正しい背骨のひねり方


背骨の使い方に気を配る人に、
記憶しておいて欲しいことがあります。

『椎間板の特性』です。


椎間板というのは椎骨と椎骨の境にあるクッション。
頚椎7個・胸椎12個・腰椎5個です。
脊椎全体は内臓側の縦靱帯と背中側の縦靱帯で結ばれています。


設計上椎間板は上下の圧迫および前後左右への屈曲には強い。
だがひねりが入ると椎間板および縦靱帯が損傷を起こしやすい。
魔女の一撃と呼ばれるぎっくり腰の多くは、
体をひょいと軽くひねったときに起こるのはそのため。
椎間板や脊椎を取り巻く縦靱帯が『ねじ切られて』る。


椎間板では椎間板内のゼリー状の物質がそのために外に突出したり、
縦靱帯では捻挫になるわけです。
縦靱帯が傷ついたときのほうが、
高熱を発して腫れ上がるので必ず気づくはず。
椎間板が裂けてゼリー状物質がでても、
痛みはないので気づかないこともあります。
ただクッション性は悪化します。
その症状が進み椎間板内の髄核が突出して脊髄神経を圧迫するヘルニアまで進めば外科へと進まなければなりません。


アメリカでの調べですが60歳以上の1/3の人に、椎間板ヘルニアがといわれ、
近年日本人の姿勢の悪化はひどいものですから・・・。
気がついたときからその防御をしなければなりません。


椎間板は上に乗る体部分をクッションで支えるショックアブソーバーの役割。
その範囲内での動きには設計上よく考えられています。


ですが上のものを支えることに特化したクッションは、
ビンのネジ蓋をひねって外すことを考えて設計されたわけではない。
だから『振り向く動作』が一番苦手です。


それに危険です。


前後屈曲、左右側屈をするのは事故は少なく、
事故発生時も比較的早期に熱は引くようです。


ですがひねりが入ったときに椎間板や縦靱帯を傷つけたときにはかなり大事。
例えば猫背だったり脊椎の脊柱側弯症状がある方は、
椎間板や縦靱帯のねじ切りにかかる負担が局所的になります。
いつも感じている負担がかかる腰部部分。
筋繊維などが硬化して栄養が行き渡らない。
コラーゲン繊維の並びが不揃い。
ウィークポイントです。



そのことを考慮すると、
ヨガやピラティス、その他の体をねじる動作が入るエクササイズは、
脊椎全体が緩んでくるまではひねりの入る動作を避けたほうがいい。
そういうコンディションの方もおられるのです。

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もともと人間の背骨はひねるようにはつくられていないから、
普段の生活はひねりを入れない動作をするのが当たり前です。


甲野善紀氏の「体をねじらないことひねらないこと」は大切です。
ねじったりひねったりすると、
回転のモーメントに推進力を奪われます。
だから一見ねじっているようにみえても、
裏側ではひねらないような動きをする。
その動きを『袴の内側で体現』する。
それが技です。

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そしてスポーツなどでどうしても体をひねる必要があるとき。


極力ひねらない工夫を取り入れること。
そして脊椎の前後屈曲、左右側屈が容易にできるようにし、
どの椎間板や縦靱帯の局所にも負担がかからないようにする。


ひとつひとつの椎間板を腰部の椎間板を中心に少しずつひねる。


椎間板は腰から首まで25個あります。
一つずつ5度ひねるだけなら何ら負担もない。
安全です。


だがその25個の椎間板のひねられる量は以下の通り。
25×5=125(度)


125度もひねることができるのです。


これで9割のひねり動作はまかなえます。
椎間板や縦靱帯を壊すこともない。
故障の少ない選手です。
それに少しずつひねるときに最大のひねり戻しパワーが生まれるのです!


ですから彼らは日頃この椎間板を細かく繊細に分けて動かす動きを学びます。
そうすればスポーツをいくつになっても楽しめるのです。
技を工夫して『究めること』ができるようになるのです。


背骨の使い方のノウハウを知らずに、
無茶な動きを続ければ腰部が反り鼠蹊部が縮みだします。
いつか慢性の腰痛に。


そしてスポーツを楽しみたい気持ちがあっても楽しめなくなるのです。


そんなのは絶対いやですよね!

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ちなみに猫背や脊柱側弯で脊椎に日頃負担がかかる状態の人のとき。
腰部にひねりがはいるとどうなるか。
腰椎2番や腰椎4・5番あたりのいつものウィークポイント。
その一カ所を125度ひねりあげてしまう。
それで椎間板や縦靱帯がねじ切られてしまうのです。


日常生活では、
ちょっと背側にあるペンをとろうとするときも。


そのときは急がずにゆっくりと体の全体の向きをそちらに向けるように。
この習慣を身につけるだけでも大きなリスクマネージメントになるようです。