大腰筋と呼吸

大腰筋が萎縮していると呼吸が苦しく感じます。


大腰筋は胸椎12番あたりから腰椎5番までが起始で
鼠径部をとおり大腿骨内側上端あたりに停止があります。


強烈な力を持つ大腰筋が萎縮すれば腰椎全体が同時に縮みだします。
腰椎の椎間板や腰仙関節の椎間部のクッションが押しつぶされます。


腰椎がおなかの中の立体を形成するための大黒柱。
それが縮めばおなかの中の内臓部分も縮みだします。
おなかの消化器がある天井部分の横隔膜が引き下ろされてしまうためです。


横隔膜の上下動が腹式呼吸には必要です。
ですがすでに小腸や大腸や胃などの多少の空間がある空腸類は
圧迫を受けている状態ではそれ以上の圧迫は受け付けられない。
内臓が適したスペースをもつときに横隔膜を上下動ができます。
過剰につぶされると内臓の機能が著しく低下するかもしれない。
そのような危険は無意識に避けるプログラムが働きます。


【大腰筋が硬化して萎縮する→腰椎などの椎間板が縮む→
横隔膜が下がる→内臓が常時圧迫される→腹式呼吸がしづらくなる】
というルートで大腰筋の硬化が腹式呼吸力の低下に発展するのですね。


ではこのケースを改善させるためには?


原因の源流にさかのぼって大腰筋硬化から解く事です。
それで腹式呼吸の質が大きく改善するときがあります。
カウンターストレインや筋膜マッサージで解いてもいいでしょう。
ただストレッチで緩めるのは鼠径部の硬化が著しい方は
捻挫等をおこしてしまい危険なのでやり過ぎないように。


でも大腰筋を解くところでもっと厄介なところがあるのです。
大腰筋の筋膜と鼠径部の鼠径靱帯の下を通る部分が癒着しやすい。
ここが最大のネックになることが多い。
この部分は骨と同じほどの硬さになる。
腸骨筋も鼠径靱帯下を通り癒着を起こして問題を悪化させることも多いし。
自力で解ける範囲を逸脱していることがあるように思えます。


鼠径靱帯部分の癒着を解く方法もあります。
鼠径靱帯部分にリリースが起こるまで加圧する方法など。
でもこれで解けるのはまだまだやわらかいしこりだといえるでしょう。
ここを安全に解くにはいくつもの下準備を施し工夫を加えることです。
その上で高度な技が必要となる部分です。


そうして大腰筋の全体を鼠径靱帯部分の癒着を含めて解けたとき、
肩の力みも消えて
すぅ〜っと努力もなく腹部に空気が流れ込んできます。

なんてすがすがしい気持ちでしょう!


そしてメンタル面で人を恨んだりくよくよしたり、
夜ずっと興奮して寝付けない不眠傾向があったり、
などの傾向が人知れずおさまっていたという報告も受けています。
中国医学の五行の関係図をみれば
内臓の抑圧とネガティブな感情の相関関係が読み解けると思います。
そこからきているのだろうと感じます。