本に属します。
それに他の技芸や職人技もそうだろうと思う。






ちなみに足の方も、これに部分、準じたものとなっております。
足の指先にも、筋肉はないのです。
だから足先の指を動かすときには、
膝下から上半分ぐらいの筋肉部分。
ここを収縮させる感触で足指をコントロール


そうなるとバレエなどなさっておられる方の、
膝裏のふくらはぎ部の様子を観てとりますと、
足先の指の様子をだいたい把握できてきます。


いったん足の指先を張って指先の伸張をして、
骨から腱を少し浮かせて引き剥がしてから
膝下の筋肉部分を収縮させ、
足先の腱を引っ張り足部の骨の形状を作る。


そんな流れを、ささっとやってのけられているダンスをしている方々は、
本当に日頃から練習を重ねてコンディションを保っておられるのでしょう。



私が、これをいきなりすると、
特に施術をし終えた疲労後には見事にふくらはぎがつっちゃいそうな気がする。^-^;