同一経絡上に現れた経穴部のトリガーポイントをどうあつかうべきか?

経絡をわかるメリットって、私の施術にも直接活かせてるっていうこともあるんです。


経絡をざっくりいえば、
経絡は内臓と体表に分布しており、気、血を全身に巡行させる通路のようなもの。
そのため内臓の状態が体表部の経絡に反映されるのです。
内臓での気、血の巡行が滞るなら外表となる体表部の経絡に通じてその乱れがあらわれ把握できます。
これをじょうずにもちいて内臓に起きる気血の滞りを改善させる治療に活かすことができます。


私の施術でも経絡は意識しています。
経絡には上流から下流へといった川の流れに似た道筋があります。
しこりなどの症状悪化のあらわれは上流から下流に沿って(=経脈に沿って)硬いしこりなどができることがあります。

たとえば。
厥陰心包経】という経絡を例に。
同一経絡上として上流が経穴(天池)ですぐ次に下流の(曲沢)と並びます。
すると上流の(天池)に凝りがあれば下流の(曲沢)に連続して凝りや張り、引き連れなどの不調が起こることがあります。
ただ同一経絡でみれば上流が(天池)とすればすぐ次の経穴ではなく手首の経穴(大陵)に影響することがよくみられます。
天池と大陵の経穴の間には(曲沢・げき門・間使・内関)といった経穴がありますが、
そこを飛び越えるようにして不調症状を感じることがでてきたりするのです。

厥陰心包経の上流の経穴のコンディションをチェックして凝りなどのトリガーポイントができていたなら、
その下流経穴にも何らかの凝りなどの症状が現れているのかもしれないと予測できます。
各人の状態によりますが慢性状態なら多くは下流にある経穴に当たる位置に凝りや痛みがでていますから、
同一経絡の上流の不調部位経穴下流の不調部位経穴には関連性を認められると推測できます。
この両方の経穴部の状況を考えて手順をもってアプローチをしていくのです。

時には上流経穴のトリガーポイントのみアプローチを丁寧にすれば、自然に下流経穴が改善することもあります。
ですがそちらの症状が慢性化していれば、そのような上流のみを手を打てば済ませられることはあまりないのです。
ただ同一経絡上にある両方の不調経穴部を同時期に気血を流れる順を観て解くようにすれば、
徹底的に深堀するようなトリガーポイントアプローチをしなくても気血の流れが順じて改善に向かうようになります。


トリガーポイントアプローチっていっても、本当に深くその部位を解こうとしてはからったとしても、
慢性化した凝りの部位は多層化した膜状の癒着が折り重なり、特に深部の骨に近づくほど水分がなく酸化が進み状態が悪くなっているものです。
そのようなところを魔法のように生まれたての元気印のあかちゃんの筋のように一変させることは、誰もできません。


だからこそこの同一経絡をふさぐようにして滞りをあらわす経穴部に対し、
うまく順序だてて気血の流れを巡行させるようにさせることができると、
お客様自身の経絡中の気血の流れをスムース化させる状態を作り出します。
そうなると、人体の中を24時間の時間をかけて気が一巡します。
そうして巡る際に、今まで滞って気が減退し陥っていた問題が改善させることができます。


これを意識的に使っているかどうかで、施術成果が段違いに変わるでしょう。
カンタンな理解でできるものではありませんが、
数回も同一経絡上の経穴をうまく同時リリースしてその経絡の気血の流れが通ったとき。
施術上では今までの筋膜リリースでは感じられなかった手ごたえを感じることになりました。
それはお客様自身に複雑な話となってしまうためお話しないときがありますが、
同業者で経絡について熟知なさっておられる方には、
私自身、いま、どの経絡のどちらの経穴を解いて、次にどちらの同一経絡上の経穴をとくか、
解説をしながら解かせていただくことがあります。
そういった説明を受けたほうが経絡に熟知している方は、
かえってプラシーボ効果が高まるせいもあると思うのですが、
改善成績が目立って上がることが観察されて興味深く感じています。


ということで。
経穴を通して経絡中の気血の流れを整えたときは、その場で改善を云々言うのではなく、
じつはこういったところを考慮しての施術なのです。
その場である程度お客様の体の不調部位を軽減したり消失させることも大切ですが、
体質改善に大きくかかわる最大期待されるのは経絡を診た施術を取り入れているか?です。



それはつまり、
同一経絡上で起きている上流と下流経穴にできた凝りの一方が見過ごされていたときは、
こうした経絡中を24時間かけて気が巡っていくことで、各部を正常に気血を養う流れはいまだに滞りつづけています。

そうなるとちょっと不思議と感じていただける
以前と比べるとわたし、体質が変わったような気がする」というお客様からの喜びの声が聞こえてきます。

多くの場合、専門的過ぎる話になりますのでこの度は解説は割愛しますが、
十二経脈の流れを観察していけば、現状のお客様の状態の軽重が見えてきますし、
お客様がおっしゃられるような痛みが出る場所が変わるという裏にある理由も説明される教義があります。

それらがわかっていくと、経絡学説を知る前のころは、
「ただできることは筋膜を深部まで必死に解いていくこと」と筋膜リリースで押し切ってやってきた。
そうすることで偶発的に起きた好転もありましたが、
それが必然的に起こせるような手引書があったのかと知り愕然としました。

個人的な話で恐縮ですが、
5年ほど前は経絡とか経穴といっても知識が浅くて、そこまでのことが見通せていませんでした。
ですが中医学の本を精読したり、あとは中医学系のYouTube映像を講義と思って必死に観ていくうちに、
かつて感じていた疑問に対しての答えがわかりだしました。
そればかりか今まで考えもしなかった奥深い知識があるんだと知ることができて幸運に感じています。

でも、経絡学説ひとつとってみても、
まだまだ私は理解不十分で独学では理解不能のところも多々あって、
他の先生方はどうやって学びを進めているのかを知りたくなることがあります。。。
これは今後の課題ですね。