切れた動きを作り出す主従関係意識

サッカーのワールドカップをみていて、
この選手の体はよく切れているという表現がありました。

切れ味の鋭い動きとは、
体の本来備えている運動性を存分に引き出している動き。
体の各部を生かしきることで切れた動きができるのだろう。

昨年に、合気柔術の先生がおっしゃられていたことが分かりやすい。

先生は木刀を持ち出した。

木刀を使った構え方で、
まるで強固な壁がそこにあるように感じさせる。

細い木刀一本では、自分の身を隠すのには十分ではないはずが、
隙がなくなる勢いを図形的にも意識的にも持たせることが成功。

そのとき木刀は切れ味鋭そうな意志を持った道具になっている。
肌で感じる威圧感が別次元のものへと瞬時に様変わりしていく。

このような剣さばきのノウハウを得てみると、
木刀を生かして使うにはという課題から、
自分の体を生かして使うにはという所に
視点を拡張してみることができるだろう。

木刀に生命感を宿らせるためには、
人形師が黒子として背後から人形を操るがごとく。
人形のために全身全霊で尽くし切ることが求められる。
どのようなことをしたいとこの人形が言っているのか。
考えているのか、動きたいのか、喜んでくれるのか。

鋭敏かつ想像力豊かにイメージ。

その意志に沿って黒子は必死に人形に命を吹き込むように影で支える。
ほどよく人形を客観視しつつ全体像を把握する。
どう動かせば魅せるか工夫を積み重ねていく。
一歩ずつその要求を高く求めていくことで、
人形から息吹が聞こえてくるようになる。

次第に自分が人形そのものとなったような錯覚さえ覚えるだろう。

意外にやってみるとパントマイムを演じているような
精度の高い３次元的な位置の固定や動きの移動などの
リアルな存在感を動きを求められていることがわかる。
寸分の違和感を感じさせれば、
もうそこで興冷めしてしまう。

舞台空間には人形しかいない。
黒子の存在が気にならなくなる。

主従関係は「人形を主」として「黒子は従」になる。

そこに美しさや力強さや機能性や生命感を感じさせられる。

ひとつの動作を磨きをかけていくためには、
このような人形を扱う黒子感覚で自分の身を動かすこと。
刀を使うときの感覚もまったく同じことだと教えていただいた。

主従関係を分けて、
自分が主になろうとしてでしゃばらず、
徹底的にしたがって影から支えていく。

柳生新陰流の剣さばきもそこからくるそうです。
剣さばきとは剣に仕える黒子役を徹底する意識からはじまるというのだろう。

動きの主従関係意識が芽生えたとき、
初めて自分のやるべきことがすっきりわかりだしてくる。

そう私は考えております。